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揺れる愛、乱れ惑う 闇の花2 ~祠☆闘士シリーズ~

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  • 作家朝陽ゆりね
  • イラストもなか知弘
  • 販売日2015/12/08
  • 販売価格700円

「礼なら涼に言ってね。彼の優しさと、警察官の誇りに感謝してよ」内科医で除霊師の相田透子は、恋人の田神涼にかつて冷たく接していた。自分と関わることで危険な目に遭わせたくなかったからだ。けれど、真っ直ぐな心を向けてくる涼を愛していると自覚し、護ろうと心に誓う。警視庁捜査一課の刑事である涼は、その正義感と人を引き付ける魅力、そして彼自身が『水の祠』であることから、敵である矢代征一朗の妹怜柯を救出する依頼を受け、助け出したことで怜柯から惚れられてしまった。心中穏やかではない透子のもとに、征一朗の命が危ない、助けてくれと涼から連絡が! 祖父を征一朗に殺された透子はどうしても許せないが…

1、亀鏡(きい)の欠片
 自販機でコーヒーを買うと、側にある硬いソファに腰を下ろした。
 田神(たがみ)涼(りょう)──警視庁刑事部捜査第一課の捜査員である彼の一日は多忙極まりない。昨今は凶悪犯罪が爆発的に増え、犯人の低年齢化や被害者との関係性に乏しい事件など、なかなか捜査もはかどらなかった。
 タバコを片手に一服していると、同僚の女刑事がパタパタと足音を鳴らしながらやってきた。
「田神君、やっぱりここにいた」
 篠原(しのはら)慶子(けいこ)警部補、同期だ。
「事件か?」
 篠原が肩をすぼめて苦笑する。
「身に沁みついてるわねぇ。違うのよ。ちょっと相談……頼みがあるんだよね。時間欲しくてさ」
「頼み? 俺に?」
「ん」
 ショートヘアの精悍な顔をした女だ。女に精悍という表現は相応しくないかもしれないが、本庁の刑事なのだからそれぐらいの鋭さを持った女であることに違いはない。事実上の男世界で実績と責務を果たすのだから、男以上に鋭くなるのは当然かもしれない。
 実際、涼は彼女を女と思ったことはなかった。単純に仲間とも言えるが、どちらかというと同性の同僚みたいな感覚だ。
「今夜、時間取れる?」
「んー、なんとかするしかないなぁ」
「ありがと。じゃ、後で」
 またパタパタと音を立てて戻っていった。
 それから慌ただしく働き、時計が九時を回ったところで二人は仕事を切り上げた。赤ちょうちんが下がる店に入る。篠原は早々ジョッキを飲み干し、二杯目を要求した。そんな姿を呆れたように涼は眺めた。そういえば、篠原と同じ係になって一年半になるが、こんなふうに二人で飲みにきたことはなかったし、篠原がここまで男らしい女だとは思ってもいなかった。
「もうちょっと洒落た店にすりゃいいのに」
「田神君、そんな店知ってんの?」
「多少はな」
 篠原が屈託なく笑う。
「彼女さんの趣味がいいってことね? 配属された時、さんざん聞かされたわよ、ゴシップ好きな婦警達に。彼女さんの家に転がり込んでるんでしょ? ったく、デカがすることじゃないわよ」
「ほっとけ」
「医者なんだって?」
「誰に聞いた? 斉藤?」
 篠原は肩をすぼめた。斉藤とは二人と席を同じくする後輩刑事の名だ。
「さてね。高卒の婦警には、残念ながら女医なんて太刀打ちできないわよ。キーキー言いながら愚痴ってたもの。田神君、何気に人気者だから」
「それ、学歴差別。名誉棄損で十分訴えられる。それに婦警はNGワードだ」
「事実よ。みんな腹の底じゃそう思っているくせに、口を開いたら正論ブチかまして糾弾するんだから。綺麗事ばっかりでさ。そんな建前ばっか言ってるから、モラルも吹っ飛んで世の中おかしくなるのよ。ガキの時から、ちゃーんと、世の中は差別だらけ、そんなこと気にならない強い精神を養えって鍛えたら、ヘンテコな事件なんて起きないのよ」
「お前、女なんだからさぁ、言葉には気をつけろよな。俺だってそんな暴言吐かねぇぞ」
 篠原はフンと言って、二杯目を飲み干した。

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