夢中文庫

声に出して言ってみろ。 ~声優カレのHなレッスン~

aimirui04s
  • 作家逢見るい
  • イラストnira.
  • 販売日2013/4/5
  • 販売価格300円

売れない声優の綾音(24)と人気男性声優の和真(28)は幼なじみ。無口でクール、でも本当は優しくて世話焼き……そんな和真を慕ってずっと憧れてきた綾音だけど、彼にとってはいつまでも手のかかる妹のような存在でしかないみたい。悩んだ綾音は、声優の世界で少しでも和真に追いつくため、18禁ドラマCDのオーディションを受けることを決心する。ところがそれを知った途端、和真の態度が豹変!「レッスンしてやる」ってどういうこと!? 「もっと意識しろ。俺の声を。耳に流れこむその声で、感じるんだ」「触られてると、わたし……―っ、喋れ、ない…っ」――低い声で甘く囁かれながら“喘ぎ声”のレッスン開始!?

こげ茶色の柔らかそうなゆるふわパーマな髪に、細い顎のライン、二重瞼の垂れ目がちな瞳に、筋の通った鼻筋、ぷっくりとしていて色気のある唇。
話すときはゆっくりと、どこか周りよりもワントーン低い声で話す。というより、全体的にテンションが低い。

テレビ画面の向こう、録画していた深夜の「声優トーク」番組でのこと、広いソファに横並びになって座ったイケメン声優と呼ばれる人たちの中で、和真その人は、猫背気味に身体を前に倒して、微動だにせず、良く言えば真剣に聞いている風に、他の声優たちの話しに耳を傾けている。
(うわぁ、眠たそう)
絢音はテレビの目の前にちょこんと座りこんだまま、そんな和真の姿を見て、クスクスと小さな笑い声をあげた。声優仲間の数人に、「和真くんは人付き合いが悪いくせに人から好かれるからムカつく」やら、「何考えてるかわからないくせに、ファンが喜ぶ受け答えをするのが上手でムカつく」などなど、愛の溢れたいびりを受けているからだ。
それらを眺めて、まるで自分のことのように、絢音は嬉しくなる。画面の向こうの和真は決して嬉しそうではなく、むしろ構われることが迷惑なように、「それが才能だ」などとボソリ呟き、余計に仲間を煽ってしまっているけれど。

養成所出身の声優が多い中、同じ劇団で育ち、同じ声優業界に生きる妹分の絢音としては、先輩声優、和真の活躍が、心からの支えなのだ。
宮前絢音、二十三歳。劇団Iに所属しており、CMや舞台などでチマチマと活動をしながら、声優業に力を入れてやってきた。が、なかなか芽が出ずに声優デビューをしてかれこれ四年。大学を卒業し学業を言い訳に出来なくなったいま、そろそろ代表作と呼べるものを作らなければ、声優としては、危うい。

「ぬわ~~~っ」
そのあたりに転がっていたクッションを胸の前で抱きしめて、絢音はゴロンとの上に寝転がる。ワンルームのアパートの中は、決して狭いわけではないが、物が多いせいで何だかごちゃごちゃとしている。他の人はどうか知らないが、絢音はそんな空間が落ち着くのだ。
月曜日の午後、一般的な社会人であれば、働いている時間帯だ。そんな中、自分は一体何をしているのだろうか。横たわりながらテレビを観れば、眩しい和真の姿がある。嬉しいけれど、焦る。
(わたしも、バリバリ働きたいな。お仕事、したい……。頑張ってんだけどなぁ)
するとふいに、部屋の隅に置いてある背の低いテーブルの上で、スマホが振動を始めた。絢音はゴロンゴロンと寝返りを打ちながら部屋の中を移動すると、テーブルの上に手を伸ばし、表示される名前を確認することなく、電話に出た。
「和真兄?」
「違います」
聴こえてきた低く野太い女性の声に、絢音はびくっと背筋を伸ばし、飛び上がるようにして身体を起こすとゴクリと唾を飲んだ。
「まーた絢音は、和真に面倒かけてるの?」
「いえ、決して」
「ならいいけど。あなたにね、声優の仕事の話があるの」
「えっ、仕事ですか!?」

電話の相手は、敏腕劇団マネージャーの森川だった。女性のわりには背が高くがっちりとした身体つきをしていて、歳は絢音の母親と同じくらいだろうか、美しい年齢の取り方をしていて、宝塚歌劇団の男役でもしていそうな雰囲気を持っている。劇団全体のマネージメントはもちろんのこと、団員個人個人に合わせた仕事も、どこからか取ってくる。和真や絢音を「声優向き」だと見込んだのも森川が最初で、小学生の頃から舞台女優を目指していた絢音が、女優ではなく声優の道を目指すようになったのも、森川がCMナレーションの仕事を持ってきてくれてからだった。
シリーズものの飲料水のコマーシャルで、絢音は五本連続、二年間、そのシリーズのナレーションを務めた。機械を通した自分の声がまるで別人のように聴こえて、何だか面白かったのを覚えている。それでいて、当時既にバリバリの人気声優だった兄のような存在の和真に、少しでも近づけたと思って、絢音はとても嬉しかったのだが。
それ以降、アニメの初回で殺されてしまうような脇キャラ中の脇キャラや、乙女ゲームの名前のないライバル役の一人など、特別パッとしない役柄の仕事が多く、それだけじゃ食べていけない絢音は、定期的にアルバイトでウエイトレスをしている。
だけど、声優の仕事であれば何でもやる。ドジで間の抜けた自分でも、「声」や「演技」を聴かせることだけには、自信を持つことができた。
運動神経皆無、むしろ何もない道でも転ぶほどの鈍さのせいで、舞台女優になるという道が半ば断たれても、それは絢音に残された希望だった。
どんなに小さな役でも、こなしていけばいずれそれは力になるし、もしかしたらその努力を見ていてくれる人もいるかもしれない。少なくてもいい、そういう人が増えていって、背中を押してくれるようになったら。もっともっと頑張れるような気がした。頑張って、少しでも和真に、近づけるような気が。
「あのねぇ、『感じて学園パラダイス』って知ってる?」
「……へっ?」
「ま、いいわ。もともとはコミックとラノベだったんだけどね、今度18禁でドラマCD作るんですって。そこでね、メインヒロインに絢音をどうかなぁって、先方が」
「め、め、めめ、メインヒロインですか!」
「でもあれよ。喘いだり、いやらしい言葉連呼させられたりするわよ」
「そ、そうですよね」
「アダルト向けだからね。だからよく考えてちょうだい。まずは形だけでもオーディションがあるから、それまでに考えたらいいわ。後でオーディションに使う台本の内容、送っておくから」
じゃあね、そう言ってプツリと電話を切った森川の最後の声は、もう絢音の耳に届いちゃいなかった。
(どうしよう、メインヒロイン!! ああ、でも、マイクの前で喘ぐわけよねぇ? どうやったらいいんだろ……)
単純で楽観的なところが、絢音のいいところかもしれない。既に仕事を引き受ける方向で思いめぐらせていた絢音は、ふいに思い立ち、ポンッと拳で手のひらを叩いた。
「そうだ、こういうときの和真兄!」

オススメ書籍

miyukimiyuki06

羞恥の公開痴漢 -暗い映画館で、親友の彼氏の指が-

著者深志美由紀
イラスト

クチュッ―濡れた音が、小さく耳に届く。親友の彼氏の指が、暗がりの中でミズキのホットパンツの裾から中へ、本当の足の付け根へ侵入してくる―ああ……私、濡れてる……待ち合わせに現れないマイ。仕方なく親友の彼氏の圭人くんと先に映画を観ることにしたのだが、スクリーンではレイプシーンが。気がつくと指が、そして見知らぬ男までが隣に…。

この作品の詳細はこちら