夢中文庫

アイツから逃げきれ!

asahiyurine05_s
  • 作家朝陽ゆりね
  • イラストまろ
  • 販売日2015/9/9
  • 販売価格300円

転職先の専務は小中学時代さんざんからかってくれた男、慶吾だった。マジで?茫然自失の夏帆ではあるが、役員なんだから我慢するしかない。と思っていたら「付き合え」と迫ってくる始末。丁重にお断り申し上げているのに、慶吾はまったく引かない。追い詰められてつい言ってしまった「一週間手を出さなかったら付き合ってあげる」という言葉で、同棲がスタートしてしまう。ここはなんとか逃げ延びて……そこまで思った夏帆は重大なミスに気づいてしまった!この賭けに勝つということは慶吾が我慢できなかったということで、それはつまり関係を持つということ。負けたら交際しなければならない。どっちにしたって苦手な慶吾となんらかの関係になるということで――

 本日、転職した会社へ初出勤。挨拶のために社長室へ行き、中に通されて茫然自失となった。
(青島(あおしま)なんてそんなに珍しい名前じゃないから、ぜんぜん、まったく、これっぽっちも思い出さなかった……)
 斎野内(さいのうち)夏帆(かほ)は胸の中で独りごちた。
 大学卒業後に就職した会社で、たまたま当たった上司がセクハラ親父だった。最初は軽い言葉程度だったので我慢していたが、夏帆が“優しく”対応したのがいけなかった。誰が見ても明らかに引きつっていた笑みを、このセクハラ親父は自分に都合のいいように解釈し、夏帆が受け入れていると誤解し、増長したのだ。軽い言葉程度だったセクハラ内容は、次第に露骨な卑猥語になり、仕舞いにはボディタッチまでするようになった。
 夏帆に退職を決意させたのは、関係を迫られたからではあるものの、このセクハラ親父が経営者の遠縁という事実だった。言ったところでもみ消されることは明らかだし、ヘタをしたら悪者にされかねない。実際に、何人かの女性社員からも泣き寝入りした者がいると聞いている。せっかく上場企業に入れたのにもったいないと思ったが、なんだか失望感が半端なく、この会社で頑張ろうという気持ちも失せ、転職に踏み切った。
 勉強は得意だったこともあり、学歴も成績も悪くない夏帆である。それほど苦労せずに社員数が百名ほどのこの会社に転職することができた。
 それなのに──。
(青島、慶吾(けいご)? まさかっ)
 そのまさかは、正しく“まさか”だった。
 小学、中学と同じ学校で、何度か同じクラスにもなった同級生がそこにいた。
 一八〇センチという長身。アスリートのような爽やかな笑顔。周囲の笑いを取る話術。だから受けはすこぶるいい。それでいて妙に俺様で、数えきれないほどからかわれた。そんな慶吾は大学附属の高校へ進学し、夏帆は女子校に通った。だから中学を卒業したら会うこともなく、夏帆はその存在自体を忘れていた。もちろん、念には念を入れて、絶対同じ学校にならないように配慮したのではあるが。
 その青島慶吾が目の前にいる。
 なぜ?
 疑問が浮かぶものの、答えは刹那に得ていた。
『青島サイバーセキュリティカンパニー』の社長室にて、社長の横に立っている「青島慶吾」であれば、社長の息子であることは疑うこともなければ、迷うこともない不動の事実だろう。
 極めて苦手でイヤな思い出しかない同級生に対し、今後は“上司と部下”として顔を突き合わせていかねばならないとは。
(うそぉ~ん)
 なんということだ。
 どうしよう……。
 目の前がクラクラしている気がする。
 そして現実を認識したら、次は対応について思案した。
 他人のフリをすべきか、「お久しぶり」と言うべきか──。
「斎野内夏帆です。本日より、お世話になります」
 まずは丁寧にご挨拶。
 面前のおじさんはニコニコと微笑みながらうなずき、隣に立つ息子──この段階ではまだ断言できないが──を示しながら紹介した。
「これは専務で私の息子の慶吾です」
 専務なのかぁ~と思わず頭の端のほうで思ったが、刹那にかき消して挨拶しようと顔を向けて微笑んだ。
 選んだ言葉は──。
「は──」
「よぉ! 久しぶりだなぁ、三つ編み女」
「────」
 はじめまして、と言おうとして見事に撃沈された。しかも、なにそれ、その三つ編み女って、小学生の時の髪型をまだ覚えているんですか!? と、叫びそうになって、慌てて口をつぐんだ。

オススメ書籍

miyukimiyuki05

いけないイタズラ電話 ―テレオペ痴漢研修―

著者深志美由紀
イラスト

パンツの色、昨夜の彼とのエッチ、レイプ予告に至っては服務違反を承知で電話を切った。そんな彼女に上司が課したのはオナニーしながらの敬語応対、男たちに貫かれながらの冷静な説明応対の特別研修だった!

この作品の詳細はこちら