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戸惑う愛、狂い咲く 闇の花4 ~祠☆闘士シリーズ~

  • 作家朝陽ゆりね
  • イラストもなか知弘
  • 販売日2015/12/08
  • 販売価格700円

『やっぱり透子ちゃんはクールだ。人と距離を置いていた。寂しいくせにそれを隠して』大学時代の仲間、上原剛志はアメリカで研修を積む優秀な神経外科医。東京で内科を営む相田透子の元に突然現れ、以前から透子が好きだったから今度こそ一緒にアメリカに来てくれと言う。透子には今や田神涼という、命を賭けて護りたい恋人がいるのだ。一緒には行けないと断る透子を急に襲う上原。すんでのところで透子のライバル矢代が現れ助けてくれるが…暴行未遂に怒りを露わにする涼だが、まともではない上原の情念を除霊師として祓ってやりたいと訴える透子の意思を尊重し、受け入れる。事件の度に経験を糧にして強くなっていく涼と透子。二人の初々しい馴初めも収録!

1、朱夏 ─炎天─
~プロローグ~
──七五三の行事のため、伊勢に到着す。斎王様に謁見。今年は特に重みを覚える。関係参加者の名簿の中で、特に以下の者の子達に感慨す。
『朱雀』──火の闘士、日野原智成(ともなり)君。長女、紅、七歳。長男、康匡、四歳。次女、曜、三歳。
 長男は早生まれの名のもとに今年祝いの儀に参加させる事、智成君の意を感じる。闘士の器量に問題なし。又、その下に、一歳になる次男、有慶が控えている故、『朱雀』は安泰であろう。
『清錠神社』宮司、珠洲城(すずしろ)一真(かずま)君。長女、比依、三歳──『金の祠』。
 残念ながら、此度生まれたと聞く長男、東真は、霊力に乏しいとの事。
『破魔矢』──木の闘士、矢代栄恵(えいけい)君。長男、征一朗、五歳。
 この子は将来、非常に有望と見受ける。しかしながら、目に宿る光と、洩れ聞く家庭の状況から道を誤る懸念を覚える。我が懸念が的中し、万が一、相見えることになれば、命賭しても道を示してやらねばなるまい。この力、侮り難し。
「お祖父ちゃん……」
 相田透子(とうこ)の手が震えた。祖父が残した膨大な日記と術師達の家系図。透子は時間を見つけては、それらを貪り読む毎日だった。約三十二年前に書かれた日記を手にして間もなく、この箇所に行き当った。伊勢で行われる七五三の行事。そこに呼ばれ、手伝いに赴いた時のことだろう。
 透子は何度も読み返した。
(あの時、お祖父ちゃんは私を守りつつ矢代を──あいつを救おうとしたの? 術師として生きることの意味を伝えようとしたのかもしれない。だけど、伝わらなかった──無駄死にだわ! お祖父ちゃん! あんな奴のために!)
 日記を抱きしめ、必死で涙をこらえようとするが無駄だった。溢れて流れ、頬を伝う。
(無駄死によ! あいつは木の世界の者で、諭すなら木の者達のはずよ! 『破魔矢』の連中がやるべきことだわ。どうしてお祖父ちゃんがしなきゃいけないの! どうして神刀であいつを倒さなかったの? どうして、透子を置いて、あいつに殺されたのよ!)
 その後しばらくして、田神涼(りょう)が仕事から帰ってきた。疲れた体を引きずるようにして戻ってきた涼は、透子が日記に指を挟んだまま抱きしめて眠っている姿を見つけた。その日記を取りあげようとして、泣いていたことに気づく。横に座り、日記を手に取った。しばしそのページを見つめた後、透子に視線を移す。
(お前の祖父さんが『希代の術師』と呼ばれていた理由が、なんとなくだけど、わかる気がするよ)
 透子の目元で光る涙の跡にそっと触れる。
(お前はきっと、無駄死にだと思っているんだろうな。でも、俺は、違うと思う。無駄死になんかじゃないと思う。お前の祖父さんの思いは、きっと通じると思う。あいつは……知らないだけなんだ。本当は薄情でも冷徹でもないと俺は思ってる。ただ、知らないだけ。だからそれらを知ったら、たぶんだけど、きっと祖父さんの思いは伝わると思うんだ。お前の祖父さんは、すごい力を宿して生まれてきたのに、人の優しさや繋がりを教えられず、一人寂しく生きることを察して、心配になったんだと思う。人間は愛情を知っているヤツのほうが強い。孤独は一時的に人を強くするが、根っこは弱いんだ。犯罪者はみんなそうさ。愛に餓えているヤツ、なにも教えられなかった空っぽのヤツほど、なにも考えず、デカい事件を起こすもんだ。祖父さんは、きっとそれを教えたかったんだ。孤独は、真に強いわけじゃないって)
 優しく透子の頬を撫でる。
(あいつは変わったよ。この一年で、確かに変わった。初めて会った時の、あの冷たい雰囲気はかなり薄れている。目に優しさが宿り始めている。だから祖父さんの死は絶対無駄なんかじゃない。透子、今すぐでなくていい。でもいつか、あいつを赦してやれ。祖父さんの思いはきっと届くはずだ。その時が来たら、赦してやってくれ。きっと、来るから。じゃなきゃ、まだ中学生だったお前を残して逝くわけがねぇだろ)
 涼は透子を抱き上げた。
(俺は、確かに今のあいつは冷たい野郎だと思うが、信用には……きっと誰よりも信用に足るヤツだと思うんだ。けっして約束を破ったり、裏切ったりはしない。己がどんなに苦境に立たされても──それはきっと、一番難しいことだ)
 寝室に連れていき、寝かせる。その横に座ってタバコに火を点けた。
(俺が傍にいる。だから、いつか、あいつを赦してやってくれ。透子、でなければ、お前も真に強くはなれない──俺は、そう思うよ)

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