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恋酔い 雅狼1 ~祠☆闘士シリーズ~

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  • 作家朝陽ゆりね
  • イラストもなか知弘
  • 販売日2015/12/15
  • 販売価格700円

「早く服を着たまえ。家の者が気づく前に去るぞ」血の繋がらない伯父の陰謀により、三千万円で売られた九条舞を間一髪助けたのは、高級スーツに身を包んだ非の打ち所のない容姿の男。ゾッとするほど冷たく光る漆黒の瞳に舞は目を奪われる。彼は呪術一派『破魔矢』の当主矢代征一朗だった。あらゆる術師をも凌駕できるといわれる白蛇の力を曾祖母から受け継いだ舞。矢代の正体を知った舞は、自分を利用しようとしている伯父から逃れる為に伯父の暗殺を依頼するが……冷徹無情と恐れられる呪術師故の孤独に惹かれていく舞。彼女の一途な思いに心動かされる矢代。白蛇の力を宿す二十歳の美大生と冷徹無情と囁かれる孤高の呪術師の十六歳差のカップルの愛の行方は?

1、孤高の呪術師
 全裸にもかかわらず、面前に立つ男に釘づけになっていた。
 高級スーツに身を包んだ非の打ち所のない容姿の男。銀縁メガネの奥にあるのは、ゾッとするほど冷たく光る漆黒の瞳。その氷の刃のような視線に、自分が全裸であることも忘れ、ただじっと見つめるばかりだ。足元には今まさにこの身を汚さんとした男の亡骸が転がっているというのに。
「あ」
 眼差し同様、唇もわずかに震えている。色を失った唇から小さな声がもれた。
「早く服を着たまえ。家の者が気づく前に去るぞ」
 九条(くじょう)舞(まい)は慌てて服を掻き集め、身につけた。男は舞の頭を隠すように自らのコートをかけると、彼女の腕を掴み、歩き出した。
 広い伝統的な和造りの家。庭を望む縁側の廊下を、音を立てずに進み、二人はようやく外に出た。少し先に車がとまっている。高級車だ。
「乗りたまえ」
 感情の伴わない声で促され、舞はおとなしく従った。
(冷たいけど、澄んだ綺麗な声だわ)
 そんなことを考える。
「助けてくれてありがとう。でも、あの鬼みたいなモノは……その、やっぱり」
 男は無表情のまま運転している。舞には興味がないようだ。そんな男に向け、舞は言葉を選ぼうと思ったが、適当な言葉が見つからず、仕方なくハッキリ言うことにした。
「式神なの?」
 返事はない。
「陰陽師なんでしょ? 私の伯父に雇われたんでしょ? あの、破廉恥な男に」
「破廉恥なのは、さっきの爺さんじゃないのか?」
 やっと発せられた言葉だったが、舞はその言葉にカッと赤面した。
「そうね。七十にもなって、お金で二十歳の小娘を買い、抱こうっていうんだもの、破廉恥極まりないわ」
「あの爺さんに言われたのか?」
「そうよ。三千万でお前を買ったって言われたわ」
「……」
「でもあなたがきてピンときた。受け取ったお金であなたを雇ったのよ。いくらで引き受けたの? 吾妻(あづま)が言った三千万?」
 悔しさのあまり涙が込み上げてきた。しかしながら男は気にした様子はない。
「自らの金で殺された男は惨めなだけだ。己は一切損をすることもなく、目的の人間を始末する君の伯父は策略家と言えるのではないかね?」
「どっちも最低よ。でも、あえて比べるなら伯父のほうがより最低。陰陽師を雇うなんて」
 一瞬の沈黙の後、男は舞の言葉を否定した。
「正確には陰陽師ではない」
「え?」
「陰陽師は過去のものだ。現代社会では、その業は細分化され、それぞれの専門家として存在している。それにもともと陰陽師も術師の一つに過ぎん。私は呪術師だ」
「呪術師?」
 それきり男は口を噤んでしまった。なにを聞いても答えない。舞は居たたまれなくなって窓の外に視線を向けていた。やがて車は大きな屋敷の前でとまった。
「着いたぞ」
「え? ここ、私のマンションじゃ」
 言いかけ、ハッとなった。
「イヤよ! 降りないわ。私のマンションに送って!」
「ここに送れと言われただけだ」
 屋敷から何人もの人が出てきた。車の扉を開け、抵抗する舞を強引に引きずり下ろした。
「イヤよ! 放して!」
 一人が舞の口に手を当て、黙らせた。一方、その中の一人、中年の男が運転席に歩み寄る。呪術師だと言った銀縁メガネの男が窓を開けると、嬉しそうに笑った。
「手間をかけた。感謝する」
「いえ、では」
 車はそのまま去っていった。

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