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愛濡れ 雅狼3 ~祠☆闘士シリーズ~

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  • 作家朝陽ゆりね
  • イラストもなか知弘
  • 販売日2015/12/15
  • 販売価格600円

「そういう色気は隠しておきなさい。恋人に可愛がられていると主張しているみたいでみっともないわ」矢代征一朗の可愛らしい恋人、九条舞に嫌味っぽく言い放つ矢代麻奈江。征一朗の父親の後妻である彼女は妖艶で自由奔放、征一朗の母親から受けた恩を仇で返したと『破魔矢』一族から嫌われている。元巫女で『視力』の麻奈江は南雲という男の依頼で外出、しかし南雲に連れ去られてしまう。娘の身を魔女リリスに差し出し麻奈江を手に入れた南雲。舞は偶然連れ去られる現場を目撃、尾行して征一朗に助けを求める!捕えられた麻奈江は逆視され、心奥の大事なものを暴かれ――。舞の存在が冷えた親子関係を解いていく。征一朗と異母妹怜柯の心温まる番外編も収録!

聖花の残像
「は?」
「ですから、先生、先生が少々お手伝いくだされば、お客様も大喜びで、きっとリピーターになってくれると思うんです!」
 矢代(やしろ)征一朗(せいいちろう)は眼前でニッコリと愛想よく笑う女を唖然と見つめた。隣では、アシスタントと称してオフィスに居座ってしまった橘(たちばな)淳志(あつし)が必死で笑いを堪えている。そんな状況下で、自分の顔に冷や汗が流れていることを漠然と感じた。
「先生ほどの男前なら、お客様も大喜びですよ! あ、ところで先生、ご結婚は為さっていらっしゃるのですか?」
 今度は彼女の隣に座る母親が口を開いた。
「結婚? いえ、していませんが」
「あら、独身なんですか? いえねぇ、指輪とか為さっていらっしゃらないものですから、ちょっと気になりましてね。そうなんですか。なら、若い女性客にもきてもらえそうですわねぇ」
 女は「ほほほほほ」と高く笑った。
「──」
 闇の世界で生きる術師達は、神社や仏閣にいる者以外、世間から本業を隠すために表の仕事を持っている。もちろんそれらは多岐に渡っているが、矢代征一朗の場合は、この夏から経営コンサルタントという肩書きで働いていた。
 とはいえ彼はその仕事がしたくて名乗っているわけではない。実際は一人のんびりと経営学の研究に携わるため、表向きに開業しただけにすぎなかった。それがなぜか、賃貸契約を結んだ不動産会社の営業マンに捉まり、今やアシスタントと称して矢代の傍を片時も離れない。彼の給料を出すため、取りたくもない仕事を取って、頭を悩ませる毎日だった。
 ほとんど趣味で始めた会社だ。一切の売り込みもせず、広告も出していないのに客がやってくる。なぜだろうと思っていたら、横に座る橘が営業の経験を生かして売り込んでいることがわかった。矢代は最初から計画が狂い、平日の日中、のんびり過ごすどころか、頭をフル回転させねばならない状況に陥っていた。
 今、目の前に座っている母子もその頭の痛い依頼者の一人だった。伊豆で温泉旅館を営む母子だが、借金と古くなった建物に立ちいかなくなり、矢代のオフィスにやってきた。五十半ばの旅館女将とその娘の若女将。綺麗な顔立ちの品のある母子だが、営業意欲は旺盛なようで、一通りの説明を終えると、いきなりそう吐き出した。
「……とりあえず、帳簿と実際の旅館のほうを確認させていただきます。来週の月曜日に伺いますが、午後からでよろしいですか?」
「はい!」
「では、この帳簿はお預かりします。訪問の際に返却致しますので」
「宿泊されますか? そのほうが、よりよく見ていただけるかと思うのですが」
「……そうですね、そうさせていただきましょうか」
「アシスタントの橘さんとご一緒ということで、よろしいでしょうか?」
「結構です」
「それでは、よろしくお願いします、先生! 月曜日、お待ち申し上げておりますから!」
「……はい」
 矢代は彼女達の目になんとなく嫌な感じがして、力なく返事をした。身の危険を感じるというかなんというか、なんとも言えない気持ちの悪さを覚える。
 橘がオフィスの外まで二人を見送る。そんな姿を横目で見ながら、深い溜息をつきつつ、ソファに凭れ込んだ。

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