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ジレ愛~好きだからこそホドホドに、ねっ♪~

  • 作家あゆざき悠
  • イラスト弓槻みあ
  • 販売日2017/10/24
  • 販売価格400円

館山愛梨は中学一年の頃から三年間、まるで七夕の織姫と彦星のように年に一回しか接点を持てない日高葎に恋心を抱いていた。けれど人見知りで話し掛けることも、まして告白するなんてできっこなかった。せめて連絡先を教えてほしいと思っていた卒業の日、なんと彼から告白されて付き合うことに。お互いに運命の相手だと信じ、「ルール」を守ってゆっくりと愛を育んでいく。未来への愛を永遠に誓う頃になって……二人の間に割り込んでくる女性が出現。愛梨は葎を好きすぎるあまり、信じられない決断をしてしまって。愛し合っているのにじれったいほど進展のない純愛カップルは――?

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第一章:デート
 連日猛暑日を記録する七月中旬の祝日、駅前の噴水前で彼女は待ち合わせをしていた。
「やぁ、待たせたね。さて、どこに行こうか?」
「暑いからさぁ、涼しいところに行こうよ」
 二人の男性に声を掛けられた彼女は、首を傾げた。見覚えのある人たちではなかったから、彼女は考え込んだ。
 彼女の名前は館山(たてやま)愛梨(あいり)、三月に大学を卒業して春から社会人になった。
「ごめーん、待たせちゃった」
「あ! 久しぶり」
 少し小柄でぽっちゃりとした愛梨とは対照的に、すらりと背が高くスレンダーな女性が愛梨の傍に近付いてきた。彼女の名前は羽田(はねだ)理香(りか)、愛梨とは高校が一緒で無二の親友だ。
 愛梨に声を掛けてきた男性二人は、お互いに目配せをしているようだ。
「俺、右の子」
「俺は左がいいな」
 お互いにアイコンタクトを取った後で、仕切り直したように声を掛けてきた。
「ねぇねぇ、そっちも二人? とりあえず、映画でも行かない?」
 その言葉に理香は愛梨がナンパされていたことに気付いたようだ。
「行かない。悪いけど──」
 理香の言葉を遮るように、愛梨の肩を抱いた男がいた。
「俺の連れに何か用?」
 低い声でそう言われ、男たちは尻尾を巻いて逃げるしかない。太刀打ちできるような男性ではなかった。長身できりっとした男らしい顔は、男から見てもかっこいいと思ってしまうタイプだろう。
「待たせて、ごめんな。愛梨、先に行くなって言っただろ? 怖くなかった?」
 愛梨の肩を引き寄せ、彼女の瞳を覗き込む彼は日高(ひだか)葎(りつ)。この三人は高校の同級生だったが、愛梨と葎は中学校も同じだった。
「だって──久しぶりに理香ちゃんに会えるんだもん。早く会いたくて」
 ぷぅっと頬を膨らませる愛梨は可愛らしくて、思わず理香が抱きついた。
「ごめん、私も愛梨に会いたくて早く来たつもりなんだけどなぁ」
「ここで立ち話するよりさ、カフェに入ろう。愛梨、理香ちゃんと行きたいカフェがあったんだよな?」
 愛梨の手を繋ぎながら、葎はそう言った。
「うん、ほら──りっくん、あのビルの」
「あぁ、この前の雑誌に出ていたところか」
「そうそう」
 愛梨の横を歩きながら、理香は二人の話を聞いているようだ。
「じゃ、こっちから行こうか」
「相変わらず、葎くんはしっかり者だね」
「そうでもない」
 葎はそう言いながら、少しだけ笑った。
「混んでいないといいんだけど」
 愛梨はそんな心配をしながら、歩いていた。
「ねぇ、理香ちゃん、お仕事は楽しい?」
「うーん、今は雑用が多いかなぁ。愛梨と葎くんは頻繁に会えているの?」
 理香の言葉に愛梨は首を横に振った。
「そうでもないよ」
「仕事始まってからは週に一回、会えればいいほうだよ」
 葎もそう言い、理香は驚いたようだ。
「あ、すぐに入れるみたいだな」
 カフェに到着し、愛梨と葎は並んで座った。二人の前に理香が座り、一つのメニューを覗き込んでいる二人をちらちらと見ているようだ。
「理香ちゃん、決まった?」
 愛梨の言葉に理香は頷いた。店員を呼び、理香はアイスカフェラテを頼んだ。愛梨はアイスココア、葎はアイスコーヒーを続けて頼んでいた。
 飲み物が揃うと、再会に三人はグラスを掲げる。
「愛梨は仕事、どう?」
 理香に訊かれ、愛梨は苦笑を浮かべる。
「どうもこうもお父さんの会社に入れてもらったんだもの。ようやく研修が終わって、受付に一日三時間くらいかな。座っているよ」
「ほかは何をしているの?」
 理香の質問に愛梨はうーんと唸った。
「応接室の片付けとか、掃除とか。案内とか」
「受付嬢も大変なのねぇ」
 理香にそう言われたが、愛梨は首を横に振った。
「りっくんより、全然大変じゃないと思う」
「葎くん、そんなに忙しいの?」
 理香が尋ね、葎は苦笑を浮かべた。
「大変っていうか、まだまだ勉強が足りないって感じ。理香ちゃんは?」
「私も──自分の不器用さに苛立つのよねぇ。ねぇ、それより結婚式、終わっちゃった?」
 理香に訊かれた愛梨は目を丸くした。
「まだ、だよ。結婚もまだ──していないから」

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