夢中文庫

銀月の秘蜜~鳥籠乙女は甘く淫らに愛される~

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  • 作家紅緒まこ
  • イラスト乃里やな
  • 販売日2017/05/23
  • 販売価格700円

ウェバー伯爵家の次女ルドヴィカは年頃になっても正妃を娶らないハウンド王国王太子ルイスの『お手つき様』として悪評を集めていた。
幼馴染の王子に密かに想いを寄せる彼女はこの心無い噂やルイスへの恋心に苦しみ、ある時、無謀な計画を思い付いてしまう。
月の隠れた夜、宮殿の書庫へ行けば『何でも屋』が願いを叶えてくれる――
……この情報を頼りに『何でも屋』を呼び出すが、しかし、彼女の目の前に現れたのは銀の仮面を被った怪しげな男だった。
さらに依頼の報酬はルドヴィカの純潔だと告げて来て――!?
褥で甘く淫らに男と交わり、快楽を教え込まれた時、心の奧底に押し殺していた想いが溢れ出す。

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【プロローグ】
 月がすべて隠れてしまう新月の夜。ひっそりと静まり返った真夜中の宮殿の書庫は暗くてとても恐ろしい。けれど、それよりも恐いのは、自分を壁際に追い詰めている目の前の長身の男だとルドヴィカは思った。
(彼が噂の……)
 ルドヴィカはドキドキと騒がしい心臓の音を耳に聞きながら、右手の燭台をゆっくり胸元まで持ち上げ男を照らす。すると炎が二人の間でゆらりと揺れ──男の顔を覆い隠した銀色の仮面が妖しく光った。
 仮面の男は周囲の闇と同化するように黒色の正装、それに同色のマントを上から羽織っていた。黒衣に掛かる髪は黄金を溶いたように美しく、背中で一つにまとめて流されている。何よりも特徴的な仮面は目元を覆い隠すだけの作り。高い鼻梁や薄い形の良い唇、すっきりとした顎のラインはすべて見えていた。
(美しいひと……)
 顔のすべてを見たわけではないのにルドヴィカは男を綺麗だと思った。上流の貴族が纏うような上質の気品を感じたのだ。いや、それ以上に近寄りがたい雰囲気からまるで怪奇小説に出てくる麗しいヴァンパイアのようだと思った。幻想の怪物に男を重ねるなんてどうかしている。けれど、男の洗練された見た目や鼻孔をくすぐる官能的な麝香(じゃこう)の香りはその幻想へとルドヴィカを誘う。どうしてこんなにも男に惹かれてしまうのか?
(どうしよう……胸が締め付けられる……)
 仮面の男とは今夜初めて会ったはずで親しみも恋情も微塵も感じない。むしろ圧倒的な威圧感に恐怖を感じている。にもかかわらず男の姿に彼女の心臓は時間が経過するごとに騒がしく鼓動を刻み、真白い頬は赤くなっていった。
(こんな気持ちになるなんて……こわい……私が想っているのは……ルイスだけなのに……)
「こんばんは、レディ。君のようなお嬢さんに呼び出されるなんて驚きだ」
「……っ!」
 不意に歌うような甘い声が空気を揺らした。その耳馴染みの良い声はルドヴィカの耳にすぐに溶け、彼女の細い肩はピクリと跳ねる。
「レディ、どうした? もしかして緊張しているのか?」
 ルドヴィカの反応が薄いからか、男が今度は彼女の名前を呼んだ。これにルドヴィカは慌てて口を開く。
「ご、ごめんなさいっ。わ、私……!」
「ふふっ、別に構わない。こんな真夜中に見知らずの男、それも素性の怪しい仮面男と対面したら、男でも緊張するものだ。良家の息女なら尚更だろう」
「……えっと……その……」
(こういう場合、何て答えれば良いのかしら? 素直に頷いてもいいの?)
 ルドヴィカは不安げに視線を巡らせた。今日まで家で大切に育てられたルドヴィカには上手い切り返しや会話を楽しむという処世術の類がさっぱり備わっていない。さらに言えば、男性との会話も父親や使用人など限られた人物だけで、相手が初対面だと緊張して言葉が出てこない。下手な言葉を言って男を怒らせたらどうしよう。そんな不安が彼女の頭に浮かんだ。もしそうなれば、男を呼び出した意味がなくなり、ルドヴィカの願いは叶わない。
(……ど、どうしようっ。考えれば考えるほど言葉が出てこない)
 ルドヴィカは焦りはじめ、その額には薄っすらと汗が滲む。
 先に説明しておかなければならないが、こんな深夜に仮面男に壁際に追い詰められるという状況を作ったのはルドヴィカの方だ。彼女にあと一歩まで迫った仮面の男は、とある特殊な方法でのみ現れる宮廷の怪人──通称『何でも屋』。
 困ったことがあれば対価次第で何でも叶えてくれる貴族専用の御用聞きで、彼は限られた者の間でのみ、その存在が確認されていた。実情は把握できていないが、殺し以外、例えば政敵の駆逐や愛人との手切れの準備、さらには夜の相手まで請け負うのだとか。
 しかしながらルドヴィカは最初、そんな便利な御用聞きがいるなんて信じていなかった。それはこの難攻不落と言われるハウンド王国のルヴァルア宮殿に忍び込むことなんてできないと思っていたからだが、いて欲しくないと心のどこかで思っていた。だが、実際に目の前に現れてしまったならば、信じるより他はない。
(私が彼を呼び出した。来てしまったならもう後戻りはできない……)
 恐いもの見たさや興味本位でこの怪人を呼び出したわけではない。ルドヴィカには何でも屋を利用しなくてはいけない確かな理由がある。ルドヴィカは顔を隠すために被った黒い毛織のフードの中で、ぎゅっときつく目を瞑る。

ご意見・ご感想

編集部

涙が堪えきれなかったルドヴィカは弱いお嬢さん……?
いえ、逆です。
彼女の心はとても強い。
長い間酷い陰口や悪意に晒されてきたのに、
それでもルイスに寄り添ってきたのだから。

快楽の世界に足を踏み入れ溺れてゆくルドヴィカは淫らなお嬢さん……?
いえ、違います。
彼女の純粋さは他に類を見ないほど。
長い間男性の体温とは無縁だったのに、
あるきっかけからまさか……あんなことになるなんて。

真っ直ぐに生き優しさで周囲を温める彼女がどうして自ら足を開くようになったのか。

ハウンド王国が豊かで強い国家であるが故。
ルイスがルドヴィカに執着し過ぎるが故。
銀仮面の男が巧みに彼女を唆した故。

運命に翻弄される彼女は――しかし意思を持たない人形じゃないですからーーーーー!!
情熱的に、そして倫理に背いてまで選択した道は果たしてどこに繋がっているのか(((o(><;)(;><)o)))

圧倒的な設定と魅力的な人物達、
一瞬たりとも目が離せない官能的で疾走感満載の物語、
どうぞ×∞じっっっっっくりとお楽しみ下さい(*´▽`*)

2017年5月23日 9:21 AM

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