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【藍川せりかベストセレクション】恋のジレンマ=小悪魔の純情

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  • 作家藍川せりか
  • イラスト炎かりよ
  • 販売日2017/09/26
  • 販売価格600円

男性ならば誰もが放っておかないような、華やかで美しい容姿の女性たち。
しかし彼女たちはその恵まれた容姿が災いし、さまざまな悩みや葛藤を抱えている……。
ある女性は自分の本当の姿を隠しうそぶき、ある女性はわざと憎まれ役を演じる。
そして、本当の気持ちとは裏腹に口を開けばキツイ言葉ばかり出てきてしまう女性。
──たった二文字なのに、言葉にするのがこんなにも難しいなんて──
いつの間にか難しくなってしまった、本当の姿を見せること、正直な気持ちを伝えること。
果たして彼女たちは、本当に愛しい男性へ気持ちを伝えることが出来るのか……
恋のジレンマに揺れる、小悪魔な女性たちの不器用なラブストーリー3編を収録。

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 初めてのラブホテル。酔った勢いでリードされながら、上手く入ってこられた。
 大手イベント会社に入社して四年が経ち、地方に転勤になった同期の子たちが東京に集まることになって、今日は楽しくてたくさん飲んでしまった。
 頭がフワフワして、全身に自分の鼓動が脈打っているのが分かる。歩くのもやっとな感じで、同じ本社に勤めている桝田(ますだ)陽介(ようすけ)に抱えられながらここまでやってきた。
「杉枝(すぎえだ)、大丈夫か?」
「大丈夫、だよ……」
 これは大丈夫じゃないな、と呟く桝田くんは、私をベッドの上にそっと寝かせて上から覗(のぞ)き込むように私を見つめた。
 桝田くんの黒目がちな目が、私を熱く見つめている。元々男前だとは思ってはいたけれど、近くで見ると溜息が出るくらいに本当に整った顔立ちだ。女子社員からすごく人気で、とてもモテると有名な桝田くん。少したれ目で、目元のホクロがセクシー。その甘い眼差しで見つめられるとドキドキしてしまう。
「杉枝は……飲むとエッチしたくなるタイプなんだっけ?」
「……ん、そうだよ……」
 先程までの飲み会で、私は酔った勢いでそんな話を饒舌(じようぜつ)に語ってしまった。今まで経験した人数は数えきれないほどで、色んな人と今まで色んな経験をしてきた。彼氏も一人じゃ満足できなくて、股がけすることもしばしば。酔うとエッチしたくなるんだーなんて、遊び人発言しまくりで、皆から注目を浴びると何だか鼻高々で楽しくてついつい飲みすぎた。
──それが本当なら、どれだけいいことか。
「今日のことはちゃんと会社の奴らに内緒にするから安心していいよ」
「桝田くんも、遊んでるんだぁ」
「……さぁ、どうかな?」
 桝田くんは私の言葉をはぐらかして、そっと唇を塞(ふさ)いできた。唇が触れて、ぎゅっと目を瞑(つむ)る。唇の感触を感じる余裕なんてなくて、石のように固まる身体を何とかしないと、と力を抜こうと努力する。
「……?」
 そっと唇を離した桝田くんは、私の顔を覗き込む。怪しまれているのではないかと不安になって、顔を見られないように首に手を回して抱きついた。
──遊んでいるなんて嘘、本当は処女だし! しかも彼氏いない歴二十六年の危機的状況の崖っぷち。そんなこと、今更言い出せなくて自称遊び人と化して、ドサクサに紛れて脱処女を試みている今日この頃。
「もっと口を開いて。舌入れらんない」
「し、舌……?」
 舌って? 口の中に入れるの? 私の舌はどうすればいいの? 息は? ああ、もう息をするタイミングが分からないよーっ。
「……どうしたの? 緊張してる?」
「え、ええ? そんなわけないじゃん! 桝田くん、変なこと言わないでよぉ」
 ヤバイ、声が裏返っちゃった。もっとスマートにやり取りをしないと怪しまれて中断されてしまう。
「じゃあ、とりあえずシャワーでも浴びようか。このままするのも何だし」
「そうだね……。じゃあ先に入ってきてくれる?」
 私から入るなんて、絶対できない。お風呂場の構造とかラブホテル自体初めての私には難易度が高すぎる。こっそり桝田くんが入る様子を見て、そのマネをしようと思ってバスルームへ向かう桝田くんをチラチラ見ていると、急に振り返って意地悪そうな表情を向けてくる。
「待ってる時間が寂しいなら、一緒に入る?」
 な、なんと! そんな上級者なことを私が出来るわけがない。何て刺激的なことを言い出すの。私の予想をはるかに超えるような発言に思わずうろたえてしまった。
「もう、桝田くんったら。恥ずかしいこと言わないで。私はここで大人しく待ってるよ」
 返事はこれで合ってる? 不自然じゃなかった?
 私はぎこちない笑顔を浮かべて、桝田くんを見つめ返し、わかったと返事をしてバスルームに入っていく背中を見送った。

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