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【桜井真琴ベストセレクション】淫らな姿で戒めを乞う、可憐な蕾たち

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  • 作家桜井真琴
  • イラストヤミ香
  • 販売日2017/08/22
  • 販売価格600円

抵抗するふりなんて通用しないよ、本当はこんなふうに触ってほしかったんだろう――
気が強くて生意気な色香を放つ美女たち。
スポットライトを浴びステージに立つアイドル、子供の夢を一身に受け止める戦隊ヒロイン、医薬情報のスペシャリストMR……
彼女たちはそれぞれ、これが天職だと思って活躍している。
すぐ目の前にズル賢い男性たちの罠が仕掛けられているとは夢にも思わずに。
初めはほんの少しのきっかけだった。
艶めかしい視線や熱っぽい吐息、責めるような言葉になんて陥落するわけないと思っていた。
……でも、いつの間にか彼らの体温が恋しく、妖しく射抜くような快感に触発され――
強烈な愉悦から逃れられない、怒涛の展開3編収録!

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プロローグ
 目の前にいる可愛らしい男の子が、しゅんとした子犬のような顔をして、すまなそうに言った。
「……うーん、ごめん、実は一ヶ月」
 私は「えー?」と露骨に不機嫌な声を出す。すると彼はあたふたして、ご機嫌をとるように私の頬を撫でた。
「大丈夫だよ。あっという間だからさぁ。花梨(かりん)に逢えないのは、俺だって辛いんだから……」
 彼が私の唇を奪う。優しくて、とろけるようなキスだった。
 私の彼は医学生だ。名前は柴田(しばた)透(とおる)。二十四歳で私と同い年。
 つき合ってまだ半年の彼が、いきなりアメリカに一ヶ月も研修に行くと告白してきた。そんな突然の長期的な別れ。彼女としてはブーイングするに決まっている。
 キスが激しくなる。何度も角度を変え、舌をもつれさせる。
「可愛いよ、花梨」
 見つめられて、そんなことをストレートに言われては、もう非難することなんてできない。
「待ってて、花梨」
 そう、待ってる……。
 待つことだって、すごく楽しい期間だと、自分に言い聞かせる。
「愛してる、大丈夫。俺、花梨のことしか見えないから」
 私だって……。
 そんな想いを込めて、私は彼に再び口づけをした。
 ああ、この時が永遠だったらいいのに──と。
 このときは信じて疑わなかった。
第一章

 桐原(きりはら)花梨は、K医大病院の玄関前で深呼吸した。
(今日こそは、ぜーったいに話しを聞いてもらわなくちゃ!)
 いつも以上に気合いを入れて脚を踏み出す。病院内は冷房が効いていて、ひんやりして心地よい。
 花梨はいつものようにエレベーターに乗り込み、四階の内科医局に向かう。
 内科部長の白崎(しらさき)がとってくれた時間はわずか五分間。その間に新しく出た薬の効果に納得してもらい、このK医大で大量購入してもらわなければ……今月のノルマが達成できない。
 花梨はS製薬の営業、俗に言うMR(エム・アール)だ。MRとはメディカル・リプレゼンタティブ(Medical Representative)の頭文字をとったもので、医薬品メーカーの医薬情報担当者のこと。つまり一般では販売していない、医療用の医薬品を医者や病院にプレゼンし、定期的に購入してもらうのが仕事である。
 友達にはMRなんていうと、「何ソレ、格好いいね」なんて気楽に言うけれど、実態は全然違う。
 何が大変って、セールス相手が一筋縄ではいかない医者たちだからだ。とにかく医師という人たちは浮き世離れしていて、はっきりいって変人が多い。
(今日ご紹介の内服液は、より胃に優しくて、しかもなんと今までの薬より二十五パーセントもお安くなって……)
 花梨はテレビ通販のような大げさな売り文句を頭に刷りこみながら、エレベーターを降り、ナースステーションの看護士たちに挨拶してから、医局に向かった。
「おい、ぶつぶつ言いながら歩くな。気持ち悪いぞ」
 突然、背後から聞き慣れた声が降ってきた。
 振り向けば、銀縁の眼鏡の奥に意地悪そうな切れ長の瞳。クールといえば聞こえは良いが、無表情でこちらをじっと見つめる仏頂面……内科部長の白崎賢吾(けんご)だ。
 まだ三十六歳。それなのに部長という重要なポストをまかせられている若き天才医師。
 彼はパソコンなど使わなくとも、身体に触れるだけでなんとなくの身体の数値を読み取れるらしい。難しい症状も難なく暴き出してしまうという神業で、他の病院からも先生たちが見学にくるほどだ。
 しかもこの先生、大きなK医大の中でも一、二を争う格好良さ。まだ独身ということで、看護士たちが日々、目の色を変えて部長夫人の座を狙っているという。
 だけど……自分にとっては……これぞ、まさに天敵。

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