夢中文庫

甘えて、甘やかして。たっぷりと

  • 作家ひなの琴莉
  • イラスト蘭蒼史
  • 販売日2015/11/2
  • 販売価格300円

『おっぱいオバケ』と小さい頃にアダ名をつけられたあゆり。大学生の時参加した合コンでは『アダルトビデオに出ていそう』と言われ男性が苦手になってしまった。大きな胸がコンプレックス。化粧品会社に入社し、恋愛もせずに社会人になってしまう。そんなある日、自分の会社の副社長が大事にしている物を壊してしまう。威圧的でなんでも思ったことを言う副社長から言われた処分は「恋人のふりをしてくれ」だった。一緒に過ごしていく中、あゆりは自分でも信じられないほど速いスピードで恋に落ちていく。24歳と36歳。年の差や身分差があるのにどんどん好きになってしまい、眠っていると思って副社長にキスをしてしまった。しかし起きていて…

プロローグ

「おっぱいオバケ」
これは、春瀬(はるせ)あゆりが小学5年生の時につけられたアダ名だ。
身長は大きいほうではなかったが、どんどんと膨らんでしまった大きすぎる胸がコンプレックスであった。
男子にからかわれたくなくて関わらないように過ごしていた。
それでも年頃になると恋愛をしてみたいと思って合コンに参加したこともある。
その時に隣に座った男性は、あゆりをジロジロ見て言った。
『おっぱい、なにカップ?』
デリカシーのない言葉に唖然(あぜん)としていると、他の男性はもっと失礼なことを言ってきた。
『なんか、きみってえろい身体してるね。アダルトビデオに出てそうなんだけど』
その場に参加していた男性は一気にあゆりを見た。
男なんて大嫌い!
いやらしくて、気持ち悪い!
その時以来あゆりは男性を避けて恋愛をしないで生きてきた。
誰のことも好きになったことがないまま大人になってしまった。
この先もきっと恋をしないで生きていくのかもしれない。
地味に生きていこうと思っていたのに――……。


あゆりは、たくさんの書類を抱えて、KOB化粧品本社ビルの廊下を歩いていた。エレベーターに乗り込むと鏡に映る自分と目が合う。
大きな瞳にぽってりとした分厚い唇。あゆりは、少し口紅を塗るだけでも「派手だね」と言われるほど、華やかな顔立ちをしている。
そのため、普段からナチュラルメイクを心がけていた。
肩下まである髪の毛の先は軽くカールされており、職場ではひとつにまとめている。
会社に制服はなく私服なので、大きすぎる胸が目立たないようなふんわりとしたカットソーとひざ下丈のスカートでいることが多い。
今日はグレーのカットソーと黒いスカートだ。
男性が苦手なあゆりは、男性が少ない会社に入りたいと思っていた。
色々と求人を見る中で、自分が愛用している化粧品会社があり倍率が高いが受けてみると念願かなって入社することができた。
総務部に配属されて2年目の24歳。
たしかに女性の多い職場だけれど、役職者や営業部には男性もいる。男性がいない社会なんてないのだから仕方がないのだけど。
エレベーターを降りたあゆりは、ファイルを何冊も重ねて運んでいた。秘書課が会議で使うものらしい。
(重たいなぁ……。よいしょっと)
落とさないように慎重に運んでいる時だった。
「きみ」
男性の声がしてぞっとする。
次の瞬間、背中に触れられた。
「きゃああああ」
「おい、叫ぶな」
一気に全身に鳥肌が立ち慌てて逃げようとする。
恐怖心が襲いあゆりは頭が真っ白になった。
手の力が抜けたせいでファイルは音を立てて床に落ちてしまう。書類が散乱してしまった。
振り返ると背の高い男性があゆりを見下ろしている。
なんとか彼から逃げようとしてしゃがんだあゆりは、急いで書類をまとめようとするが、手が震えてうまくいかない。
ふうと溜息が聞こえた。
彼もしゃがむと手が伸びてくる。
「やめて!」
恐怖心から男性の胸元を手で押すと、彼はバランスを崩して倒れそうになる。立ち上がったあゆりは、自分のできる精一杯の怖い顔をして彼に一歩近づく。
「ゆ、指一本触れないでください!」
パリっとなにかが割れる音がした。
少しだけ冷静になって下を見ると、スマホが落ちている。
そのケースを踏んづけていた。
このスマホはおそらく、彼の物だ。
「ごめんなさいっ」
びっくりしてしゃがんでスマホを拾うと画面は壊れていないがケースが割れていた。高級そうな……漆のようなモダンなケースだ。
書類を拾って立ち上がった彼は、あゆりにファイルを渡す。受け取ると、スマホをあゆりの手から抜いた。そしてあゆりのことを上から下までじろりと査定するように睨(にら)んだ。
「ずいぶん、自分に自信があるんだな」
低くて落ち着いた声をしている。
「自信とかじゃなくて……」
「別に俺はきみに興味があって声をかけたわけじゃない。背中に虫がついていたから指摘をしてやりたかっただけだ」
怖い顔をした彼は、あゆりを見下ろしている。
キリッとした眉毛に奥二重の瞳は黒目がちで意志が強そうだ。高級そうなブランドスーツに身を包んでいる。スーツの上からも鍛えられている身体だとわかるほど、スタイルがいい。
「申し訳ありません……」
ふと、彼の胸元にある名札を見る。
『副社長 高畠(たかばたけ)』の文字が金色の名札に堂々と書かれていた。
社長の息子は、海外勤務から帰って来て副社長に就任するらしいと噂を聞いていた。顔を見てわからなかったのはそのせいだ。
(この方が副社長……?)
「あの……大変失礼な質問なのですが……」
「なんだ?」
「高畠社長の息子様でいらっしゃいますか?」
高畠は眉毛をぴくっと動かして不機嫌そうな表情をする。
「そうだが、問題でもあるのか?」
あゆりの男嫌いを社内で知らない人は、いない。だから、あゆりに男性社員は決して触れないように気をつけている。
口説いてくる人も中にはいるけど……。
「大変申し訳ございません! 副社長に対して失礼な行動をしてしまいました」
副社長に向かって頭を深く下げた。
心から反省しつつ、おどおどしながら顔を上げる。
「……スマホケースを弁償させていただけませんか?」
心から詫びる気持ちで言うが高畠はむっとしているようだ。
(副社長を怒らせてしまった。どうしよう……)
「簡単に弁償など言わないでくれ。これは知り合いのデザイナーに作ってもらった一点物だ」
たしかにこの辺では売ってなさそうだ。
なんてことをしてしまったのだろう。
「本当に、本当に、申し訳ありません。そんな大切な物を……」
「いまは忙しいから、きみの処分は後ほど考える。部署名と名前を教えてくれ」
「そ、総務部の春瀬あゆりと申します……」
「わかった。覚えておく」

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