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オレサマ課長との十年越しの恋~帰ってきた幼なじみ~

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  • 作家雛瀬智美
  • イラスト桐矢
  • 販売日2016/09/28
  • 販売価格400円

「しーくん、私が大きくなったら、お嫁さんにしてね」──幼い頃に年上幼馴染「しーくん」と交わした約束を、桜夢は23歳になった今も忘れられないでいた。彼と過ごした数ヶ月のかけがえのない思い出を胸に、彼との再会を待ち望む日々を送る。ある日、桜夢は通勤途中で男性とぶつかりかける。紳士的で誠実そうなその男性に少し心惹かれた桜夢だったが、やはり心にあるのは幼き日の彼の姿。面影を思い出し、会いたい気持ちが募っていく…。そんな時、新任課長として桜夢の会社に赴任してきたのはなんとあのぶつかりかけた男性であり、年上幼馴染「しーくん」だった! 表と裏の顔を使い分け、余裕たっぷりの彼に翻弄される日々が始まる…!


 幼き日の思い出は、いつだって私に力をくれてきた。
 隣の家に住んでいた幼なじみの10歳年上の少年との淡い記憶。
 とても、背が高く大きくて手を繋いで歩いても、視線が合わなかった彼。
 困ったように抱き上げてくれる度、彼の目は細められ、柔らかく微笑んでくれた。
 高校一年生だった彼は、幼稚園児の私より毎日が忙しそうで、週末以外は、さすがにあまり会えなかったけれど。
 あの日も、歩幅を合わせてくれたのに、結局追いつけず、少し離れた場所にいる彼に置いて行かれる不安に駆られた。
「しーくん……待って」
「しょうがないな」
 しーくんこと一条紫吹(いちじようしぶき)は、6歳の私にとって年の離れたお兄ちゃんのような存在だった。
 いつも、優しくてちょっと意地悪。
 年の差と体格差のせいで縮まらない歩幅は悲しかったけれど、それでも一緒に歩いてくれるのが嬉しかった。
 大きいのに、小さい子供と遊んでくれるそんな人他にいないのではないだろうか。
 面倒だし、話も合わない。
 小さい子供の話は、自慢とか、自分の主張ばかりだ。
 大人で相手をできるのは親や、身内、幼稚園の先生までだ。
 彼も大人ではなかったけれど、幼稚園児からしたら、とても大人に見えた。
 親より少し若いだけで、何でも知っててできると、羨望を覚えたものだ。
 私はその当時、他の子より注意力も散漫で、よく転んではしーくんに呆(あき)れられた。
 でも呆れても放って置いたりはしない。
 面倒を最後まで見てくれる人だったと思う。
「っ……いたっ」
 立ち止まって待ってくれている彼の方に近づこうと歩みを早めた途端、つまずいてこけてしまった。
 膝をすりむいたようで、じくじく痛む。
 鼻がつーんとして、涙がじわっと、こみ上げてきた。
 めそめそしはじめた私を見たしーくんこと、紫吹お兄ちゃんは、呆れたように小さく笑った後、背をかがめて、その大きな背中におぶってくれた。
 現金なものでさっきまで泣いていたのに、けろっと泣き止んだ私は、彼の背中ではしゃいだ。
 優しいけど、手をつないでくれないしーくんが、おんぶしてくれたことが嬉しくてしょうがない。
「しーくん、私が大きくなったら、お嫁さんにしてね」
「ぷっ……なれるのかよ」
「なるもん。しーくんがびっくりするくらい、美人にもなるの」
 しーくんは、からかうみたいに笑って、私を抱え直した。
「約束は守れよ。さくらは絶対美人になるって期待してるからな」
「大きくなるの」
「あんまり大きくならなくてもいいからな」
「どうして?」
「さくらには、俺を見上げていてほしい」
 しーくんの柔らかい声が耳元に届く。
 彼の言う事は当時の私には難しくてよくわからなかった。
 背中にしがみつくと抱え直してくれた。
 日が沈む夕暮れ時。
 しーくんは、いつもの様に私を送り届けておうちに帰った。
 どうしてだろう。
 彼と離れるとぽつんと取り残されたような気持ちになる。
 丁寧(ていねい)に挨拶して帰るしーくんは、うちのお母さんにも、とても気に入られていた。
「紫吹くんは、かっこいい子ね」
 かっこいいの意味がわからなかったから、首を傾げていた。
「素敵ってこと。礼儀正しいし見た目もかっこいいものね」
 お母さんは、しーくんを褒めてくれてる。
 難しい言葉がわからなかったがそれだけを理解して、頬を染めて喜んでいた。
「大きくなったら、ううんおとなになったらしーくんのお嫁さんになるの!」
 無邪気な私に、お母さんは悲しげに笑っていた。
「しーくんは、お母さんのお仕事が決まったからお引越しするのよ」
「いなくなっちゃうの?」
 ぽたぽたと、涙をこぼす私を抱きしめてくれたお母さんは、
「大きくなって逢(あ)えたらいいわね」
 と、なぐさめてくれた。

ご意見・ご感想

編集部

子どもの頃に交わした約束を覚えていますか?

小さい頃に年上の幼馴染「しーくん」と離れ離れになった桜夢ちゃん。
少し意地悪だけど優しい彼が大好きな桜夢ちゃんは
「私が大きくなったら、お嫁さんにしてね」と無邪気な約束を交わしていました。
それから長い年月が流れ、それなりに恋愛をしてきたけれど、
やっぱり桜夢ちゃんの胸の奥には在りし日の「しーくん」の姿が…

複雑な思いを抱えながら過ごしていたある日、ななななんとその愛しの彼に再会!?
幼き日の面影を残しながらも、大人の余裕たっぷり色気たっぷりの
魅力的な男性になっていたのです!(*/▽\*)

再会できて幸せ!…だけど一枚も二枚も上手な年上幼馴染に翻弄されて、
ドキドキして心臓がもたなくなっちゃう?! ぜひお楽しみください♪

2016年9月28日 1:03 PM

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