夢中文庫

最後の恋

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  • 作家いしいのりえ
  • イラストいしいのりえ
  • 販売日2013/4/26
  • 販売価格300円

会社と家の往復だけの退屈な日常を送る、アラサーOL・美貴。甘え下手で、自分の想いを伝えることが苦手。消化不良のまま別れることになってしまった、前の恋。そんなある日、美貴の元に、元カレからの結婚報告葉書が届く……。女友達と飲んでいた店で、突然の出会いが訪れる。今まで出会ったことのないルックスの年下男・章司。彼の鋭い視線に捕われながら、美貴はふつふつと過去の恋愛を語り始める——。次こそは、最後の恋にしたい——不器用な美貴と明るい年下男・章司の恋の行方は?

真っ暗闇の部屋に、ぽつぽつと明かりがともっている。

その光に目をまるくし、刹那、ふう、と肩を落とした。

またやってしまった――会社で持たされている仕事用のケータイは肌身離さず持ち歩くくせに、私用のケータイはしょっちゅう自宅に置き忘れてしまう。

先月、長年使っていた携帯電話を機種変更し、スマホにしたばかり。慣れない手つきでロックを解除すると、どうでもいいメールがどさっとダウンロードされる。

書類がごっそり詰まったバッグを床に下ろし、メールをチェックした。女友達から一件、ワインバーからのお知らせ、他はすべて通信販売会社のDM……。

三十路に片足を突っ込みはじめた独身シングル女の携帯事情なんて、こんなものだ。

ケータイは、恋人のためのツール。恋愛していない女にケータイなんて必要ない。

コートも脱がずにキッチンに戻り、先ほどコンビニで買って来た総菜を電子レンジに放り込む。

今夜の夕食は、コンビニで買ったイカとブロッコリーのオリーブオイル煮。それとレトルトのスープを温めて、先週末空けた白ワインをちびちび飲む――その前に軽くシャワーを浴びて、ビールをひと缶開けよう。

テレビの電源をオンにした。BGMは日付変更前のニュース番組。一日じゅう歩いてくたくたになったジャケットとタイトスカートを脱ぎ捨て、シャツのボタンをふたつ開けて、ストッキングを脱ぎ捨てた。

シャツとショーツ一枚のまま脱衣所に向かう。浴室のドアを開いて栓をひねると、蒸気とともに熱湯が勢いよく放出する。

シャツを脱ぎ、一日じゅうバストを締め付けていたブラのホックを外すと、ようやくほっと安らかなため息が漏れた。ショーツを脱いで籠のなかにすべて放り込み、熱いシャワーを全身に浴びる。唯一、心から落ち着けるひとときだ。

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著者乃村寧音
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