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愛ならこの手を離さないで~都合のいいオンナじゃいられない~

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  • 作家泉怜奈
  • イラスト雪乃つきみ
  • 販売日2016/02/29
  • 販売価格300円

「こんなに感じまくって、乱れて……愛実は俺なしじゃダメだろ?」友達以上恋人未満、体を繋ぐ曖昧な関係。入社以来、愛実は同期の圭斗とそんな関係が続きもう7年になる。このままこうしていていいの? 結婚して家族団らんに憧れる愛実は迷いが生じる微妙な年齢にさしかかってきた。そんな時、部署統括で新部長に抜擢されたのは、大人の魅力溢れる筒井。筒井は包み込むような余裕の態度で愛実を真剣に口説き出し……。「結婚を前提に真面目に付き合ってほしい」と言う彼の言葉に揺れる愛実。愛してるのは圭斗。だけど包容力のある大人の筒井と結婚したら幸せになれる? 大人の男性と情熱的な彼の間で揺れる女心。愛実の下した決断は?


 カチ、カチカチ
 マウスの音が先ほどからひっきりなしに朝のオフィスに響いている。
 PC用の眼鏡をかけ、画面を睨(にら)みつけるように集中していた仲原愛実(なかはらまなみ)は一旦動きを止め、ぐるっと首を回し深く深呼吸した。また画面に向き直ると今度はキーボードを記録的な速さで打ち始める。
 月曜日の午前中は目の回るような忙しさだ。特に週末のうちに溜まったメールから処理しないといけない。
 9時前のオフィスに愛実以外で出社しているのはたった数名だ。そろそろ主任がやってくるころだろうと、時計をちらっと見ると8時55分だった。
「おはよう、仲原さん」
 愛実は手を止め、声をかけて来た上司でPR主任の篠塚貴美子(しのづかきみこ)に振り向いた。
 どんぴしゃり! 自分の直感が当たり少し気分がよくなった。
「おはようございます。主任。朝一で開発部から新ブランドのサンプルをいただきました」
「海外向けの?」
「はい。デスクの上に一通り置いておきました」
「さすが、気が利くわね。ありがとう」
 いつもこうやって何かにつけ褒めてくれる憧れの上司、コスメティック部門広報部、PR担当、主任の貴美子に入社以来お世話になっている。もう7年になるのだ。阿吽(あうん)の呼吸とまでは言わないが、それなりに相手のことはよくわかっていると言えると思う。当初3人だった広報部はいまや貴美子と愛実の二人だけになり、それこそ目の回るような忙しさだった。
 広報部と聞けば華やかなイメージがあるが、アシスタントである愛実の仕事はもっぱら雑用である。
 雑誌社に打ち出し商品のサンプルを贈ったり、ページ枠をもらうために編集者、ライターのご機嫌を取るのも忘れてはいけない大事な仕事のひとつだったりする。
 日々の業務に忙殺され、気がついたら残業。そんな仕事オンリーの淋しい日常だったとしても、会社を辞めたいとは思わない。
 海外にも名の知れた大手世襲グループのアサノグループ、コスメティック部門、アサノビューティに短大卒の愛実が入社できたことは幸運と言える。それにもうひとつ、愛実にはここに居たい特別な理由があった。
 そのもう一つの理由となる該当人物のことを考えると、胸がキュンとし、甘美な震えが全身に駆け巡る。明け方まで散々快楽を与えられた愛実の体はいまだに熱が冷めていない。それを追いやるように深く息を吐いた。瞬きし脳裏によぎったエロティックな残像を追い払う。
 さてと、あともうひと頑張り、メールを片付けてしまおう。
 愛実はまた画面に向き直り、リズミカルにタイピングし始めた。その時、「おはよう」と愛実の頭上を横切った声にドキンと反応してしまう。愛実に声をかけたのは、海外事業部の主任、逢沢圭斗(あいざわけいと)だ。彼こそが愛実がここに居続けたい一番の理由だった。
「おはようございます」と、ちらっと視線を向けて挨拶する。彼とは同期だが、いち早く主任に昇格していることもあって、人前では敬語を使う様に心がけていた。それに、そんな風によそよそしい態度の方が二人の秘密の関係を誰にも気づかれないのではないかという愛実なりの配慮もあった。
 海外事業部は広報部の斜め前にありパーテーションで仕切られているだけで、話し声や電話の声など普通に聞こえる距離だ。
 愛実はちらちらと斜め前の様子を窺いながら頃合いを見計らって立ち上がった。今朝届いたパッキンの中を探り、新製品のサンプルを取り出し、パーテーションを挟んだ向かいの部署へ向かった。
「逢沢主任、これ、ヨーロッパ用の新製品のサンプルです」
 愛実はそれらを机の上に置いた。すかさず横から海外事業部の面々が集まってくる。
「うわぁパッケージ可愛い。色も春っぽくていいですよね」
 女性はやはり色やパッケージに目が行くようで、瞳の輝きで気に入ったのかどうかすぐにわかる。そんな女子の声に混ざって、男性の声が混じる。
「仲原さん、逢沢君とは同期なのに、相変わらず逢沢主任って……丁寧だねぇ」と、愛実をからかっているのは海外事業部の係長だ。
「あ、はい。主任ですから……それに、逢沢主任は同期と言っても私より年上ですし……」
「えっ? あ、そうか、仲原さん落ち着いて大人びてるから感じなかったけど短大卒なんだね。しかし本当にいつも落ち着いてるよねー、君みたいなタイプをクールビューティっていうんだよね?」
 愛実は話がどんどんいらぬところへ向かっていくことに居心地が悪くなり、返事もできず茫然(ぼうぜん)としてしまう。本人は動揺しているのだが、茫然としている表情を冷静だと誤解されてしまうのだ。
「仲原はあまり感情を表に出さないから、冷たく感じるだけでしょ。係長」と、圭斗が言った。
 あまりの言われ様に少しむっとしてしまう。愛実にとってはこれでも表情に出しているつもりなのだ。けれど、他人からは無表情に映っているらしい。
 ブルーベースのどちらかというと青白く見える白い肌に切れ長の二重と来れば少し寂し気な冷たい雰囲気になってしまう。その上、目の色が真っ黒なのだ。吸い込まれそうなほど黒い目だとよく言われる。それも冷たい印象を強くしていると自分でも自覚していた。
 華奢(きやしや)な体型で線が細く小柄なのもよくない。そんな自分の欠点を挙げればきりがない。
 これ以上ここにいたら、何を言われるかわかったものではない。最悪な気分になる前に退散するべきだ。
 愛実は「渡すものは渡したので私は失礼します」と、簡潔に言ってその場を離れた。
「ありがとう」と、背中に向かって投げられた彼の声にささくれだった心がジワリと沈静されていくのを感じていた。
 こんな風に愛実の心を乱すのは彼だけだ。だけど彼にとっては愛実との関係はただ単なる都合のいい関係に過ぎない。だから、愛実と親しい間柄だということを誰にも悟られないように隠そうとするのだ。
 友達以上、恋人未満。身体の関係を持つ曖昧な関係。
 逢沢圭斗とは入社以来、この関係が続いていた。

ご意見・ご感想

編集部

7年も続く愛実さんと圭斗さんの秘密の関係に、愛実さんをくどく大人上司筒井さんの乱入で変化が!? あなたは、母性本能を揺さぶる圭斗さん派? 大人な魅力満載な筒井さん派? 官能と愛溢れるラブストーリーを是非、お楽しみください!

2016年3月1日 1:36 PM

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