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クールな課長に、責任とってもらいます!

  • 作家神埼たわ
  • イラスト篁ふみ
  • 販売日2017/11/28
  • 販売価格300円

入社以来、イケメンなのにクールで無表情、でもデキる男の山之内課長に叱られてばかりの琴音は、とうとうストレスによって驚くべきことが身体に起こってしまう。ウソ、信じられない…と絶望する中、医者からは「特異体質です」と告げられてしまう。心配ないとは言われたが、ある日あまりの痛みに会社で動けなくなってしまう琴音。苦しさに正気を失い、通りがかりの課長に「課長から受けたストレスのせいで、特異体質になったんです。責任を取ってください!」と迫ってしまい…!? だが、課長は怒ることなくうなずき、琴音の指示のまま豊かなバストに顔を近づけ……? クールな課長と特異体質を抱えた琴音の奇想天外ラブコメディ!

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「い、痛っ……」
 私、宮沢(みやざわ)琴音(ことね)はあまりの胸の痛みに、オフィスの廊下でうずくまっていた。
 原因はもちろんわかっている。思いがけず、アレが壊れてしまったからだ。一分一秒でも早く買いに走りたい。
 だけど、事情が事情で──。
 直属の上司である営業企画部の山之内(やまのうち)課長は、社内でも評判のイケメン。しかし喜怒哀楽を顔に出さないサイボーグで、仕事のできない入社二年目の私にはとくに厳しかった。
 だからどれほどの緊急事態であっても、簡単に早退はできない。
 なんとか、昼休みまで……。
 と、私は立ち上がり、営業企画部のオフィスに戻ろうとしたが──。
「痛っ! やっぱり、無理かも……」
 ふたたび激痛に襲われ、その場にしゃがみ込んでいた。ついには動くこともできなくなっている。
 どうしよう……。
 早く戻らないと、また課長に叱られるだろう。こんなことなら、思い切って会社を休めばよかった。
 そんな後悔の中にいると──。
「なにしてるんだ?」
 聞き覚えのある低音に、背筋が凍りついた。恐る恐る振り返ってみると、
 さ、最悪……。
 山之内課長が立っている。しかも眉を顰めて。
「あ、いえ、あの……すみません、課長……」
 しどろもどろになり、つい普段の癖で謝ってしまう。が、
「どうかしたの?」
 彼の声はいつになく優しかった。
「そ、それが……ちょっと、胸が……」
「胸?」
「は、はい」
「心臓に持病があったのか?」
 課長は驚いたように聞いてくる。
「とくに、そういうわけでは……」
 私は誤魔化すように答えたが、
「とにかく救急車を呼ぼう」
 彼は先走った。
「だ、大丈夫です! 大丈夫ですから」
「しかし」
 大袈裟な課長に、私は心臓病の心配がないことを伝える。
「だったら、医務室に……」
 普段は親切の『し』の字も見せない長身の彼が、心配そうに私の身体を抱きかかえようとする。
 この人なら……。
 切羽詰まり過ぎた私は、とんでもない直感に襲われてしまう。
「あの、課長……」
「ああ」
「医務室に行くより、早く楽になる方法があるんです。それには、課長のご協力が必要で……」
「俺の協力……?」
 彼は首を傾げて私を見たが、それでも、
「一生のお願いです。とりあえず、一緒に小会議室へ入ってください!」
 私は偶然にも空室になっていた目の前の小会議室を指さした。
「わかった……」
 課長はそれ以上尋ねることなく、頼みを聞いてくれたのだ──。
 そう私、宮沢琴音二十三歳は、誰にも言えない秘密があった。妊娠や出産どころか、男性との初体験もまだなのに、母乳が出るのだ。
 その奇妙な現象は女子大を卒業後、S&Kコーポレーションに入社してからすぐに始まった。
 配属された営業企画部には、常にピリピリとした雰囲気が漂っていて。どちらかというと気の小さい私は日々緊張の連続。
 それもこれも三十一歳の若さで、課長に抜擢された山之内誠也(せいや)が原因だろう。
 彼は出世のためなら、手段を選ばない冷酷なタイプ。業務の正確さと効率化に重点を置き、決してミスを許さなかった。もちろんそんな職場に、笑い声はなかった。
 いくらその見かけが俳優やモデルにも引けを取らないイケメンで、センスのいいビジネススーツに、憧れブランドの高級時計を着けているとしても。歪みまくった陰険な性格では、当然のように部下たちからも嫌われている。
 出来の悪い私は、彼のターゲットなっていた。細かい注意を受け、怒られてばかり。
 だけど彼のバックには、重役がいるとかいないとか。社長の娘婿候補だという噂まであって、営業企画部では誰ひとりとして歯向かうことができない。
 男性経験のない私が、こうした奇妙な身体になってしまったのも、間違いなく課長のせいだ。いじめられ、目に見えないストレスが溜まってしまったのだ。
 もちろん私は、女性専門クリニックをすぐに受診した。
 診てくれた女性医師は、
「環境の変化で、女性ホルモンが乱れたのでしょう。ちょっとした特異体質です。心配ないと思いますよ」
「つまり、病気ではないんですね!」
「宮沢さんのような方は、他にもいらっしゃいます。少し様子を見ましょうか」
 と、にこやかに告げた。
「ありがとうございます!」
 私はその言葉に、どこまでも救われた。闇夜に覆われた絶望の世界に、一筋の光を見たようだ。
──しかし。

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