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猛獣殿下に愛された婚活姫

  • 作家桐舞子
  • イラスト緋月アイナ
  • 販売日2018/5/11
  • 販売価格300円

エルヴィーラはレーム王国国王の姪であり、王の名代として周辺各国を巡っていた。表敬訪問の理由はエルヴィーラの身長にあった。背の高いエルヴィーラは良縁に恵まれず二十四歳の今に至っている。結婚をあきらめたエルヴィーラに対し、国王は国内に相手がいなければ外国にいるかもしれないと言ってエルヴィーラに婚活を命じたからだった。そんな無茶な……困惑しながら各国を巡るがそんな都合のいい話などあるわけがない。そう思って最後の国を訪れれば、そこには長身のエルヴィーラが見上げるような大男がいてエルヴィーラを小柄と言う始末。さらには彼こそが現王の弟で、周囲から「猛獣殿下」と称されているその人だと教えられるのだが――

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第一章 猛獣殿下からの求婚
「エルヴィーラ姫、謁見の間にて両陛下がお待ちにございます。どうぞこちらへ」
 宮中に仕える中年の侍従に案内をされ、エルヴィーラは彼のあとをついていく。
 王家に仕えている侍女たちが壁際に寄り、エルヴィーラひとりのために道を開け、頭を下げていた。
 レーム王国国王の名代として、このヴェーヴァ王国を訪問したエルヴィーラに、彼女たちは敬意を表してくれているのだろう。
 しかしそれは形式だけのことだとはわかっている。彼女たちはチラチラとエルヴィーラを見上げ、大きく両目を開き、心の中では「レーム国王の姪エルヴィーラ姫という方は、なんと背の高い女性なのか」と、こう思っているに違いない。
 目の前を歩く侍従は決して低い身長ではなく、むしろ成人男性の平均以上はあるのだが、エルヴィーラはそれより頭ひとつ分は高かった。
 いつものことだ。
 背が高いエルヴィーラは、常に周囲から奇異の目で見られることが多い。国内にいるときはもちろん、こうして国外へ出たときもそうだ。
 自分が見世物にでもなったようで、毎回惨めになってくる。一刻も早く帰国をし、自分の屋敷に引き籠もりたい気分だ。
 そもそも国王の姪であるエルヴィーラがどうして名代として、この国を訪れることになったのか。
 話は一年前に遡る。
 エルヴィーラの父はレーム王国王家の血を遠くに引くフリンツァー公爵、母は現国王の妹だ。このふたりの長女として生まれたエルヴィーラは、なにひとつ不自由のない生活を送っていた。
 金色の髪はややくすんでいるものの、緑色の瞳は翡翠のように清らかで、容貌はすっきりと美しく、透き通るような白い肌を持ち、幼少のころから「将来、エルヴィーラ姫は国いちばんの美女におなりになるかも」と、周囲から囁かれていた。
 ところが背丈は止まることを知らないように伸びていき、十代の終わりには「エルヴィーラ姫は国いちばんの背高な女性になられた」と言われるに至った。
 十代の終わりごろから次々と友人たちの結婚が決まっていっても、エルヴィーラひとりだけが独身のままだ。求婚された経験はないし、家柄目当てで近寄ってくる者すらいなかった。
 男性からすればいくら身分が高い女性であっても、これだけ妻の背が高くては見た目が不釣り合いで、夫としての立場がなくなる。
 もちろんさほど身分の高くない貴族や一般人まで範囲を広げれば、エルヴィーラより高身長の男性はいるかもしれない。気が合えば身分を問わず、結婚してもかまわないとまで考えていた。
 しかし伯父の国王が「仮にも王妹を母に持つ姫。身分の低い男との結婚はならぬ」と許さなかった。
 やがて妹たちも結婚が決まっていき、姉妹の中ではエルヴィーラだけが残されてしまった。
 すでに二十四となり、あと一、二年もすれば、完全に婚期を逃してしまう。二十代後半となった姫など、誰も妻に迎えたいとは思わないだろう。
 自分は異性に縁がないのだと結婚を諦め、地方のどこかに小さな館を建ててもらい、ひとり静かに生きていこうと決めていた。
 それを耳にした伯父が「我が名代として、各国を親善訪問せよ」と、エルヴィーラに命じてきたのだ。
 もちろん親善訪問とは表向きの理由で、実際は「国内に婿がいなければ、外国にならいるかもしれぬ」と、伯父は言いたいのだ。
 エルヴィーラからすれば、国内にすら自分を妻にと望んでくれる男性がいないのに、外国ならなおさらいる気がしない。
 この役目は断ろうと伯父に申し出たのだが、「王命だ」と拒否をすることを許されず、仕方がなく各国を訪問することになってしまった。
 しかも一国を訪問するのに、馬車で何日もかかる。数ヶ国を回っている間にエルヴィーラは誕生日を迎え、とうとう二十五歳になってしまった。
 その間に伴侶となりそうな異性との出逢いがあればよかったのだが、当然のことのようになかった。
 レーム国王の名代ということで、どの国でも高待遇でエルヴィーラを出迎えてくれるのだが、やはり「背高な姫ぎみ」との評価があるのみだ。
 そしてとうとう最後の訪問国であるヴェーヴァ王国に到着することになった。

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