夢中文庫

泣き虫メイドとご主人様

kirinorino02_s
  • 作家桐野りの
  • イラスト中田恵
  • 販売日2016/05/17
  • 販売価格400円

兄の借金返済のため富豪・西園寺貴一のメイドになった彩月。待遇はよく指導係の執事は優しく最高の職場…雇い主、貴一のセクハラを除いては。気弱な彩月にセクハラはエスカレート。とうとう初キスを奪われてしまった。思い切ってやめるよう訴えると事態は悪化。唯一の味方老執事は解雇、彩月は貴一に襲われてしまう。「本当のセクハラってもんを、今からお前に教えてやるよ」意地悪な囁きに震え上がる彩月。でも貴一の巧すぎる愛撫に身も心も蕩けてしまう。ご主人様はわたしをからかってるだけなのよ。本気になんかならないんだから……!と言い聞かせるも胸のトキメキは止まらない。泣き虫メイドとドSな富豪のキュートでホットなラブロマンス。

◆一話
「ご主人様、お茶をお持ちいたしました」
 太田彩月(おおたさつき)は大きく深呼吸をして、木造りの重厚なドアをノックした。
 返事はないが中から人の声はする。
「……先月の売り上げは三百か。まあまあだな。けどもう少し攻めてみてもいいんじゃないか?」
 どうやら会議中らしい。
「失礼します」
 彩月は小声で声をかけると、ドアを開け書斎へと足を踏み入れた。
 彩月のご主人様こと西園寺貴一(さいおんじきいち)は、窓を背にしたデスクにつき、壁にかかった大きなモニターに向かっていた。
 よわい二十九歳にして、日本を代表する財閥西園寺グループの長である彼は、屋敷内にあるこの書斎を仕事の拠点とし、世界中に散らばる社員やクライアントとネットを介してコミュニケーションをとっている。
 ワーカホリックな彼は、今もモニター越しの会話に夢中になっていて、彩月の存在に全く気づいていない。
(……お茶を置いてさっさと帰ろう)
 彩月は半ばほっとしながら、広いフロアを横切った。
 大窓から忍び込んできた初夏の風が、西園寺の長すぎる前髪をはらい、秀でた額があらわになった。
 昼下がりの日差しが、西園寺の彫刻みたいに整った横顔に、柔らかくまとわりつき、彩月はその美しさに思わず見とれた。
(神様は、きっとご主人様に、うんと綺麗(きれい)な見た目と冴えた頭を与えて、その代わりに性格を捻じ曲げちゃったんだわ……)
 そんな考えがふとよぎる。
「まあ、新店舗のプロデュースは全面的に任せるから、好きにしろ。それより例の件だがな……お、なんだお前」
 西園寺はやっと彩月に気づいたらしく、ぎょっとしたように眉根を寄せた。
「あの……お茶をお持ちしました……」
 思いもよらぬ西園寺の反応に、彩月はピクリと硬直した。
 ウェブカメラの位置は把握しているから、自分が映り込まないように注意を払っていたつもりだった。
 だけど西園寺にとっては、十分空気を読まぬ行動だったらしい。
「悪い。また後で連絡するわ」
 西園寺は再びモニターに向かうと早口で言った。
 アロハシャツを着た男性が、片手を上げる。
 真っ黒に日焼けしているため、日本人なのか外人なのか、彩月には判別できなかった。
 接続を切ると、西園寺は鋭い目で彩月を睨(にら)んだ。
「今の話、聞いたか?」
「いいえ、たいしたことは何も」
 彩月は戸惑いながらそう答えた。
 今まで何度もウェブ会議中にお茶を運んだが、咎(とが)められたことは一度もなく、こんな大袈裟(おおげさ)な反応は初めてだった。
「……お邪魔だったでしょうか?」
 彩月は机の上にケーキの載った皿を置くと、トレイを胸に抱え直立不動で西園寺に向かいあった。
「……まあな」
 西園寺は言葉を濁した後、何故だかにやりと片頬をあげた。
「大切な商談がふっとぶかもしれないな。そしたらお前のせいだぜ」
 西園寺はくるりと椅子を回し、揶揄(やゆ)の口ぶりでそう言った。
「……でも今の方はクライアントじゃなくて、社員ですよね……?」
「お前に何がわかるんだよ」
 西園寺はそう言って眉根を寄せた。
 言い返してもろくなことはない。
 半年間のメイド生活で、痛いほど身に染みている。
「……次からは気をつけますね。それじゃ、失礼します」
 ぺこりと頭を下げ、彩月はその場から立ち去ろうとした。
「待てよ」
 鋭い声がかけられ、片腕を掴(つか)まれた。
 持っていたトレイがカランと音をたてて床に落ち、その場で回転した。

ご意見・ご感想

編集部

西園寺さんからのストレートなラブラブ攻撃に気づかずに
セクハラ~(涙)と泣いちゃう彩月ちゃんの鈍感っぷりがキュート★
それでも一生懸命頑張る彩月ちゃん、きっと応援したくなっちゃいますヨ♪
(o^-^o) ウフッ

そして、嫌がられていることを知りながら、
彩月ちゃんへの攻撃の手を休めない西園寺さん!!
好きな女の子をいじめちゃう少年のようで、
仕事の出来る大富豪という大人なイメージとの
ギャップに萌え~です★
O(≧▽≦)O

彩月ちゃん、早く西園寺さんの気持ちに気付いてあげて~~~

2016年5月17日 4:00 PM

オススメ書籍

aikawaserika01_1

言葉だけじゃ足りない!

著者藍川せりか
イラストnira.

女王様気質のすみれは、大学生をしながら週末はレースクイーンをしているスタイル抜群の女の子。大学デビューした幼なじみ・太郎なんて、全く相手にしていないはずなのに、他の女の子といるのを見ると腹が立ってしまう。ある日クラブで太郎と喧嘩になり、そのまま勢いでラブホテルに連れ込んで自分から押し倒してしまう。「私に触って欲しかったら、自分で裸になりなさいよ」なんて、肉食系丸出しのHをしてしまって、夢中になるのは太郎? それともすみれ?そんな時に超セレブの金髪碧眼の男性が登場して、二人の間は大荒れ模様! 自分の気持ちに素直になれない女の子の、もどかしい恋の行方を描くラブストーリー。

この作品の詳細はこちら