夢中文庫

そんな君が堕ちるとき・・・

  • 作家如月一花
  • イラスト繭果あこ
  • 販売日2016/12/13
  • 販売価格300円

「そういうの、俺燃える」──アパレル店で働く瞳の元に、新しい店長としてやってきた柴田。爽やかな印象とは裏腹に、初対面で瞳を口説き、突然キスをしてくる柴田に翻弄され、動揺する瞳。その後も事あるごとに彼の強引で甘美なアピールは続き、抵抗虚しく体を蹂躙されていく──。けれど瞳は努めて平静を装い、「周囲の望む理想の自分」でい続けようと奮闘するが…それでも柴田に追いつめられていく。次第に拒むことが出来なくなった瞳は惹かれつつある気持ちを認められないまま、柴田の世話を焼いていたが、ある日柴田から「重い」と言われてしまう…。今までの自分を否定され、ヤケ酒を飲む瞳に、見知らぬ男性が近づいて――。

「そこのお姉さん」
 突然言われて振り向くと、いかにもナンパという雰囲気な男性がヘラヘラと笑っていた。
 ゆるく穿いたジーパンとテロンとしたTシャツがだらしない。
「ちょっと、お茶でも」
 そう言い終えるまでもなく、私は何事もなかったかのように無視をして勤務先のデパートを目指して歩いた。
「ね、ねえ?」
「邪魔」
 思わず言い返してしまう。
 それでも着いてくるみたいでちょっと驚いたけれど、更に足を速めて私はそいつを巻いた。
 ナンパ男のクセに顔は割と良かった。
 でも、私がそんな誘いを受けるわけがない。
 というより、そういうことが苦手だ。
 きっとパッとした見た目からナンパしても良いんじゃないか、なんて思ってしまったんだろう。
 私の格好は、ロングニットにブーツ。その上にコートを羽織っていた。
 もうクリスマスも近いのに、肌もチラリと見せて歩いている。
 その日の遊び相手に、なんて思われても仕方ないといえば仕方ない。
 でも、さっきのナンパだって本当は動揺していたし、この格好だって勤務先のブランドの服を着ているだけ。
 普通なら、ロングスカートやジーンズを穿いたりする方が気楽だ。
 勤務先のデパートに着いて社員用通用口を通り、ロッカーに向かった。
 荷物をロッカーに入れていると、仕事仲間がパラパラと集まりだす。
「おはよう」
「おはよう」
 香奈枝(かなえ)が疲れた顔をしながら隣のロッカーを開けた。
 そして、私を見るなり言う。
「瞳(ひとみ)、彼氏とクリスマスを過ごさないなんて相手が可哀そうじゃない?」
 ドクンと大きく胸が鳴る。
 香奈枝が私に言ったことは私が咄嗟(とつさ)に嘘(うそ)を付いたことだ。
 職場で恋愛の話題が持ち上がり、思わず言ってしまった。
 皆私が男に苦労しないだろうとか、何人も付き合っただろうとか、勝手に言い合っていてとても本当の事が言えそうな雰囲気じゃなかった。
 彼氏がいる、そう言うしかなかった。
 でも、彼氏がいるのにクリスマスも働くということに不信感を抱いたらしい香奈枝は、その後しつこく聞いてきていた。
「仕事なら、代わるけど?」
 香奈枝はフリーで仕事一筋。
 クリスマスに仕事を代わるくらい容易いと言いたいんだろう。
 でも、私だって仕事は好きだった。
「ううん。クリスマスは忙しいでしょ。仕事頑張らなきゃ」
「そうだけどさ」
「仕事して、ちゃんと終わらせた後に彼氏とは会うから大丈夫なの」
「そうなんだ。ウチの店の閉店10時だし。本当にいいの?」
「いいんだって」
 面倒になって私はロッカーの扉を閉めて部屋を出ようとした。
 すると他のメンバーもやってきてしまった。
「ねえ。瞳。クリスマスも仕事するんだって」
 香奈枝が全員に報告してしまい、私の嘘はまるで本当のことのように聞こえてくる。
「私代わるけど?」
 心配そうに言われるけれど、残念ながらクリスマスは毎年仕事を入れているし、誰かと過ごしたこともない。
 もっと言えば、高校の時に1週間だけ男子と付き合った程度で、いまだに男性経験もなかった。
 瞳は美人だからいいよね、と言われて女子からもそして男子からも一定の距離を置かれることが多かった。
 女子に至っては、上手く付き合わないと仲間に入れてもらえないから、こういう嘘も当たり前になっている。
 罪悪感がないわけじゃないけれど、『瞳』という存在を作るにはその嘘も必要なものとなっていた。

ご意見・ご感想

編集部

姐御肌で頼りがいがあって、恋愛経験もあって──
人は、「あの人はこんな人だ!」と
自分のイメージを相手に押し付けてしまうこともありますよね(。>﹏<。)

本作の主人公・瞳ちゃんもそんなイメージに悩まされるひとり…
周りの理想の自分」を演じることで本当の自分を出せずに辛い日々を送っていました。
そんな時、瞳ちゃんが働くお店の店長となったのが柴田さん。

初対面なのにクリスマスの予定を聞いてきたり、
なんだがチャラそうな印象を受けた瞳ちゃんでしたが、
柴田さんの猛烈なアピールはとどまることを知らずにヒートアップしていきます…!

強引に甘く迫られて、気持ちとは裏腹に反応してしまう体…
瞳ちゃんは「本当の自分」と向き合うことができるのか? ぜひご覧ください!

2016年12月13日 12:56 PM

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