夢中文庫

夕闇の王立図書館~強引王子の求愛行動~

kumanomayu03_s
  • 作家熊野まゆ
  • イラスト弓槻みあ
  • 販売日2016/06/07
  • 販売価格600円

「おまえの気持ちがどうであれ、周囲はあの状況を婚約だと認識しただろうな」――読書好きのジュリアは友人の口利きで運よく王立図書館に就職することができた。勤務初日は何事もなく終わりそうだったのに、夕闇迫る閉館間際にとんでもない客がやってきた。容姿以外はなにもかも王子様とは程遠いその男に、みだらなイタズラをされつつ強引に迫られて!? 強引王子と新人司書の異世界ラブ・ファンタジー。

プロローグ
 漆黒の夜空が白み始めるころ地上が闇に包まれるのは、この世界がもうひとつのそれと「対(つい)」となっているからだと誰かが言っていた。高名な学者だったと思うが、名前は覚えていない。哲学的に「対」などとあらわしたところで、けっきょくのところ、この世界の昼空は黒く夜空は青いということの説明にはなっていない。
 太陽が昇り始めるのは一日が終わるということ。煌々(こうこう)と輝くそれは世界を照らさない。光り輝いているのに、どうしてかその光は地上には降り注がないのだ。あいだにべつの空間が挟まっていて、その下層にこの世界があるのだというのがいまのところ有力な説だ。
 太陽が沈むころ、一日は始まる。漆黒の空には星と月しか存在していないというのに、地上は明るい。この現象は誰にも解明されていない。
 上層に位置すると思われる世界とここはじつはつながっていて、王族だけが交流を許されている。王族のなかでは自分たちの世界が「下層」だということを認めたくない者が多く、もうひとつの世界は俗に「狭間(はざま)の世界」と呼ばれている。
(よし、今日の公務はこれで終わりだ)
 グレイス国の第一王太子であるアーノルド・シュトラ・グレイスはサイン済みの書類の束を机のうえにまとめて高々と積み上げた。近侍(きんじ)や宰相(さいしよう)に、仕事をやりきったぞと誇示するためだ。
 ここのところ狭間の世界からの輸入品が特に増えているから、検分して許可を出す書類ばかりでうんざりする。
(今日は、話ができるだろうか)
 陽が昇り始めるほの暗い時間に王立図書館へ通うのがアーノルドの日課になっていた。
 目的の場所には深紅の髪の乙女がいる。あえて閉館間際に行くのは、その少女とふたりきりになりたいからだ。
 執務室をこっそりと抜け出し、ひとけが少ない外廊下を通って王城から出る。城の出口を守る衛兵はほとんどがアーノルドの味方だ。城を抜け出す王太子を咎めたりはしない。アーノルドの行き先を知っているからだ。
 王立図書館は城と同じ敷地のなかだ。なじみの衛兵に「ご苦労」と声をかけて正門をくぐり、大きなエントランスホールを抜けてそそくさとなかへ入る。
 大きな窓に面するいつもの場所に、深紅の髪色をした可憐な少女を見つけた。彼女の特等席ともいえるその場所は、アーノルドにとっても特別な場所だった。
(ちっ、あいかわらず本ばっかりだな)
 隣に腰かけても、少女は見向きもしない。本に嫉妬するのはいつものこと。
(急に話しかけて邪魔をしたら、嫌われるよな……)
 少しでもこちらに興味を示してくれれば話しかけやすいものを。アーノルドは心のなかで不満を漏らすばかりだ。
 夢中になって本を貪るその少女に、王太子は話しかけられずに何日も過ごすのだった。

ご意見・ご感想

編集部

高度な魔術を操るグレイス国、そこで堅実に生きるジュリアの可憐さに惚れ惚れ…(^-^*)(・・*)(^-^*)(・・*)ウンウン
読んでいるうち、自然と彼女を熱烈に応援したくなります、一生懸命だし真面目だし!
ジュリアの家族も親友も、皆とっても優しくて心が温かくなること間違いなし!
…でも、それだけじゃ済まないの(笑)
王立図書館で働くジュリアの元に、色んな意味で(!)手強いお客様が…えぇ⁉お、王太子様ですか…
ジュリアにイジワルで発言はSっ子満載、しかし、ジュリアへの愛はこの上なく深く広く、あなたになら安心してジュリアを任せられるわっっ!
王太子アーノルドがジュリアを官能の世界へ導いてゆく描写は圧巻です!

…ライバル、出てきますけども…これがまた…賢いんですけども…
それぞれの思惑と事情(情事?!)が交差する珠玉のラブファンタジー、
心ゆくまでじっくりご堪能下さい☆☆

2016年6月7日 6:09 PM

熊野まゆ

こんにちは、作者の熊野まゆと申します。
まずは、コメント欄をご覧になってくださっている皆様、本当にありがとうございます。
それから夢中文庫の編集者様をはじめ制作に関わってくださった皆様、ありがとうございました。心より御礼申し上げます。
さてさて、すでに編集部様からとっても素敵なコメントをいただいておりますね!
ありがたい限りです。
ぜひぜひ、お読みいただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします!!

2016年6月7日 7:22 PM

オススメ書籍

tukimoriaira01_muchu

溺愛王子のレプリカ・ドール~生まれたばかりの無垢な想い~

著者月森あいら
イラストまろ

レプリカ・ドールとして生を受けたエルミールは、人間になるという願いを胸に街に出る。行くあてのない彼女を拾ったのは、褐色の髪に蒼い瞳の青年クリストフ。ドレスに礼儀、食事にダンス。同時に甘い恋も教えられる。人間になりたいという思いは高まり、そんな中同じレプリカ・ドールだった仲間に出会う。なんと彼女は人間になっていた。人間になるには人間からの愛が必要だという。「あなたを愛してくれる人間はいないの?」互いの愛は確信しているのに、人間になれないエルミール。最後のピースを見つけたとき、彼女を待つ運命は?永遠を生きる人形が、愛する人のために取った行動とは?生まれたての心が送るピュアラブストーリー。

この作品の詳細はこちら