夢中文庫

愛され男子は肉食系~秘密に甘く縛られて~

  • 作家マイマイ
  • イラスト森原八鹿
  • 販売日2018/7/10
  • 販売価格500円

「この子、誰?」──合コンに誘われ珍しく泥酔した柚奈が目を覚ますと、同じベッドで見知らぬ男の子が寄り添って眠っていた。なぜか柚奈の部屋から出て行こうとせず、その日から強引に同じ屋根の下で暮らし始めた遥人。子犬のようにじゃれつき、悪戯好きの少年の顔でわがままなことを言う彼は、いつしか柚奈の疲れた心を癒す存在になっていく。自分自身のことを語らずいつまでも正体不明の遥人に不信感を抱きつつも、ひとりの男性として大切に思い始める柚奈。触れ合う時はその子犬のように愛くるしい表情を獰猛な獣のように変えて柚奈に迫る遥人。そしてその触れあいは過激さを増し──。

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 子供の頃は大型犬を飼うことに憧れていた。
 セントバーナード、ゴールデンレトリバー、シベリアンハスキー。
 あのふわふわとした体にくるまれて眠ることができたら、どんなに素敵だろう。
 その思いは大人になったいまでも消えず、ときおりふと夢に見ることがある。
 彼らはきっと、優しくわたしを包み込んでくれるに違いない。
 そう、ちょうどこんなふうに。
「え……?」
 腕の中にある温かな感触に、楠原(くすはら)柚奈(ゆな)はハッとして目を開けた。
 いつもの寝室、狭いシングルベッドの上。
 窓の外はまだ暗く、つけっぱなしになっていた電気スタンドの明かりが眩しい。
 いったい今は何時頃だろう。
 目覚まし時計に手を伸ばそうとした柚奈は、ふと自身の胸元に視線を向けた後、全身の血液が沸騰するような感覚に襲われた。
 綺麗な顔立ちの男の子が、柚奈の胸に頬を寄せて気持ちよさそうにすうすうと寝息を立てている。
 緩やかな螺旋を描く金髪にきめ細やかな白い肌、桃色の唇はいかにも柔らかそうで、まさに天使のような寝顔だと思う。
 だけど、そういう問題じゃない。
 柚奈は慌てて体を起こし、ぐっすりと眠り込んでいる白石(しらいし)遥人(はると)の頭を思い切り強く引っ叩いた。
「もう、今日はソファーで寝る約束でしょ! 起きて、ねえ、遥人」
「んー、やだ。ここがいい」
 遥人は顔をしかめてぐずりながら、意地でもベッドから出ないぞとばかりにますます強く抱きついてくる。
 胸が押し潰されてしまいそうな息苦しさ。
 女の子のように可愛らしい顔をしているくせに、体つきと力の強さだけは大人の男性と変わらないのだから困ってしまう。
 困るのは、彼の力の強さだけじゃない。
 首筋をくすぐる艶やかな髪、パジャマの布越しに感じる吐息、密着した体から伝わってくる高い体温。
 そのすべてが柚奈の心をかき乱し、冷静さを奪い去っていく。
 柚奈は赤くなった頬を隠すように顔を背けながら、しがみついてくる遥人の手を懸命に押しのけようとした。
「やめて、離して。遥人がここで寝るなら、わたしがソファーに行くから」
「もー、うるさいなあ。一緒に寝ればいいじゃん、まだ真夜中でしょ」
 大声で騒いじゃ近所迷惑だよ、と遥人が目を閉じたまま柚奈を諭すように呟いた。
 ああ、腹が立つ。
 いったい誰のせいで騒いでいると思っているのか。
 柚奈は遥人に腰を抱かれたまま、腕の中でもがきながら彼の肩や頭を押したり叩いたりした。
「いい加減にして、一緒になんて寝ないっていつも言ってるでしょう!」
「痛い、痛いってば」
「遥人が勝手なことばっかりするから悪いんじゃない! 約束が守れないなら」
「守れないなら、何?」
 遥人が眠そうな目をゆっくりと開いていく。
 澄んだ薄茶色の大きな瞳が、真っすぐに柚奈を見上げてくる。
 どきん、と心臓が大きく鼓動を打った。
 もう何週間も一緒に暮らしているのに、こうして見つめられるたびに頭の中が真っ白になってしまう。
 柚奈は彼のことを何も知らない。
 ある朝、目が覚めると裸の遥人が隣に寝ていた。
 思い出したくもない最低な記憶。
 外見から想像するに、おそらく二十八歳の自分よりもかなり年下、おそらく大学生か高校生くらいではないかと思う。
 名前も偽名かもしれず、これまで住んでいた場所も、どうして柚奈の部屋に居続けているのかも、正確なことは何もわからず怪しいことこの上ない。
 それでも遥人を追い出すことができないのは、人工物のように完璧に整った遥人の容姿と、子犬のようにじゃれついてくる彼の愛らしさが柚奈を惹きつけて離さないからだった。
 こんなにも綺麗な男の子が現実に存在し、呼吸をして生きていることが信じられない。
 傍にいれば触れたくなる。
 けれども、安易な行動に出て彼との関係を汚したくない。
 できることなら仲良しの姉弟や友人同士のように、このままふたりで楽しく暮らしていきたいと思っている。
 そのためには、年上の自分がきちんと制御しなくてはいけない。
 変な気を起こさないように、健全な関係を築かなくちゃ。
 柚奈は自分にそう言い聞かせながら目を伏せた。

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