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お嬢様の仰せのままに!

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  • 作家三木若菜
  • イラスト中田恵
  • 販売日2016/09/21
  • 販売価格300円

「わたくし、お婿様は自分で探しますわ!」爆弾発言で祖父を凍り付かせたのは、大財閥・四天王寺家の一人娘・彩華(いろは)。彼女は『時代ズレ』した祖父に育てられた箱入りお嬢様。短大卒業後は『家事手伝い』『花嫁修業』をして暮らしている。二十歳で許嫁・神谷健剛が決まっていたが、恋愛小説を読んで影響を受け「今は自由恋愛で結婚する時代よ!」と息巻く。やけに協力的な健剛を巻き込んで、彩華の『珍・オフィスラブライフ』が始まるが、『ラブ』も『仕事』も思い通りにはいかず、仕事でのミスやトラブルに見舞われてしまい……!?彩華は無事にお婿様を見つけることができるのか!?そして許嫁の恋人探しを手伝う健剛の意外な心意とは?

○彩華の婚約者お披露目○
「おじいさま。わたくし、お婿様は自分で探しますわ」
 真っ青な空に、ぎらぎらと照り付ける太陽。いかにも『夏です』といった風情のある日の午後。
 都内の高級住宅街……から少しそれた場所にある日本有数の大財閥・四天王寺(してんのうじ)本家大広間の空気は、ここは業務用冷蔵庫の中であったかと錯覚するほどに冷え冷えとしていた。
 壁にはシカの剥製がいくつも掛けられ、床にはヒョウやシロクマの敷物が睨(にら)みをきかせ、源氏物語の一場面を描いた屏風(びようぶ)の前には大きな黒い革張りのソファーが鎮座している。
 そのソファーの前では、白髪痩躯(そうく)の老人が硬直していた。愛用のソファーに座ろうとしたのだが、驚きのあまりに葉巻を持って腰を浮かせた格好のまま、硬直してしまったのだ。
「い、彩華(いろは)や、彩華!」
「はい」
「じいちゃんは、耳が遠くなってしまったようだ。もう一度、ゆっくりはっきり、言っておくれ」
 老人の向かい側に座る若い女性は、ゆっくりと頷(うなず)いた。
 夜の闇を溶かし込んだかのような美しい黒髪に真新しい雪のように白い肌、唇は紅薔薇の色。星屑(ほしくず)がちりばめられた瞳は潤んでいる。
 この、類まれなる美しさ、三国一の美女と言っても問題ないほどに可憐(かれん)で清楚(せいそ)で美しい女性は、この老人の孫娘である。四天王寺彩華、二十歳。
 財界人が恐れ戦く祖父・寅之助(とらのすけ)をまっすぐ見つめた後、鈴の鳴るような可愛らしい声で、
「ですから、結婚相手は自分で探します、と申し上げました」
 と、はっきり言った。
 畳がずらっと……三十枚以上はあろうかという広い部屋に、コチコチコチコチ、と時計の秒針の音だけが響いた。この部屋には老人と彩華の他に、もっと多くの男たちが控えているというのに、衣擦れの音一つ、咳払(せきばら)い一つ聞こえない。緊迫した空気だ。否、誰かのお腹がキュルル……と鳴り、
「失敬」
 と野太い声がした。そして、それに呼応するかのように誰かの腸が悲鳴を上げた。短く甲高い音の後に僅かな腐臭が漂い、一人の男がたちまち部屋から叩(たた)きだされた。
「お嬢様の大事な場で何たる失態! けしからん!」
 そんな騒動にもまったく動じない彩華と寅之助である。二人の周囲は、まったくの別次元と言って良い。彩華は白魚のような指でティーカップを持ち上げて優雅に紅茶を飲み、寅之助は葉巻を燻(くゆ)らせている。まるで映画のワンシーンのようですらある。
 ボーン……と、絶妙のタイミングで、大時計が午後1時を知らせた。控えていた男たちの肩がびくっと一斉に震えた。
「もう16時だわ。お出かけの用意をしなくちゃ!」
 風の妖精・シルフが舞ったかと思われるほどの軽やかさで、彩華はソファーから立ち上がった。

ご意見・ご感想

編集部

時は21世紀!
「わたくし、お婿様は自分で探しますわ!」

そう言い放ち、理想のオフィス・ラブを目指して社会の荒波に踏み出した、四天王寺家の一人娘・彩華ちゃん!
超が付くほどの箱入りお嬢様ですが、誰にも劣らない一生懸命さで、仕事をこなしていきます……!
どんなときにもベストを尽くす彩華ちゃんの前向きな姿勢は、普通の女の子そのもの。
そんなひたむきな彼女を見守るのは、なんとおじいさまが決めた許嫁の健剛さん!?

なぜ~Σ(・ω・ノ)ノ!
ミステリーな健剛さんの意外な本心に、キュンキュンしてしまいますよ~( *´艸`)

果たして、彩華ちゃんが最後に選ぶのは誰なのか……

常識にとらわれない、頑張る普通……超・お嬢様系のヒロインのハプニング・ラブストーリー☆
みなさまぜひぜひお楽しみくださいませ(´ω`*)

2016年9月21日 11:59 AM

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