夢中文庫

添い寝男子の計画に見事にハマってしまいました

  • 作家三村沙菜
  • イラスト松本美奈子
  • 販売日2017/10/31
  • 販売価格300円

『あなたは癒やしを求めていませんか?』キャッチコピーにつられてふらふらとヒーリングショップに入った理名は、添い寝男子による快眠提供のポスターに目を奪われる。その傍にはイケメンが座っていて、この人が? と驚いていると、マコトと名乗るその彼はショップの高級ベッドでいきなり添い寝を実演!? まさかそんなこと! と照れる理名だが、これがまた心地よくて、つい熟睡。またおいでよ、と電話番号を教えてくれるが、そんなつもりは……。しかし思いとは裏腹に、すっかりハマってしまって頻々と通うことに。すっかりマコトと親しくなったある日、マコトから少し間、理名の部屋を間借りさせてほしい懇願されてしまって……?

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序章
『あなたは癒やしを求めていませんか?』
 理名(りな)は誘い文句に興味を惹かれ『癒やしグッズ専門店 ヒーリングショップ ドルフィン』と書かれた店の扉を開いた。
 理名は妻帯者の同僚に勤務交代を頼まれて、昨日出勤をした。今日はその代休だ。休日を利用して駅前のデパートに店をかまえる大手化粧品店へ買い物に来ている。
 週末ともなれば多くの人たちで賑わいを見せるが、今日は平日のせいか、店内は閑散としていた。
 手持ち無沙汰に立っている女性店員が、理名に声をかけてきた。
「こちらのリップクリームは新色で限定商品になっております。今CMで、人気の女優の萌花(もえか)さんが使用している物と同色です。色白のお客様にはよく似合うと思います。試してみてはいかがですか?」
 営業スマイルで言われ、カウンターの椅子に座る。リップクリームだけを試すつもりでいたのに、営業トークに流されるまま、フルメイクをほどこされてしまう。
「よくお似合いです。今人気が高い商品なんですよ」
 店員が微笑んでいた。
 目の前の鏡で見ると、いつもより三割増しくらいは綺麗に思えてしまう。
 一年前から使用しているスキンクリームだけを買いに来たはずなのに、断れない性分が災いして、店員に勧められるまま、限定物の保湿効果のあるリップクリームやアイシャドウ、マッサージクリームなど予定外のものまで買ってしまった。
 店を出ると後悔で小さくため息をついた。
 二十八歳の理名の肌はとうに曲がり角を過ぎていた。二十代前半のときに比べ、肌の砂漠化現象が進んでいる。メンテナンスを怠ると、干からびたようにカサカサに荒れてしまう。今はその状態だ。
 肌荒れの最大の原因は、残業が常態化している日常に問題があった。不規則な生活が招いた結果である。
 しかしこればかりは容易に解決できる問題ではなく、もはや諦めの境地に達していた。
──そうだ、今日もあれを買って帰ろう。
 デパートから十分ほど歩いたところにある、パン屋のクロワッサンが最近のお気に入りだ。その店に行くには脇道を抜けるほうが早いので、今日もいつものように路地に向かう。
 細い道へと曲がると、車の騒音や人のざわつきが消え、静けさに包まれていた。
 見慣れた店舗が建ち並ぶ中、ある一軒の店に目がとまる。
──一ヶ月前に通ったときは空き店舗だった気がするんだけど。
 改装されたばかりの建物は木目を生かしたモダンな造りをしている。店内に灯りがついていた。
 店の入り口には『癒やしグッズ専門店 ヒーリングショップ ドルフィン』と書かれていた。
 自分に今必要な癒やしという言葉に惹かれ、店の扉を開けた。
 一歩足を踏み入れると、爽やかなアロマの芳香に包まれていた。店内には触り心地がよさそうな女性が好むモフモフのクマやウサギのぬいぐるみ、アロマグッズ、インテリアライトにバスグッズ、フィーリング音楽のCDやDVD、観葉植物や茶葉などがセンスよく並べられている。
 白を基調とした内装で、鳥のさえずりや水のせせらぎの音が流れ、リラックスできる空間が演出されていた。
 ぐるりと店内を回ってレジカウンターの前に来ると、白いシャツにグレーのロングカーディガン、黒いパンツスタイルというラフな格好をした男性が立っていた。
 清潔感漂う黒髪の男性は、二重まぶたの切れ長の瞳が印象的な容姿をしている。
──私より少し年上なのかな。モデルさんみたい……。
 理名の身長は一六〇センチだけれど、それでも見上げなければいけないくらいだ。
──一八〇センチ以上はあるだろうな。
 長身のイケメン男性につい見とれてしまう。
 男性がもたれかかっている壁のポスターが気になり視線を移した。
『添い寝男子があなたの疲れた心と身体を癒やしてくれます。お試し期間中にお気にめさなければ返品可能です』
 と、書かれたポスターが貼られている。
──まさか、この人が添い寝男子……そんなわけがないか。
 男性とポスターを交互に見ていると、目が合ってしまった。すると男性は目を細めながらニコリと微笑んだ。笑顔も爽やかな男性にドキドキしてしまい、とっさに目をそらせる。
「いらっしゃい。添い寝男子のことが気になるの?」
 落ちついた低い声色の男性は、さっき理名が見ていたポスターを指さして言った。
「いえ、そんなわけでは……」
 と言いつつ、内心は好奇心がくすぐられていた。
 すると男性がくすりと笑う。
「一度試してみない?」

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