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こいなり。~甘くてピュアな魅惑のやきもち狐様~

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  • 作家水戸けい
  • イラスト炎かりよ
  • 販売日2016/03/30
  • 販売価格500円

「さみしくなくなりますように」本多早苗は、たまたま見つけた稲荷の祠に手を合わせた。ひとり暮らしにあこがれてはじめてみたはいいけれど、両親、兄と妹、そして飼い犬と、にぎやかな家で育った早苗には、とてもさみしいものだった。そうして祈って目覚めた翌日。早苗のベッドで、身知らぬ男が眠っていた。しかもその男の頭には、尖った獣の耳がついていて――。「昨夜、稲荷の祠に手を合わせただろう。俺は、その稲荷を担当している一族の、狐だ」とまどう早苗に、彼は得意そうに言う。「俺は、彼氏とペットの両方を、兼ね備えているからな。役に立つし、癒されるぜ」稲荷の狐との、不思議で身近な下町ファンタジー・ロマンス。


寝返りを打つと、ふわふわとしたものが頬に触れた。無意識に手を伸ばして、指先でまさぐる。
なつかしい手触り。
ああ。甘えん坊のダックスフント、チェイスがベッドにもぐりこんできたんだな。
本多早苗(ほんださなえ)は半分眠ったまま、チェイスをひきよせようとして、違和感に気づいた。
毛足が、長い。
チェイスは短毛のダックスフントだ。毛が指にからむはずはない。それに、なんだかとても大きい。
早苗は目を開けた。目の前に、鳶(とび)色の毛がある。どうやらそれに触れていたらしい。とがった耳が、ピクリと動いた。とても大きな耳。どう見ても、チェイスのものじゃない。というか、チェイスは実家にいるのだから、ここにいるはずはないのだ。
(え……っと)
目覚めたばかりの思考回路を稼働させて、昨夜のことを思い出す。マンションに帰って、晩ご飯を食べて、ちょっとだけテレビを観た後、シャワーを浴びて、ベッドに入った。
マンションはひとり暮らし。ペットも飼っていない。だから、こんなに大きな犬が、部屋にいるはずはない。
(というか……。これ、犬じゃない!)
飛び起きた早苗は、布団をめくった。そこには、どう見ても犬ではないものがいた。すやすやと無防備に眠っているのは、間違いなく成人男性だ。年のころは早苗とおなじか、ふたつかみっつ上くらい。細いアゴ。整った輪郭を、やわらかそうなクセのある鳶色の髪が、包んでいる。通った鼻筋に薄めの唇。目は、大きいほうだろうか。閉じているので、よくわからない。
(なんで……)
呆然と、早苗はその男を見下ろした。こんな人、知らない。いつの間に、部屋に入ってきたのだろう。変質者だろうか。いや、きっとそうだ。だって、この人の頭には犬の耳がついており、尻には触りごこちのよさそうな、ふわふわのしっぽがついているのだから。
早苗はそっとベッドから降りると、すぐそこのキッチンに入った。6畳の洋室と、3畳のキッチンという間取りなので、ベッドからキッチンまでは、数歩でいける。
フライパンとフライ返しを手にして、よしとうなずき振り返った早苗の手から、フライパンが奪われた。
「っ……!」
「朝ご飯なら、俺が作るよ。ソッチは身支度でも、整えといて。女の子は、出かけるまえの準備に、時間かかるだろ?」
ニッコリとした男に、早苗は言葉を返せなかった。おどろきすぎて、どう反応をすればいいのかわからない。混乱している脳みそは、なんの指示も出してはくれなかった。
「冷蔵庫のもの、勝手に使っていいよな?」
「え、ええ」
なんとか返事をした早苗は、そろそろと男から離れた。男は早苗の警戒に気づかぬふうで、機嫌よく朝食作りを開始する。
(なんなの?)
早苗はとりあえず、襲われなかったことに安堵し、部屋に戻った。寝巻き姿だと、あまりにも無防備だ。男が料理をしている間に、手早く着替えをすませてしまおう。
キッチンと部屋の間にある、いつも開けっぱなしにしている扉を閉めて、大急ぎで着替えを済ませた。そっと扉を開けて様子をうかがう。男は慣れた手つきで、フライパンを洗っていた。朝食は完成したのだろうか。
早苗はそっと、キッチンに入った。

ご意見・ご感想

編集部

ご覧下さいーーー!!
なんてツヤツヤな鳶色の髪、涼やかな眼差し、そしてふさふさのお耳…ん?けもみみーー!?
はい、イケメンな彼は狐様です(むふふ)。

素直で寂しがり屋の早苗ちゃん、あまーい彼に惹かれていくその気持ちは…
願い事をしたから?それともホントの気持ちなの!?

早苗ちゃんの葛藤、恋する全ての女の子に通じます、切ないな…
優しくってキュンっな物語、お楽しみ下さいっ♪(・ω<)☆

2016年3月30日 11:34 AM

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