夢中文庫

シューカツ婚~永久就職、内定です!~

  • 作家水戸けい
  • イラストまろ
  • 販売日2016/06/27
  • 販売価格500円

就職難って言葉を完全に甘く見ていた……。就職活動に疲れていた椎名桃子のお尻は、面接会場の最寄り駅に到着しても、座席から離れなかった。そのまま終点まで乗ってしまった桃子。せっかくだから、知らない町を探索しようと歩き出す。すると、どこからかいい匂いが! たどり着いたカフェのおいしい料理に気が緩み、うっかり眠ってしまった桃子。目覚めるとイケメン店主・大島栄一の布団に寝かされていた。ちょっとしたロマンスを期待した桃子に、栄一が店の手伝いを依頼する。彼も別れがたく思ってくれたと喜んだ桃子は後日、大胆発言をしてしまう。「就職活動は栄一さんにしたいなって、そう思っているんです」――はたして栄一の返答は?!

1.就職難の海で漂流。
 電車の中に、ぎっしりとスーツ姿の男女が詰まっている。朝だというのに、くたびれた顔が多い気がするのは、自分の気持ちが疲れているからかもしれない。
 そっと息を吐いた椎名桃子(しいなももこ)の肩までの黒髪が、さらりと流れてうつうつとした顔を隠す。桃子は鞄を胸に抱えて、深く息を吸い込むと、もう一度ため息をついた。
 鞄の中には、いまから面接を受ける会社の概要とエントリーシートが入っている。
(これで、何社目だっけ)
 いちいち覚えている人もいるらしいが、桃子は途中で数えることをやめにした。
 就職難という言葉を、理解しているつもりだった。それでもどこか引っかかる会社はあるだろうと思っていた。成績は悪くないし、教師受けもそこそこいい。それに就職難といいながら、人手不足という話も聞くから、難しいのは一流企業だけだろうとも考えていた。
(甘かった……)
 桃子は電車の中を目の動きだけで見回した。リクルートスーツに身を包んだ、自分とおなじくらいの年齢の男女がチラホラ見える。
 あの人たちも、おなじかもしれない。
 ひとりじゃないと思うと、すこしだけ気が紛れた。
 背筋を伸ばし、向かいの窓の外に目を向ける。前に座っている人の頭越しに流れる景色は、就職活動をはじめてからの時間の流れのようだ。自分はこうして動いていないのに、時間だけがどんどん流れて目に映る景色が変わっていく。
(このまま、ずっと乗っていたらどこにいくんだろう)
 就職活動という電車から、降りられなかったら──?
 そんなことを考えていたら、目的の駅に到着した。電車の中から次々に人が消える。それをながめる桃子のお尻は、根が生えたように座席にくっついたまま動かなかった。
(降りなきゃ)
 頭ではそう思うのに、体が立ち上がるのを拒絶していた。
 アナウンスがあって、ドアが閉まる。
 ぐっと体が引っ張られるような揺れを感じて、ホームの景色が流れ去った。
(ああ)
 次の駅で降りて、反対側の電車に乗ればまだ間に合う。
 そう思っても、次の駅でも桃子のお尻は座席から離れなかった。
 次の駅、そのまた次の駅と電車は進み、車内の顔ぶれがすべて入れ替わっても、桃子は座り続けていた。
(──なんか、疲れたなぁ)
 見本どおりに心にもないことを面接で答えるのも、背筋をピンと伸ばして笑顔を浮かべ、やる気があるように見せ続けるのもウンザリだ。
「はぁ」
 音に出して気を抜くと、体の芯から力が抜けた。
 胸に抱えた鞄によりかかり目を閉じた桃子は、連日の緊張や寝不足に包まれて眠りに落ちた。
 肩を軽く揺さぶられて顔を上げれば、駅員さんが眉を下げて笑っていた。
「終点ですよ」
「えっ。あ、はい!」
 勢いよく立ち上がり、電車を降りる。
「──えっと」
(ここ、どこだろう)

ご意見・ご感想

編集部

今ドキの女子大生の桃子ちゃんは
まわりに流されるままに就職活動の真っ最中。
でもなんとなくでの就活は上手くいくわけがなく……
面接の続く日々に疲れきってしまった桃子ちゃん、
ある日、面接をすっぽかしてしまいます~~~
w(゚o゚)w

そしてたどり着いた終着駅をふらふらしていたら
素敵な出会いが……!
まるで童話のようです(>▽<)

目的を持って喫茶店を経営している栄一君の
キラッキラな魅力にグイグイ惹かれる桃子ちゃん。
栄一君の勧めで始めた桃子ちゃんの心に変化が。

「私のやりたいこと」って……?

桃子ちゃんの恋と就活の行方はいかに???

流されやすい体質かと思いきや、意外と大胆な
桃子ちゃんの行動も目が離せません~~★

2016年6月27日 5:40 PM

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