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午前2時の眠り姫 ~秘密の残業は社長とベッドで~

  • 作家三津留ゆう
  • イラスト炎かりよ
  • 販売日2015/10/20
  • 販売価格300円

私、宮村友香は、寝具メーカーに勤めるOL。おひるね大好き、おふとん命、いつでもどこでも目を閉じれば安眠できるという特技を持っているけれど、元彼に「寝顔がだらしない」と振られたことが原因で、唯一、男の人とふたりっきりの状況では眠れない。そんな私に、ある日、突然の異動が申し渡される。異動先は、業界最大手の寝具メーカーである我が社の社長付き特別秘書課──私が課せられた職務は、自社製品の使い心地を自分の体で試すこと。普通の寝具だけでなく、リラックスと安眠効果を高めるために開発したというラブグッズの使い心地までも社長自らの手で試されて……!? 俺様社長に甘く攻められる、溺愛オフィスラブ。

 一日のうちで、いちばん幸せな時間は?
 誰かにそう訊かれたならば、私の答えは決まっている。
 すべすべのシーツがかけられたベッドに、思い切りダイブする瞬間だ。
 仕事から帰ってシャワーを浴びて、今日もがんばったなあってベッドにもぐりこもうとしているとき。よく晴れた日曜日、ふんわり干したおふとんの上で、のんびりうたたねをはじめるとき──やわらかなシーツに体を包まれ、私は至福のときを過ごす。
 今だって、私は幸せの絶頂にいる。
 大きな窓から、午後の陽がいっぱいに射し込んでいる。社食では人気のAランチ(デザートつき)が食べられたので、おなかもいっぱい。羽布団はもちろん、最高級のマザーグースダウンでつくられた、ふかふかの──、
「……ちょっと、友香(ともか)?」
 舞(まい)ちゃんの怒声が響き、私は低反発マットレスから跳ね起きた。
「──っ、はい!」
 マットレスの横には、制服を着た舞ちゃんが腕を組んで立っている。なにやら怒っているようだ。
「あのねえ、友香」
「な、なんでしょう……?」
 思わず気をつけの姿勢になった私を、舞ちゃんは仁王立ちで追い詰める。
「いくらあんたが、おひるね大好き、どこでも寝られるからって……今、自分がどこにいるか、わかんないわけじゃないんでしょ?」
「え──? えーっと……」
 私はぐるりと、あたりに首をめぐらせた。そこかしこに、マットレスや掛け布団、枕やタオルケットのサンプルが広げられている。さっきまで私が寝そべっていたマットレスも、もちろんこのフロアの備品だ。
「し、商品開発部の、フロアですが……」
「そうね、よくわかってるじゃない。そのとおり、ここは商品開発部のフロアよ。そして同時に……」
 舞ちゃんはハイヒールのかかとを鳴らしてこちらへ踏み込み、私の鼻先にぴっと人差し指の先を向けた。
「私とあんたの、職場なのよ!?」
「ご、ごめんなさい……!」
 そう──私、宮村(みやむら)友香と舞ちゃんは、この商品開発部の庶務を分担している、同期社員だ。
 ふたりが、ここ、寝具メーカーの佐野産業に入社したのは、さかのぼること二年前──私が大学を卒業してすぐだから、二十二歳のときのことだ。
 私には、電車の中だろうが職場だろうが、目を閉じれば安眠できるという特技がある。たとえ枕が変わっても、雑魚寝であっても気にならない。
 そのくらい、おひるねと睡眠と、ふかふかのおふとんを愛しているのだ。
 だから当然、就職活動をするときも、眠りに関する会社を選んだ。ホテルや旅館も捨てがたいけど、やっぱりいちばんの本命は、寝具メーカー最大手のこの会社だった。

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