夢中文庫

告白は雨に濡れて

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  • 作家宮永レン
  • イラスト九重千花
  • 販売日2015/09/30
  • 販売価格300円

誰にでも不愛想、必要最低限の会話しかしない仕事人間。そんな先輩、羽根川悠人に密かに想いを寄せるみのり。さりげないアプローチを続けるものの、収穫はおまけについていた猫のストラップのみ。かつての失恋を乗り越え、一歩前に進みたいと考えたみのりは、彼と親密になるべくドライブに誘う。会話の流れで行き先は心霊スポットの廃墟、幽霊を信じない彼は同期の茂木の横槍もあり、幽霊がいなければ二度と話し掛けるなという条件で渋々ドライブを承諾する。ドライブデート当日、雨に降られ、幽霊の写真も撮れず、大切にしていたストラップさえなくしてしまい、悲嘆に暮れるみのり。だが、土砂降りの雨の中、みのりは思い掛けず羽根川の本音に触れて――?

 温(ぬる)くなったコーヒーカップを両手で包み込みながら、私は煌めく街の明かりに向かって窓越しに小さなため息をついた。目の前に座っている彼はコートも脱がずに二本目の煙草に火を点けるところだった。仕事から真っ直ぐに待ち合わせ場所に来てくれたのだろう、コートの下から見えるスーツ姿に胸がときめく。年明けは忙しくなるかもしれないと彼に言われてはいたが、一か月も会えないとは思ってもみなかった。今日の夕方会えないかと突然メールが来た時は大学の講義中にも関わらず、椅子から立ち上がりそうになってしまったほどだ。
「まだ吸うの? 私もうお腹空いちゃったよ」
 服の上からお腹を摩(さす)って苦笑いをしてみせると、彼は大きな紫煙(しえん)を吐き出して吸いかけの煙草を静かに灰皿に置いた。カフェに入って来た時に見せてくれた笑顔はすでになく、少し疲れているようにも見えた。
「みのり。俺、来月転勤が決まったんだ。だから別れてほしい」
 予想もしていなかった言葉にぽかんと口を半開きにした私の顔はさぞかし間抜けだったに違いない。
「え?」
 とりあえず何か返事をしなくてはと探して出た言葉がたった一文字だけだった。
「九州。簡単に会える距離じゃないし、みのりはまだ学生だし、俺の事はもう忘れて」
 淡々とした口調からはいつもの優しさが微塵も感じられない。
「そんな急に言われても……。わ、私なら遠距離になっても良いから。卒業したらついて行くから」
 テーブルについた掌の振動でカップの中の琥珀色の液体がゆらゆらと波紋を描いた。心の中は不安と動揺でそれ以上に大きく揺れている。
「遠距離とか絶対無理だよ。俺、好きな人にはいつも傍にいて貰わないと困るタイプだから」
 それならよく一か月もメールも電話もよこさずにいられたものだと抗議しようとした私は、煙草に手を伸ばした彼の左手の薬指に見慣れない指輪があることに気付いた。これまで重ねてきたデートの中では一度も目にしたことはない。しかも、彼の仕事帰りに会うのはこれが初めてだった。
「そういうこと……?」
 テーブルの上でゆっくり握り拳を作った私の目線の先の物に気付いた彼がハッとしたように煙草を取り落とす。灰皿の中で音もなく転がったそれからは紫煙が燻(くすぶ)り続けていた。
「みのりは可愛いし、すぐに新しい彼氏ができるよ」
 固く握った私の両手を怒りと捉えたのか彼は面倒事はごめんだとでも言いたげにそそくさと席を立った。
「じゃあ」
 取り繕った愛想笑いに私はただ黙って見上げるしかなかった。どんな顔をしていたのか自分ではわからない。私の横を通り過ぎて呆気なく去って行った彼につられるように立ち上った煙草の紫煙が両目に染みて、私の視界を滲ませた。
 歪んだ景色が元に戻る頃、目に映ったピンク色の花柄のカーテンを見て自分の部屋だと認識できた。夜中に暑さで蹴とばした毛布がベッドの下に落ちていて、タイマーをかけ忘れた冷房が部屋中を冷蔵庫のように冷やしていた。
「さむ……」
 毛布と共に床に落ちていたエアコンのリモコンに手を伸ばして電源を切るが、しばらくその体勢から動けなかった。真夏なのに真冬の夢を見たのはこのせいだったのかとぼんやり考えながら目尻の雫をぐいと手の甲で拭う。
「冬の夢なら、サンタクロースと旅をする夢とか、楽しい夢にしてよね……」
 枕元に置いてある携帯電話の時刻を確認すると、普段起床する時間より一時間も早い。しかし妙に冴えてしまった頭では再び眠りにつくのは難しかった。何よりまた夢で昔の恋人に会うのが辛い。
「もう忘れた筈なのに。ほんと、最悪」
 片手でくしゃくしゃと頭を掻くと、私はベッドから起き上がって会社に出勤する支度を始めた。いつもより早過ぎるくらいだが、仕事でもして気を紛らわせたかった。
「そう、男なんて必要ない。バリバリ働いて早く出世して、男達を見下してやるんだから」
 大学生の頃、失恋してからそう心に誓った。二度と恋なんかしない。男なんか信用しない。去っていく彼の後ろ姿を黙って見送る事しかできなかった過去の自分とは決別したのだ。

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