夢中文庫

恋の雫に結ばれて

  • 作家深雪まゆ
  • イラスト繭果あこ
  • 販売日2016/09/21
  • 販売価格400円

アクセサリーショップ雫泉屋を営む鈴音はある日、雨宿りで入った東屋の下でひとりの男性と出会う。羽多野と名乗るその男性は、毎朝店の前で見かけ密かに恋心を抱いていた男性だった! 弾みで水没させた携帯のお詫びに濡れた服を乾かし、アイロンをかける鈴音だったが、緊張のあまり指を火傷してしまう。その指に彼の唇が触れる……「指にキスして、ごめん」彼の大人な魅力に惹きつけられて、告白をする前に体を繋いでしまう鈴音。友人以上恋人未満の名前のない関係に不安を感じていたそんな時、常連客の年下男子から告白を受ける。恋愛に不慣れな鈴音は本当の気持ちを伝えることができるのか──雨が結ぶラブストーリーの結末は?

『恋の雫に結ばれて』
 肩に荷物の持ち手が食い込む。
 沢城鈴音(さわしろすずね)は何度も肩を上下に揺すり、落ちないように持ち直す。それでもしばらくしたら荷物の重みでずり落ちてくる。
(ああ……郵送にすればよかったかな)
 日本人の平均よりも小さな身長で、女性にしては肉付きのよくない華奢(きやしや)な鈴音は、両肩の荷物の重みに辟易(へきえき)としていた。それでもこうして自分の手で持って帰って来なければいけなかった。
 都内の下町にある古民家を改造して、雫泉屋(だいや)をオープンさせたのはほんの二年前、鈴音が二十三歳のときだ。
 ハンドメイドのアクセサリー作りが趣味だった鈴音は、その技術を生かして小さなショップを開くことにした。祖母が住んでいた古民家の一部を改装し、レトロ感を重視した物静かな雰囲気のお店に仕上げた。木の温もりのある店内は、ちょっとしたカフェとしても使えそうな感じだ。自分好みに仕上がってとても満足している。
 しかしいくら店主が気に入っていても、小さなショップに足を止めてくれる人はそうそういない。今はネットショップや大きなフェスに出展し、声がかかるのを待つ日々だ。
 今日は日本で最大ともいえるハンドメイドジャパンの会場から帰る途中だった。両肩には大きなバッグを提げ、背中にもリュックを背負っていた。鞄(かばん)の中身は、会場で目に留めてもらえなかったアクセサリーたち。これは店内に並べるか、ネットショップ用に写真を撮って掲載することになっている。
(重い……)
 鈴音は蒸し暑さの残る空気の中を、足取り重く気怠げに歩いている。
 清澄白河(きよすみしらかわ)の駅を出てしばらく歩き、目の前には新緑の眩(まぶ)しい公園が姿を現した。
(近道しようかな)
 この公園を突っ切るなら、こんなに荷物を持って入るのは得策ではない。舗装されていない道路は、この間の集中豪雨でぬかるんでいるに違いないからだ。万が一でも転んだり、荷物を落としてしまえば大変なことになる。
 しかし今日は例外だった。自信作をフェスに持ち込んだ鈴音だったが、そこそこの売れ行きはあったものの、名刺の一つももらえなかったのだ。だから早く帰りたいという気持ちが先走った。
「自信あったのにな」
 思わず愚痴もこぼれるというものだ。
 そんな鈴音の気持ちを察したのか、鈍色の空が雨の匂いを運んできて、ゴロゴロと共鳴するように唸(うな)り始めた。水の匂いを微かに感じる大気の湿度。ここで降られたら終わりだ。
 自宅はこの大きな公園を通り抜けてすぐの場所にある。心も体も疲労していた鈴音は、早く帰りたい一心でこの近道を選んだ。
 夏の気配ももう終わりかと思っていたが、涼しい日が二、三日続いたかと思うと、今日のように夏を思い出させる日があった。九月に入ってもそれは変わらず、秋が恋しくてたまらない。
 額の汗を拭い立ち止まった鈴音は、頬に当たる水滴に気付いて顔を上げる。
「えっ……雨?」
 木々はまだ青々と葉を広げていたが、その重なり合う隙間を縫って雨の雫が落ちてきた。
 ポツポツと控えめだったそれが、次第に大粒になっていく。小さな葉のアンブレラが小刻みに揺れ始め、パタパタと葉に当たる雨音が聞こえ始める。

ご意見・ご感想

編集部

雨宿りのために逃げ込んだ東屋で出会った男性は──

ハンドメイドのアクセサリーショップを営む鈴音ちゃん。
雨の日に出会った素敵な男性、羽多野さんの携帯を水没させてしまった
お詫びにお店に招いて服を乾かすことに!
そこでふたりは大・大・大接近!
すべては羽多野さんの醸し出す色気のせいでございます((ノд`*)っ))

そんな中可愛らしい鈴音ちゃんに近づく年下男子の影…
ふたりの男性からアピールされるなんて、う、うらやましい…!

雨の雫のようにきらきらしっとりと紡がれるラブストーリー。
ぜひご堪能下さい!

2016年9月21日 11:17 AM

深雪まゆ

こんにちは! 深雪まゆです。
夢中文庫様より2作目の新作を配信していただきました!

今回、「恋の雫に結ばれて」のテーマはずばり「雨」です。
まさに配信時期の今ごろを意識して秋雨の恋のお話となっています。

雨の中で出会って恋が始まり、急速に実っていくまでのお話です。
恋をすることに臆病だったり、好きと言うタイミングが分からなかったり。
学生時代の勢いがある恋愛とは違う、大人の恋のお話です。

そして今回もPVを公開させていただいています。
よろしかったらこちらも合わせてご覧いただけるとうれしいです^^

https://youtu.be/-eujvrhF4HU

では、よろしくお願いします!

2016年9月21日 1:52 PM

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