夢中文庫

監禁狂恋 ~君を誰にも渡さない~

  • 作家深志美由紀
  • イラスト夜桜左京
  • 販売日2012/12/21
  • 販売価格300円

“―入江貴巳。私の幼馴染で、たぶん、初恋の人。そう、いまも夢に出てくるあの出来事―
両親の会社の倒産で住まいを追われた美音は、幼馴染で爆発的な人気のアーティスト、貴巳の豪華マンションに転がり込むことになった。子供の頃彼から送られた段ボール一杯のラブレター、それに応えなかったから起こったある秘密…過去の想いが、再び現実のものとなって彼女を甘く惑わせる!狂おしく自分を想う貴巳に監禁され、犯される美音は―。”

「きゃあっ」

音を立てて倒れる椅子と机。

リノリウムの床へ散らばる教科書。

―舞い落ちる、真っ白な封筒。

「黙れ―」

大きな手のひらで口を塞がれて、私の喉はヒッと引きった。

「声を、出すな」

低く囁く、苦しそうにかすれた声。

―これは『男』の声だ。

ほんの少し前までは私と大して変わらない、女の子みたいなソプラノをしていたはずなのに。彼の声はいつのまにこんな無骨で深い、『男』のそれになってしまったのか。

彼は私の身体へぐっと体重を伸し掛けて身動きを封じ、手首をつかんで床へ押し付けた。床に落ちたシャーペンの先が腕を刺す、鋭い痛み。

とろりと甘い金色の夕陽に満たされた、放課後の教室。遠くに部活動の声が聞こえるだけで校内に人気はなく、物々しい騒音に気付く先生もいそうにない。

「頼む……拒絶、しないでくれ」

しぼり出したその声、こちらを見下ろす切れ長の瞳が苦しげに歪む。私は彼が泣き出すのではないかと思ったが、そうはならなかった。

「んんっ! あぅっ……!」

引き裂かれるブラウス。

スカートの中へ侵入する手のひら。

指先が無遠慮に、布越しの私の一番大切なところへ触れる。まだファーストキスもしたことなかったのに。こんな場所でこんなふうに―そんなのは、いやだ。

「……やめてぇっ!」

自分の叫び声ではっと目覚めた。

「あ……」

また、あの夢だ。

窓の外は既に明るい。雀の鳴き声に時計を見ると、朝の五時半を指していた。起きるには少し早いけれど、再び眠れる自信はない。まだ胸がドキドキしている―指先が震える。

「もう……いい加減にしてよ」

私は自嘲した。

―もう二十八にもなるのに、まだ、中学生の頃のことを夢に見るなんて。

あれから何度も男の人と恋愛をしたし、セックスを楽しめるようにもなった。いくらなんでも、もう忘れてもいい頃だ。

私は重い頭を振ってベッドから這い出した。

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