夢中文庫

あなたの言葉が欲しいの……

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  • 作家森田りょう
  • イラストまろ
  • 販売日2016/04/13
  • 販売価格300円

「もう限界やって言うたやろ?」過去のトラウマから関西弁が苦手な七海は、関西弁を話す幸太を警戒していた。ある日幸太からそのトラウマを一緒に解消しようと提案される。何度かデートを重ねるうちに、しだいに惹かれあっていく二人。あるとき、終電を逃した二人はとうとう、体を重ねてしまい――「可愛い」と言われても、甘えられても、何度体を重ねても、彼の言葉が信じられない七海。幸太の優しさは本物なんだとだんだん彼を信じるようになったところで、幸太が同僚の美香と抱き合っているところを目撃してしまった! 再び信じられなくなってしまった七海は……。ワンコ系甘々な関西弁の幸太と、関西弁嫌いな男性不信の七海の恋物語。


 朝焼けを見つめながら、このまま夜が明けないように祈る。両手を胸の前で組んでは、何度も心の中でそう叫び続けるのだ。
 一人暮らしの小さなワンルームマンションのベランダに出ていた、松葉七海(まつばななみ)は流れ星が降り注がないかどうかずっと夜空をひたすら眺め続けていた。
 空を眺めることで、彼女の心は癒されるのだが、夜の空はあまり好きではない。理由を聞かれても、それに答えることはできない日常にうんざりとした感情が体の底から湧きあがる。
 明け方五時。
──ああ、また長い長い1日が始まる。
 そう思いながら、七海は深いため息を吐いた。
◇◇◇
「松葉さん、これ五十部コピーとってきて」
 同僚の飯田美香(いいだみか)にコピーの原本を突きつけられた。刺々(とげとげ)しい言葉に七海は「はい」と一言、彼女に伝える。
 席を立ち、そのまま部屋の隅にあるコピー機に向かうとうっすらと声が聞こえてきた。美香は七海を横目で見ながら、数人の女の子とひそひそと何かを話していたのだ。
──きっとあたしのことだ。
 そう思わせるほどの露骨な態度と、これ見よがしに微かに聞こえる悪口ととらえるべきであろう七海に対する嫌味な言葉が、鼓膜にぴったりとこびりつく。まあ、なにも言えないあたしが悪いのだから……と、心の中で思う。
 黒髪に黒縁メガネの七海の容姿は一般でいうと中の下くらいだろう。美人揃いの総務課にいればいるほど、七海は浮いている存在というわけだ。その容姿と共に、もう一つのコンプレックスがあるのだけれど、それは人と話すことが苦手ということだ。感情はある。人一倍あるとも言えるだろう。だけど、それを言葉に変換して、声に発することができない。どもってしまったり、語尾が消えて聞こえにくくなったり。きっと、相手の人はイライラするに違いない。今までもそうだった。七海と話すことで、相手はいつも苛立っているように見える。そのためか、しだいに七海は人と接することにもびくびくするようになっていった。
 社会に出るとなおさら、苦手なことはさらに一人歩きしていくようで、七海は社内でも浮いた存在になり、ネガティブな性格のせいか、どんどんと自信を失い孤立してしまっていた。相手の目を見て話すなんてもってのほか、七海の挙動不審な態度にさえ人は苛立つ。
「はあ……」
 ため息を零(こぼ)す昼休み。一時間という貴重な昼休みは彼女にとってみれば地獄のように感じた日々もあったけれど、今は違う。誰もいない屋上に一人きり。景色のいい青空が眺められるような屋上で風に吹かれながら食べるお弁当は格別だ! と、心の中で思いながらもくもくとお弁当を食べる。この気持ちを分かち合える人なんていない。ましてや、仕事以外の会話なんて、この何年かしてなくて……。
 そう考えていた七海の背後から突然、にょっと顔らしきものが現れた。
「一人で食べて、寂しないか?」
「ひゃあぁぁ」
 驚いて、変な声が出た。その声に反応した男は腹を抱えるくらい笑っている。七海の背後から顔を出したのは、スーツ姿の爽やかな顔をした男の人だった。
 黒のスーツが男の印象をよくしているようだ。モデル並みのスタイルなのだが、胸板は厚いが細身ということで、とてもいい体つきをしている。身長は180ほどあるだろう。街中ですれ違ったらつい振り返ってしまうくらいの容姿だ。爽やかな笑顔も特徴的で、言うなればワンコのような雰囲気。
「あはははは、めっちゃええ反応」
──しかも、関西弁っ? この容姿で関西弁なんて……なんかちょっと残念かも。あたしの中では……だけど。

ご意見・ご感想

編集部

ネガティブOL×わんこ系男子のキュンキュンラブストーリー。

プライベートも仕事もなんだか上手くいかない七海ちゃん。
関西からやってきた上司の幸太君は苦手な関西弁。
ビクビクしちゃう七海ちゃんに関西弁克服のレッスンを持ちかけて……
幸太君との出会いをきっかけに色あせた毎日が変わり始める???

何といっても、わんこ系イケメン幸太君から繰り出される関西弁の胸キュンワードにご注目!
これはずるいです~~もうメロメロでございますっ!!

是非とも、お楽しみくださいっ♪

2016年4月13日 1:20 PM

森田りょう

作者の森田りょうです。夢中文庫様から2作目の新刊「あなたの言葉が欲しいの……」今回は前回と違い、ワンコな男の子との恋です。あまりワンコ系は書かないのですが、夢中文庫様だと可愛らしいお話がいいかな~と思って書いた作品です^^
私自身、関西弁なので、関西弁は少しキツイイメージがあるんですよね。幸太くんでそれを払拭できたらいいなあと思って関西弁たっぷりにしました。方言彼氏もたまにはいいものです!
ぜひぜひ、よろしくお願いいたします^^

2016年4月13日 6:23 PM

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