夢中文庫

恋するカラダを抱きしめて

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  • 作家乃村寧音
  • イラストもなか知弘
  • 販売日2015/10/28
  • 販売価格300円

一年ほど前から彼氏に冷たくされ続け、心も身体も寂しい美羽。ある日、居酒屋で女友達にそんな悩みを話していたら、取引先の大手不動産会社に勤務する真面目なイケメン男子・圭吾に、たまたま話を全部聞かれてしまう。後日「毎晩寂しいんだ。俺のソフレ(添い寝フレンド)になってよ」と持ちかけられ、冗談だとばかり思っていたのに、部屋まで連れていかれ、壁に押し付けられてキスされて……。ソフレはキスもセックスもしないはず、話が違う、と逃げようとしたけれど、自分の本当の気持ちに気が付いてしまった美羽は……。

銀座の西五番街に面したビルの七階。周囲には高級クラブや料亭、ブランドショップが立ち並んでいる。そこにわたしの職場である、小さい事務所がある。貸しビル業の会社で、二年前、大学を卒業してすぐに経理担当として就職したのだ。
朝八時半、ラッシュの人波に揉まれながら新橋駅で降り、五分ほど歩けば到着だ。
「おはようございまーす」
「おう、美羽(みう)ちゃんおはよう」 
事務所のドアを開けると、もう社長が出勤していた。のんびりと新聞を広げ、朝のコーヒーを飲んでいる。社長はすぐ近くのマンションに奥さんと犬と一緒に住んでおり、毎朝、途中のカフェでコーヒーを買ってくるのが日課だ。銀髪のお洒落なおじさんで、いかにも銀座に似合う感じの人だ。
わたしはスーツのジャケットを脱ぎサンダルに履き替えた。いわゆる「お客さん」がほぼ来ない会社なので、事務所内ではみんな楽な格好で仕事をしている。社長も、いつも素敵なジャケットを着ているがスーツ姿は見たことがない。この事務所は総勢五名で運営されており、全員かなり年上の、還暦を過ぎたおじさんばかりで、女はわたしひとりだ。
最初は戸惑ったけれど、完全に慣れた。刺激はないが安定しているし、居心地も悪くない。学生時代に想像していた職場とは全く違うけれど、それなりに満足している。
デスクでパソコンを立ち上げ、まずはメールをチェックする。貸しているビルや賃貸マンションに大きな問題が出ていないことを確かめ、急ぎの作業と後に回す作業を振り分けていると社長から声がかかった。
「そろそろ北野(きたの)君が来るころだ。美羽ちゃん、よろしく頼むよ。お茶と、あと話にも入ってもらいたいし」
小さい事務所だから、経理だけじゃなくあらゆる雑務を引き受けている。ある意味鍛えられているなあと思う。不動産の仕事というのは、いろんなことが出てきてけっこう楽しい。店子さんたちもかなりバラエティに富んでいるので、飽きることがない。
事務所内の応接室でお茶の準備をしていると、インターホンが鳴った。
「おはようございます」
明るい声が響く。北野圭吾(けいご)が到着したようだ。応対に出ると、営業マンの鑑、といった様子で微笑んでいる。隙のないピシッとしたスーツ姿は、いつ見てもキマッている。大きな会社の人は違うなあと思う。こういう人の目に、自分のようなだれた格好の女子社員はどんな風に見えているのだろうか。小さな事務所にいるとわからなくなってしまうが、世の中にはこういうピシッとした姿で仕事をしている人が大勢いる会社があるのだなと思う。圭吾の勤めている大手の不動産会社には、同じようにきちんとした格好で決めた女性社員がたくさんいるのだろう。
今日の圭吾はダークグレーのスーツにブルーとイエローのレジメンタルタイだ。彼は一見、爽やかで難がない感じに見える。イケメンをひけらかすようなところは全くないが、よく見るとかなり整っている。さらっとした黒髪にすっきりとした顔立ち、切れ長でちょっと釣り目。ほっそりしているようでも、肩や腕はしっかりしていてなよなよした雰囲気は全くない。話をしているとかなり頭の切れる人だな、とわかる。でしゃばらない好青年で、年上の人間に好かれるタイプらしく、うちの事務所の社長も気に入っている様子だ。
「おはようございます。圭吾さん、今日も朝から元気ですね」
「そんなことないですよ。昨夜遅かったんで、今朝は起きられなくて。あ、でも今日は美羽さんに会えると思ったから、それを糧にがんばって起きました」
「ほんといつも調子がいいですよね」
わたしは笑った。
「調子がいいだなんて心外だなあ。俺のこと、もっとよく知ろうとしてくださいよ」
「いえ、男性は間に合ってますから」
冗談めかしてそう言いながら微笑むと、圭吾は小さく溜息をついて、応接室へと入って行った。
今回の用件は、付近にある物件の橋渡しだった。ビルを扱いきれなくなったオーナーが値段を交渉したいと言ってきているらしい。しかし、ビルの売買というのはそう簡単ではない。空き店舗もあればそうでない場所もあるし、契約も一律ではない。古い物件になればメンテナンスやリフォームの費用も考えねばならない。オーナーが言いたがらない瑕疵もある。
もちろん最終的にはきちんとした調査を入れるのだが、その前に建物の雰囲気や、入っている店舗の様子を知りたい。それが若者向けの店だったりするとその役が美羽に回ってくることは、これまでもたまにあった。とは言っても、探偵ではない美羽ができることなど限られているし、せいぜい雰囲気を伝える程度にはなってしまうのだったが。
応接室には三人だけで、話は和やかに進んだ。買うかどうか即決するような状況ではないし、まずは話をしにきたというところだ。向こうは少々売り急いでいるらしく、こういう場合は値段が下がるはずなので社長は様子を見ているようだし、圭吾もそんなことは百も承知で話している。二人はのらりくらりと世間話をしながら、お互いの出方を窺っている雰囲気だった。
「しかし、テナントはどうなんだろうねえ、空き店舗はないの? このご時世に」
「前のオーナーさんが他よりも少し安くなさってたみたいで、若者向けの居酒屋なんかも入ってるんです。バーも比較的カジュアルな店が多くて、マッサージ店なんかも入居していますね。大変賑わいのあるビルです」
「ふうん、若者向けの居酒屋ねえ。美羽ちゃん、もし都合よければ今夜あたり、行ってみてくれないかな?」
「あ、はい、大丈夫です」
「ちょうどいい、じゃあ北野くんも一緒に」
「あ、ぜひ」
社長が思いがけないことを言い出し、圭吾が話に乗っかろうとしたので、わたしは思わず遮った。そんな必要はないはずだ。
「いえ、実は今夜は友達と約束しておりまして。だから、そのお店は友達と、と思ったのですが。ダメですか?」
「ああそう。もちろん構わないよ。友達って例の彼氏? 滅多にデートできないって言ってたけど、そっか、今夜がそうだったのか」
社長がどこか残念そうに言った。
「いえ違います、女の子です」
小さい会社だから、なんでもバレてしまっている。彼氏がいることも、その彼と滅多に会っていないことも。おじさんたちは聞き上手なので、いつのまにかすべて知られてしまっていたのだ。
「ふうん、それ、北野くんも一緒じゃだめなのか」
「すみません、女子同士で話したいことがあるので」
わたしがきっぱり断ると、二人はちらりと目を合わせていたようだった。

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