夢中文庫

プラトニックな元彼とフィジカルな関係

  • 作家坂井志緒
  • イラスト駒宮十
  • 販売日2018/5/25
  • 販売価格300円

ほのかは高校時代からの親友の結婚式で元彼である充と再会する。その充は十年経ってもカッコいいままだった。二次会の折、充から話しかけてきて、二人きりで会うことを約束してしまう。待ちに待ったデートでは当時の思いを伝え合い、互いの誤解や言葉の掛け違いに気づく。若かったから、そして勇気がなかったから。もう一度やり直したい、そんな気持ちから改めて、そして初めて結ばれ、ほのかは有頂天になる。その時、充のスマートフォンが振動し、送られてきたメッセージが見えてしまう。相手は同棲している様子の女のものだった。「騙された!?」ほのかの心は一瞬で凍りつくのだが――坂井志緒によるピュアな二人のロマンス・ラブストーリー。

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一 友人の結婚式で
「挙式と披露宴には新郎側の友人として、山辺(やまべ)充(みつる)も出席する」
 高校時代からの友人であり新婦の高野(たかの)(旧姓:木下(きのした))かおるから、そう予告は受けていた。充が新郎である高野芳樹(よしき)と仲がよかったことは、私もよく知っている。式に彼が出席するのはわかりきっていたし、彼と再会することは、かおると芳樹の結婚を聞いたときから覚悟していた。
 なぜ覚悟が必要だったのか。
 それは、私たちが元恋人同士だからだ。
 私と充は高校二年の夏から約一年間付き合って、翌年の夏に後味の悪い形で別れを迎えた。会うのは高校の卒業式以来、約十年ぶりだ。
 十年も経てば人は変わる。楽しかった思い出も気まずくなってしまったことも、そして好きだった気持ちも、笑って「懐かしいね」と言えるくらい、過去のものになっているはずだ。
 そう思っていたのだけど、チャペルで大人になった彼をひと目見た瞬間、私の全身は甘く痺れた。
 ビジネスで着用するものとは違う、やや光沢のあるダークグレーのスリーピーススーツ。シワのない白シャツに、ストライプ柄のアスコットタイが映えている。前髪を上げ、額を出すスタイルにセットされた髪。少年らしさはなくなっているが、凛々しい眉と力のある目は当時と変わっていない。
「……カッコいい」
 誰にも聞こえないくらいの声量でそう呟いた瞬間、新郎側の席で友人たちと話していた充がふとこちらを向いた。
「ほのか?」
 目と目が合い、彼の声で名を呼ばれたことで、私の体はもう一度痺れた。それはかつて彼に感じていた、尊いときめきと同じ感覚だった。
 彼の呼び声に応えようとした瞬間、私たちを裂くように別の男性の声が私の名を呼んだ。
「金森(かなもり)さま。金森ほのかさまはいらっしゃいますでしょうか」
 声の主は式場の係員だ。
「は、はい!」
「リングリレーの件で簡単に打ち合わせをしたいのですが。二分ほどお時間よろしいでしょうか」
 リングリレーとは、指輪の交換の際、リボンに通した結婚指輪を後方の列席者から前の列席者へと順に手渡していき、新郎新婦へと届ける列席者参加型の演出だ。私は今日の挙式で、新婦側のリボンの端を持って最初に指輪を送り出すという役割を任されている。
 その打ち合わせを断るわけにはいかない。
「はい。もちろん」
 私は充に後ろ髪を引かれる思いで係員の男性について行った。
 充と出会ったのは、高校二年で同じクラスになったときだった。友達と呼べる関係になったのは、最初の席替えで隣同士になってから。毎日楽しい話で私を笑わせてくれる彼を好きになるのに、そんなに時間はかからなかった。
 明るくて見た目もカッコいい充は、当然ながら女子に人気だった。あの頃、彼に恋をしていたクラスメイトは私以外にもいたと思う。だから夏休み前に彼から告白されたときは本当に夢のようで、彼と恋人同士になれたのは一生に一度の奇跡だと思った。
 私たちはお互いが初めての恋人だ。ふたりきりでデートをしたのも、手を繋いだのも、キスをしたのも、お互いが初めてだった。何度かケンカをしたこともあるけれど、瑞々しくて甘酸っぱい、高校生らしい恋愛だった。
 私は充を大切に思っていたし、充も私を大切にしてくれていたと思う。
 そんな私たちの関係に亀裂が入ったのは、高校三年生になってしばらく経った頃。充がこんなことを言うようになってからだ。
「……したい」
 彼がなにをしたいと言っているのか、わからないほど子供ではなかった。けれど、その希望を抵抗なく聞いてあげられるほど大人でもなかった。

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