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女装男子と恋の罠

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  • 作家桜庭えみり
  • イラストまろ
  • 販売日2016/12/14
  • 販売価格400円

大学内で「女よりも女らしい女装男子」として有名な先輩、高科光に告白された椎葉葵。まずは友達から、ということで始まったふたりの関係は、友人として共に過ごす内に少しずつ変化していく。優しく穏やかな中にも自分を貫く強さを持った光と、そんな彼が時折見せる男性としての部分に惹かれていく葵は、ある出来事をきっかけに彼のために女性らしく変わろうと決心する。けれど、過去の経験からなかなか自分に自信が持てなくて……。「君が誰よりも可愛くて魅力的な子だって君自身に分からせてあげる。だから――他の人の言葉なんかじゃなくて、僕の言葉を信じて」


 まさに困惑、の一言に尽きた。
「あ……ええと」
 今聞いた言葉の意味が咄嗟(とつさ)には理解できず、唇から漏れたのはなんとも曖昧な返答だけで。だが、そんな葵(あおい)に目の前の人物は艶やかな長い髪を風になびかせ、にっこりと笑んで再び先ほどと同じ言葉を繰り返した。
「だからね。椎葉(しいば)葵さん、付き合ってほしいんだ」
「……」
 やはり聞き間違いではなかった。それは分かったものの、相変わらず困惑の色を浮かべながら葵はじっと目の前の人物を見つめた。
 すっきりと整った優しげな顔立ちに、色素の薄い茶色の長い髪。華やかな色味のふんわりとしたシルエットのトップスにスカートが、長身でしなやかな体躯(たいく)によく似合っている。168センチと同性の中でも比較的背の高い葵よりも更に数センチ高いのだから随分と長身だが、それが却ってモデルのようにすらりとした体型に見せている。柔らかな微笑みを浮かべるその人は並の芸能人などよりよほど美しい女性に見えたが、葵は“彼女”のことを知っていた。──というよりも、この大学内で“彼女”のことを知らない人間の方が少ないと言っていいだろう。
(でもこの人が、なんで私に)
 未だに状況が理解できず、何と答えてよいかも分からない。そもそも、もしかしたら先ほどの言葉の意味を自分は履き違えているのではないか。ふとそんな考えに思い当たって、葵は恐る恐る口を開く。
「あー……その……高科(たかしな)先輩」
「ん? 何?」
「付き合うって……それは、どこかに一緒に行くー、とかそういうことじゃ……」
「うん、もちろんないよ? 僕とお付き合いしてくださいって、そういう意味」
「……」
 はっきりと言われてしまった。正直なところ、女子高に通っていた頃にこんな告白を受けたことは何度かあった。けれど、これは初めてのパターンだ。
(どうしよう。同性に告白されたことはあったけど、異性に告白されたのって初めて。……というか、高科先輩の場合、男の人ってくくりでいいのかな?)
 女である自分よりもよほど女性らしく美しい“彼女”──彼を、葵はまたぽかんと見上げた。
 高科光(ひかる)。
 一学年先輩の大学三年生である彼は、葵が入学した頃から既に学内の有名人だった。「ものすごく綺麗(きれい)な女装男子がいる」という噂(うわさ)を聞いてはいたものの、たまたま同じ講義を受けたときに初めてその姿を見たときは、本気で彼が男性だとは信じられなかった。メイクやファッション、立ち居振る舞い、その全てが本物の女である葵より一段も二段も上だった。話す声も耳に心地よい穏やかな低さで、少しハスキーな声の女性だと言われればそのまま信じてしまいそうだった。
 はたして何故彼が普段から女装をしているのか。その理由については正確なものは何一つ流れてこず、その全てが勝手な憶測によるものだった。彼はゲイで、だからあんな格好をしているのだとか、女になりたいがためにいつも女装をしているのだとか。だがそれについて、光自身が肯定したものは何もなかった。理由の分からなさから彼を気味悪く思う学生もいたが、生来人当たりの良い性格のようで、光の周りにはいつも男女問わず多くの友人がいた。
 とはいえ、学年も違えば特にサークルなどで交流があるわけでもない彼と葵が話したことは今までほとんどなく、同じ学科の講義で数度近くの席になったことがある程度の関係でしかなかった。だから、今日たまたま呼び止められたときもまさかこんな話になるとは思ってもみなかったのだ。
「え……と、先輩。その……誰かと間違っているんじゃないですか?」
「間違ってないよ。椎葉葵さんでしょ? 何度か席も隣になってるし。ちゃんと君だって分かって告白してるよ?」
「……でも、私……女ですよ?」
 無意識に声を潜めてしまった葵に、光は不思議そうな表情で首を傾げる。何を当たり前のことを、と心底不思議そうに少しの間考える気配を見せた後、ふと何かに思い至ったようで形の良い眉をわずかに寄せた。
「もちろんそれも分かってるけど。……もしかして僕のこと、男が好きだって思ってる?」

ご意見・ご感想

編集部

恋をする女性はキラキラと輝いて見えるもの…

今作のヒロイン・葵ちゃんもまさにその定説通り…!
大学の先輩に告白され、どんどん可愛らしく、きれいになっていきます!

しかし、告白してきた大学の先輩は、
女装男子」として有名な光さん!
モデルのようにすらりとした体型、
洗練されたファッション、
端正できれいなお顔、
優しい微笑み……じょ、女子力が、高い!(゚ロ゚屮)屮

葵ちゃんの大らかさ、ボーイッシュな見た目とは裏腹に
とってもいじらしくキュートな言動…
光さんの可愛らしいお顔から繰り出される甘い台詞、ストレートな愛情表現
垣間見える男性的な魅力…
ふたりのギャップにキュンとしてしまうこと間違いなしです! ぜひご覧ください☆

2016年12月14日 12:51 PM

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