夢中文庫

誰にも言えない秘密の診察室

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  • 作家桜井真琴
  • イラストnira.
  • 販売日2014/8/8
  • 販売価格400円

製薬会社に勤める桐原花梨(きりはらかりん)の仕事相手はお医者さん。変わり者が多い医師の中でも、花梨が担当する白崎賢吾(しらさきけんご)は、トップクラスの変人だ。若くて腕の立つ内科医なのだが、とにかく花梨にも冷たくて……。でもある日、酔った拍子になんと白崎と一夜をともにしてしまう。「その手術台に乗って、脚を開くんだ」彼の裏の顔、それはドSなイケメンドクター。花梨を気に入った彼は、エッチなモルモットになることを強要。誰もいない手術室。縄で縛られ、媚薬で弄ばれ……サディスティックにいたぶられて花梨はもう陥落寸前。彼氏の見ている前で、ああ、そんな奥まで……!

プロローグ

目の前にいる可愛らしい男の子が、しゅんとした子犬のような顔をして、すまなそうに言った。

「……うーん、ごめん、実は一ヶ月」

私は「えー?」と露骨に不機嫌な声を出す。すると彼はあたふたして、ご機嫌をとるように私の頬を撫でた。

「大丈夫だよ。あっという間だからさぁ。花梨【かりん】に逢えないのは、俺だって辛いんだから……」

彼が私の唇を奪う。優しくて、とろけるようなキスだった。

私の彼は医学生だ。名前は柴田透【しばた とおる】。二十四歳で私と同い年。

つき合ってまだ半年の彼が、いきなりアメリカに一ヶ月も研修に行くと告白してきた。そんな突然の長期的な別れ。彼女としてはブーイングするに決まっている。

キスが激しくなる。何度も角度を変え、舌をもつれさせる。

「可愛いよ、花梨」

見つめられて、そんなことをストレートに言われては、もう非難することなんてできない。

「待ってて、花梨」

そう、待ってる……。

待つことだって、すごく楽しい期間だと、自分に言い聞かせる。

「愛してる、大丈夫。俺、花梨のことしか見えないから」

私だって……。

そんな想いを込めて、私は彼に再び口づけをした。

ああ、この時が永遠だったらいいのに――と。

このときは信じて疑わなかった。

 

第一章

 

 

桐原【きりはら】花梨は、K医大病院の玄関前で深呼吸した。

(今日こそは、ぜーったいに話しを聞いてもらわなくちゃ!)

いつも以上に気合いを入れて脚を踏み出す。病院内は冷房が効いていて、ひんやりして心地よい。

花梨はいつものようにエレベーターに乗り込み、四階の内科医局に向かう。

内科部長の白崎【しらさき】がとってくれた時間はわずか五分間。その間に新しく出た薬の効果に納得してもらい、このK医大で大量購入してもらわなければ……今月のノルマが達成できない。

花梨はS製薬の営業、俗に言うMR(エム・アール)だ。MRとはメディカル・リプレゼンタティブ(Medical Representative)の頭文字をとったもので、医薬品メーカーの医薬情報担当者のこと。つまり一般では販売していない、医療用の医薬品を医者や病院にプレゼンし、定期的に購入してもらうのが仕事である。

友達にはMRなんていうと、「何ソレ、格好いいね」なんて気楽に言うけれど、実態は全然違う。

何が大変って、セールス相手が一筋縄でいかない医者たちだからだ。とにかく医師という人たちは浮き世離れしていて、はっきりいって変人が多い。

(今日ご紹介の内服液は、より胃に優しくて、しかもなんと今までの薬より二十五パーセントもお安くなって……)

花梨はテレビ通販のような大げさな売り文句を頭に刷りこみながら、エレベーターを降り、ナースステーションの看護士たちに挨拶してから、医局に向かった。

「おい、ぶつぶつ言いながら歩くな。気持ち悪いぞ」

突然、背後から聞き慣れた声が降ってきた。

振り向けば、銀縁の眼鏡の奥に意地悪そうな切れ長の瞳。クールといえば聞こえは良いが、無表情でこちらをじっと見つめる仏頂面……内科部長の白崎賢吾【けんご】だ。

まだ三十六歳。それなのに部長という重要なポストをまかせられている若き天才医師。

彼はパソコンなど使わなくとも、身体に触れるだけでなんとなくの身体の数値を読み取れるらしい。難しい症状も難なく暴き出してしまうという神業で、他の病院からも先生たちが見学がくるほどだ。

しかもこの先生、大きなK医大の中でも一、二を争う格好良さ。まだ独身ということで、看護士たちが日々、目の色を変えて部長夫人の座を狙っているという。

だけど……自分にとっては……これぞ、まさに天敵。

「すみません、ちょっと新しい薬のセールスポイントを暗唱していて」

花梨が愛想笑いをしても、白崎はいつものように仏頂面のまま。

「暗唱しなければ覚えられないってことは、たいしたことのない薬なんだな」

相変わらずの不躾な言葉に内心ムッとするが、ここは我慢だ。笑顔が引き攣らないように気をつける。

「いいえ。先生のお時間を無駄にしないように、端的に話そうと思いまして」

「ふーん。で、それはどんな薬なんだ?」

白崎は歩きながら、白衣のポケットからペンを取り出し、持っていたカルテのようなものに何かを書き始めた

(えっ、珍しい!)

白崎が話を聞いてくれるのも滅多にないことなのに、ましてやメモをとるなんて。

「あ、あの、今度出たばかりのこの内服液は、成分がマイルドになっていて、胃に優しいし、なによりも値段が……」

花梨は白崎の後をついていきながら、薬のパンフレットを差し出した。彼はそれをちらりと見てから、一心不乱にペンを走らしていた。

(あっ、もしかして、今日は機嫌がいい日なの? ラッキー!)

新人MRとして、白崎の担当になって半年。ようやく認めてくれたのかなと思うと、説明にも熱が入る。

「……というわけで、当社が自信を持ってオススメする商品なんです」

医局の扉の前に来た白崎は、くるりと向き直り、花梨の眼前に書き込んでいたカルテを差し出した。

そこにはなぐり書きで女性の絵が描いてあった。ミニスカートで胸の大きい女性だ。

「はっ?」

「そういう堅苦しいスーツじゃなくて、胸元の開いたセクシーな服とミニスカートなら、いつでも薬ぐらい購入してやるって、前から言ってるだろ?」

白崎が唇の端を歪めて笑った。

……真面目に聞いてくれたと思ったこっちがバカだった。

「……本当にそういう服着てきたら、買ってくださるんですね」

花梨はめげずに口を開くと、白崎は値踏みするような目つきで花梨を下から上までじっくりと眺めた。

「いや、前言撤回。おまえのような童顔がこんな服着てたら補導されるから、やめとけ」

「なっ!」

反論しようとしたら、いきなり医局のドアをぴしゃりと閉められてしまった。

「先生! まだ時間が……」

閉じたドアに向かって、花梨が声を上げる。

「忙しいから、あとで聞く。あー、そーだ。今夜、田中の送別会に来るんだろう? そのとき聞いてやろう。じゃあな」

ドアの向こう側から、あしらうような口調が返ってきた。

煮え切らない気持ちのまま、花梨は唇を噛みしめて、しばらくそこに立ちすくんでいた。

(年齢がひとまわり違うからって子供扱いして! 大嫌い! もう!)

 

その夜――田中清美【きよみ】の寿退社の送別会は、病院近くの居酒屋で行われていた。

花梨より四つ年上の二十八歳の看護士は、営業の花梨にもいつも言葉を掛けてくれる、とても優しい人だった。

病院の送別会・歓迎会は、緊急を要する仕事柄、いつも人が出たり入ったりで慌ただしいからあんまり人がいないのに、この日は盛況だった。

九月の残暑が身体にまとわりつくような不快な夜にもかかわらず、こんなに人が集まるなんて。改めて清美の人気に感心するほかない。

「ちょっと、飲むピッチ速くない? 花梨ちゃん」

座敷の端で飲んでいた花梨に声をかけたのは、今日の主役の清美だった。

「あっ、おめでとうございます。さっき聞きましたけど、挙式は来月なんですね」

あら、よく知ってるわね、と清美さんは笑みをこぼしながら花梨の隣に座った。

「せっかく花梨ちゃんと仲良くなれたのに残念ね。それよりも、もしかしてまた仕事で苛められた? 白崎先生かな?」

見事に言い当てられて、花梨はグラスを持った手をピタリと止めた。

ちらりと横目で、白崎の様子をうかがってしまう。彼はひとつ前のテーブルに座っているから、背中しか見えない。

「い、いえ、そういうわけじゃ……」

「知ってるわよ。みんな、なんで白崎先生は花梨ちゃんにばっかり意地悪するのかなあって」

「それは……多分、私が新人で何もできなくてイライラするから……ですよ多分」

「そうかなあ、花梨ちゃんの笑顔に癒やされるって言う人多いけどな。みんな一生懸命やってるなあって、思ってるよ」

「それくらいしか、取り柄がないですから」

「あら。誠実っていうのは、営業の最強の武器だと思うけどね。当の白崎先生も気に入ってるみたいだし」

「……はあぁ?」

思いも寄らぬことを言われて、花梨はおかしな声を上げてしまう。

「そんな声出さないでよ。あの人、もう三十超えているのに子供みたいな人でしょ。で、ほら、子供の頃、好きな女の子にわざと悪戯してくる男の子がいたでしょう?」

「はあ」

「それよ。白崎先生は、まさにそんな子供なの。気になった人にちょっかい出したくなるっていう……」

花梨は眉をひそめて、露骨にいやな顔をした。

「そんな……ぜーったい、違いますよ。白崎先生は私のことが嫌いなだけなんです。話なんかまともに聞いてくれたこともないし、目も合わせてくれないし」

「フフッ、まさしくそれが、素直になれない子供の仕草じゃない?」

花梨はまた、ちらりと視線を彼の背中にやった。端正な横顔が見えて、ドキリとする。

(ぜーったい、ぜーったい、そんなわけない!)

花梨は、今まで白崎に受けた仕打ちを思い出す。看護士たちの前で薬に関するクイズを出されて、答えられなかったら思い切りバカにされた。セクハラ発言は毎回だし、お尻を触られたことだって……。

(思い出したら、腹が立ってきた)

持っていたグラスを一気に呷ると、清美さんが、やれやれとため息をついた。

「白崎先生も素直になればいいのにねぇ」

「私なんか……」

(あんなに格好良いんだから、私なんかに興味があるわけ……)

と、自分を卑下するのが花梨の悪いクセだった。

グラスに残った飲みかけのワインを飲もうとしたときに、ふと気がついた。

(ああ、そうだ。これから白崎先生に新しい薬の話をしないといけないんだった……)

と、思い出したはいいものの、どうにも身体がうまく動かない。あれ、目がとろんとする。やっぱり飲みすぎたかな――。

***

「……おい、風邪ひくぞ」

耳元で自分の名を呼ばれたような気がしたが、今は頭がクルクルと回っていて、返事をするのも億劫な感じ。

糊の利いたシーツが火照った身体に気持ちいい。ごろりと寝返りをうつと、誰かの手が肩を揺すってきた。

「おおい、このまま寝るのか」

男の人の声が、頭の奥から聞こえる。

(えーと、なんだっけ……あっ、そうか、透の声だ)

透が傍にいるとわかって、花梨は甘えた声を出す。

「ん……だめよ、待って……私、シャワー……」

とは言っても、飲みすぎでぼうっとしちゃって、全然起きる気もしないんだけど……。

(私、なんでこんなに飲んじゃったんだろ)

花梨は目をつむったまま、仰向けになった。蛍光灯の光が眩しくて仕方ない。

「あかり消して……眩しい……」

そう呟くと、すっと電気が消えて、うっすらとカーテンから漏れる月明かりだけになった。

透がすぐ傍でじっと見ている気がして、花梨は両手を彼の首に手を回した。

どうしよう……お酒のせいだろうか、身体が火照って、信じられないくらいエッチな気分になってしまっている。

「……俺だって、男だぞ……」

(? 透がおかしなこと言ってる……)

頭がぼうっとしてうまく働かないのだけれど、透が何か妙なことを口走っているのは、なんとなく耳に届いた。

「ねえ……熱い……」

花梨は彼をギュッと抱きしめる。彼の興奮した息が顔にかかった。

「ん……」

のしかかられて唇を奪われた。かなりアルコールくさいだろうなって思うと、恥ずかしい気もする。

「んふ……っ……ん」

口づけの感触が気持ちよくって、唇が半開きになってしまう。すると彼の舌が、ちゅくっと、あわいから奥へ奥へと侵入してきた。

舌をもつれさせ、押しつけ、むさぼるような情熱的なキス。

(んっ、透のキス、激しい……あれ……なんか、すごいふわふわする。いつもより感じちゃう……)

舌先が上顎をくすぐったり、歯茎を舐めたり、敏感なところを刺激してくる。こんなにも感じるなんて……知らなかった場所が、すごく感じてしまう。

「ん……んふ」

身体の奥の疼きがひどくなる。何かがあふれてくるような感覚があって、花梨はカァと頭が灼けるような含羞を感じる。

ブラウスとブラジャー、そしてスカートを脱がされて、ショーツ一枚にされた。

「綺麗だ……」

優しい声、そしてぴったりと身体を重ねてきて、愛しいモノを抱き包むかのように背中に手を回される。

肌の触れ合ったところから彼の温かい体温が流れ出て、とろけてひとつになる。たまらなくなって花梨は腰を蠢かし、甘い吐息を漏らした。

「あっ……ぁ……!」

(身体の奥が震えちゃう……)

彼の熱い舌が、肩や腕、首筋や脇腹に、優しい愛撫を仕掛けてくると、そのたび、大げさなほど腰がビクンと動いてしまう。花梨は羞恥に身体を震わせる。

「気持ちいいのか? もっと声あげてみな」

恥ずかしいほどストレートな彼の言い方。だけど、今日はへんだ。いつもよりも興奮してしまい、身体の疼きがジンジンとして止まなくて……もっといろんなところを触って欲しい……。

花梨は顔を伏せながら、彼の命令にコクンと小さく頷いた。

普段しているエッチとは、まったく違う。きっとお酒のせいで、わけがわからなくなっている。だけど、すごく、気持ちイイ。

彼の手が乳房をすくうように揉んだ。

「あ……やぁぁぁ」

耐えきれないほどの快楽に背中が染み渡り、身体中が甘酸っぱい痒みというのか、うずうずとした焦燥感がほとばしり、切ない声が上がってしまう。

指先がキュッと乳首をつまむと、もうダメだった。

「ああン……もぅ……や……ダメッ」

肌が粟立ち、背筋がちりちりと痛む。もれだすような声を我慢しつつも、じれったくておかしくなりそうだった。

するりとショーツを脱がされたときには下腹部が熱く湿っているのに気がついて、花梨は下着を抑えつけようとしたのに、間に合わなかった。

「糸引いてるぞ……すげえな……」

「い、いやっ……」

恥ずかしくてバラバラになっちゃいそう。逃げようとした身体は押さえつけられ、悲鳴は唇で塞がれる。

(だめっ……ああっ……もうだめっ!)

「こんなにエッチだったんだな……病院のヤツらにも見せてやりたいよ」

彼は言いながら、指を、濡れそぼっている中にぬぷりと差し入れた。

「んっ……んんっ」

口をふさがれているから、いやだとは言えない。彼の舌先はまた、とまどう花梨の舌を捕らえ、くちゅくちゅと絡めて刺激を送り込んでくる。

ディープキスでも感じてしまっているのに、それと同時に彼の指が、花梨の中でぐちゅぐちゅと抜き差しされる。

「……んっ、ぅぅぅ……」

指先が膣の襞をこする感覚。身体の内側からくすぐられているみたいな心地よさがたまらない。もうどうしたらいいか、わからなくなる。

「あああ……やぁぁぁん!」

性感が昂ぶり、喉の奥から喜悦の声があふれる。強い快楽のうねりが押し寄せてきて、脚も腰もぶるぶると震えてしまう。

彼の指が、膣奥の粘膜をこすった。

「んんん!」

花梨はあっという間に高みに昇らされて、全身をヒクヒクとさせた。足先まで攣りそうなほどの甘美な刺激に、身悶えが止まらない。

「んっ! んぅぅぅぅぅ!」

大きな悲鳴を、濃厚な口づけで隠されてしまう。まるで空に放り出されたような浮遊感がして、やがて目の前が真っ白く染まった。

(指で……ああっ……これって、私、達した……?)

上り詰めたようなモノが頭の中で弾けた感覚。こんなにも凄まじい快感を、指だけで味わうなんて……。

花梨は透の久しぶりの愛撫に激しい快楽を覚えながら、ゆっくりと瞼を落としていった。

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