夢中文庫

煌きの執愛コレクション

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  • 作家熊野まゆ
  • イラストヤミ香
  • 販売日2016/10/13
  • 販売価格600円

かわいい顔でお願いされても、もう待てない――天文台ホテルの新人スタッフ星梨は、オーナーで御曹司の葉月と付き合っている。手を出さず見守っていた葉月だが、星梨が先輩スタッフ椋本と二人きりになったところを目撃し、抑えていた劣情が嫉妬となって湧き上がる。葉月の本能に攫われ愉悦に導かれる星梨……愛が濃密に絡み合う。一方、天文学マニアの椋本が好きな星梨の先輩亜紀は、ある経験から告白できずにいた。星梨に背中を押されるも、言いよどむ椋本にフラれるのを覚悟する。「俺も亜紀が好きだ」……え!?驚く亜紀に、椋本は更に言葉を続ける。深い束縛は二人を一層燃えさせ……。二組の男女が瞬く星を背景に激愛を重ねる至高の物語。

序章 夜空を駆ける星
 十五歳の春、まだ肌寒い初春の夜のことだった。
 隣に住む、昔からの知り合いである大学生に呼び出された今仲(いまなか) 星梨(あかり)は緊張した面持ちでテラスのベンチに座っていた。
「ほら、のぞいてごらん」
 テラスの隅、優美な白い柵の手前で望遠鏡の位置を調整していた鳴沢(なるさわ) 葉月(はづき)が手招きをする。
 流れ星を見るために明かりを消したテラスは薄暗い。テラスの椅子から立ち上がった星梨は転ばないよう足もとに気をつけながら彼に近づいた。うながされるまま、白い円筒形の望遠鏡をのぞき込む。
「どう? 見えた?」
「う、うん」
 正直なところ流れ星どころではなかった。
 ふわりとかすかに香るのは爽やかなシトラス。葉月がすぐそばにいるのだと思うと、なかなか望遠鏡から目を離すことができなかった。望遠鏡の向こう側を、星が軌跡を作って流れていく。
 ここが薄暗くて本当によかった。このあられもない顔色を悟られずに済む。
「すごい、いくつも流れていった。すごくきれい」
 月並みの感想しか述べられないのが悲しいけれど、これが精一杯。望遠鏡をのぞき込むのをやめ、すぐそばに立つ葉月を盗み見る。彼の艶やかな黒髪がさらさらと夜風になびく。
「そう、よかった。あ、のど渇いてない? なにか温かい飲み物を持ってくるよ」
「や、大丈夫……。って、あの、葉月くん」
 遠慮する星梨の返答などまるで聞いていないようすだ。葉月は「少し待ってて」と言い部屋のなかへ消えていった。
 彼がいなくなって緊張の糸がとけた星梨は「ふう」と大きなため息をつき、もといたベンチにふたたび腰かけた。
 流れ星は肉眼でも小さくだがとらえることができる。夜空を駆ける無数の星を星梨はぼんやりと眺めた。
「──お待たせ」
 葉月はすぐに戻ってきた。両手にマグカップを持っている。甘いココアが香る。ありがとう、と礼を述べながらマグカップを受け取り、ふうふうと吐息で冷ます。
「星梨ちゃんは猫舌だよね。そんなに熱くはないと思うけど、ちゃんと冷まさなくちゃね」
「……っ!?」
 同じベンチに座る葉月が、形のよい唇を尖らせて星梨のマグカップを「ふうっ」と吹いた。ココアとシトラスのよい香りが濃く漂って、頭がくらくらしてくる。肌寒いのに、のぼせてしまいそうだった。彼と触れ合っている肩が異様に熱い。
 わずかに手が震えている。マグカップの中身は吹きかかる息──それだけで揺れているのではない。星梨は手の震えを隠すようにココアをぐいっとすすった。言われたとおり、さほど熱くはなかった。冷め過ぎているわけでもなく、ちょうどよい。
「星梨ちゃんは来月から高校生だね。おめでとう」
 不意に葉月が言った。流れる星を見つめながらココアをすすっている。
「そういう葉月くんは……今月で大学、卒業だね」
 彼と同じようにおめでとう、と口にする。しかしそのあとは、次の言葉をしばしためらった。
 葉月の就職先について、いっさい話を聞いたことがない。ただの「お隣さん」に話すようなことではないのかもしれない。けれど、知りたいので尋ねる。
「あの、葉月くん。ええと……。もしかして、お父さんの会社を継いだりとか?」
 どうしてこう、単刀直入な訊きかたになってしまったのだろう。
 彼の実家は旧家──古くから栄える、いわゆる財閥系のお家柄だ。いくつもの事業を営んでいる。そのなかでも、葉月の父親はホテルをおもに経営している。そのことが頭にあったから、先ほどのように尋ねてしまった。
 うつむく星梨を横目に見て、葉月はどこか曖昧に笑う。

ご意見・ご感想

編集部


精一杯、幼くも真っ直ぐな恋心を伝えた学生時代の星梨
その想いに応え、自分もずっと星梨が好きだったと伝える葉月
先に大人として、御曹司としてスマートに美しく、
そして立派になってゆく葉月を目標に頑張る星梨。

二人が相手を想う気持ちは一つ…
でも、優しくて紳士な葉月の本心は?


星梨の先輩亜紀は片想い。
誰に?
同じホテルで働く恒生に、です。
あるトラウマのせいで消極的な亜紀、
亜紀に自らの性癖(←!?)を打ち明ける恒生。

お互いが持つ「縛る」の意味とは…?

**
二組のカップルがそれぞれに、
煌びやかな星空の情緒の中、
激しく熱っぽく、離れられないほど強く相手を求める…
しっとりと焼け付く愛が溢れる合本です♪
この機会にぜひともお楽しみ下さい(*^▽^*)

↑四人の織りなす可愛らしい?(笑)日常の一コマも、
ついつい心を持っていかれちゃいます☆

2016年10月13日 11:28 AM

熊野まゆ

こんにちは、熊野まゆです。
「星」をテーマにした既刊二作品を今回、装いを新たに合本版ということで出させていただきました。
まずは、このコメント欄を読んでくださっているかたに心から御礼申し上げます。
さてさっそく編集部さまから情熱的なコメントをいただいております。ありがとうございます!
イラストレーター、ヤミ香先生のキュートな挿絵が入っております。(挿絵が)必見です!
ぜひぜひ、よろしくお願いいたします。

2016年10月13日 12:50 PM

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