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司令塔は敏腕上司~私が私になるために~

  • 作家有涼汐
  • イラストnira.
  • 販売日2018/09/07
  • 販売価格500円

「俺が全力でサポートしてやる」──永江文佳はおしゃれも恋も諦め気味、年齢イコール彼氏なし、妹は真逆に愛らしく、彼女と同じようになるのは無理だとも思っていた。自分の意見を通すことも苦手、同僚からは仕事を押し付けられ残業する日々。しかし、ある日いつものように会社に残って仕事をしていた文佳に声をかけてきた逢坂海成から的確にダメ出しをされる。他人に振り回されて、割に合わない人生を送るのはもう嫌。それに気づいた文佳は、海成のサポートを受けて自分らしく生きるために成長しようと自分を奮い立たせる。小さな努力から見た目も周囲の反応も徐々に変化しはじめ、恋のアプローチも受けるようになるのだが……

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第一章
 人はさまざまなカテゴリーに分類される。若い、年配、美人、地味。他にも明るい、暗いなどあげてみればきりがない。そのカテゴリーは自分で決めたわけではなく、他人が勝手に意識的にも無意識的にもおこなっていることだ。
 永江(ながえ)文佳(ふみか)──二十七歳。一部上場企業の総務部で働く彼女を分類すれば、地味。二十七歳といえば、おしゃれや恋をたしなむ年頃。けれど文佳は中学生のころからおしゃれに興味はなく、恋も諦め気味だ。憧れはあっても自分にきらきらとした綺麗なものが降ってくるとは思いもしない。
 年齢イコール彼氏なしの人生を過ごしている。
 パソコンに向かってカタカタとキーボードを打つ。時刻はすでに定時を過ぎた夜の八時。自分の仕事はすでに終わっているが、定時ごろ同僚に押しつけられた仕事がなかなか終わらない。
「……なにしてるんだろ」
 ぼそりと呟いた。
 カタンとエンターキーを押して、イスに寄りかかる。暗くなったフロアで自己嫌悪に陥る。頑張って勉強をしてなんとか入れた会社。決して悪くない給料を支払ってもらっているし、仕事自体は楽しいと思う。
 けれど、社内の女性は自分と違う感覚の人が多い。おしゃれも恋も十分に楽しみ、いきいきとしている。その正反対の位置にいる自分は彼女たちにとって雑用係のようなものだ。遅くまで残業して作った書類は、彼女たちの評価になる。逆に遅くまで残業している文佳は仕事の遅い社員だと思われている。
 せめてもの救いは、総務部の部長は文佳のことを理解してくれており、それとなく文佳に仕事を押しつけている社員を注意したり、文佳のフォローをしてくれたりしている。ただどちらかというと気の弱い人なので、女性社員に猛烈に抗議されるとたじたじになってしまう。
 そのため、文佳に押しつけられる仕事量はあまり減らない。むしろ最近では男性社員まで仕事を渡してくるので増えている状況だ。
 こんな風になった責任の一端は自分にもある。はっきりと断らないからだ。断ろうと思っても、それを聞いてもらえない。もともと自分の意見を言うことが苦手なのもあるが、大人になると根気強く話を最後まで聞いてもらえなくなる。時は金なり、一分で終わる話を五分もかけていられない。
 それを重々理解できてしまうので、文佳は言葉を閉ざす。
 広いオフィスのフロアで一人ぽつんと仕事していると、気持ちが下降する。いつものことだと割り切ればいいというのに、なぜか今日はそれができない。落ち込んでいて仕事が終わるわけではないので、文佳は深呼吸をして仕事を再開させた。
 一時間ほど集中し、なんとか書類作成を終わらせた。
 肩をぐるぐると回し、帰る支度をしようとした時。突然光がフロアの中に差し込んだ。
「……なにやってるんだ?」
「へ? え?」
 警備員かと思ったが、違うようだ。フロアが暗いのもあり、扉を開けた人間が誰なのかわからない。声を聞いてもすぐに誰なのかが出てこないので、あまり関わりのない部署の人だろう。
「もう一度聞くが、こんな時間までなにしてる。規則で残業は遅くとも八時までとなってるはずだが」
「す、すみません! すぐに帰りますので」
「質問の答えになってない」
 なんだろうか。とても怒っている気がする。
 たしかに最近社内の規則が改定されて、残業は八時までと決まった。一回越えたぐらいでそこまで怒られることだろうか。そもそも帰ると言っているのだから、いいではないか。
 やっと押しつけられた仕事が終わり解放されたというのに。文佳は少し不機嫌になる。
「仕事が終わらなかったんです」
「それは君の力量不足によるものか? それとも、仕事の配分のしかたが悪いのか?」
「……」
 うまくこの場を切り抜ける言葉が見つからない。
 文佳自身の力量でいえば、仕事はきっちり定時で上がれる。多少押しても三十分ほどで帰ることは可能だ。配分も一人一人合った量を渡されている。文佳は他の人に比べれば多いが問題ない程度だ。
 この残業は自分が好きでやっているわけではない。けれど、それを伝えてどうなるというのか。状況がよくなるとは思えないし、悪化するだけではないか。
「お前、永江文佳だな」
「……どうして」

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