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お嫁さんにしてあげる

  • 作家立花実咲
  • イラストnira.
  • 販売日2013/1/11
  • 販売価格200円

吉村陽菜《よしむら ひな》(20)はお隣に住んでいるお兄さん、藤沢祐樹(28)にずっと片想いしていた。「大人になったら結婚しようね」と小さな頃誓ったことを陽菜は健気に覚えていた。けれど彼はいつまで経っても一人の女として見てくれない。それもそのはず。祐樹が好きなのは陽菜の姉である彩夏だったのだ。その後二人が付き合うことになり大ショック。けれど数年後二人は別れてしまい……陽菜は姉に未練のある祐樹を気にしながらも自分の抑えきれない想いを伝える。ところが「高校生になったら考えてやる」と言われ……。今度は皮肉なことに教師しかも担任と生徒という立場になってしまう。「二十歳になったら……」と言われてしまい撃沈。もうそれは彼の常套句。きっとこれからも相手にされることないんだと陽菜はようやく祐樹とは縁がないことを諦めることにした。それから二十歳になった陽菜は、新しい恋をしようと決意をしていたのに、なんと彼は成人式に乗り込んできて「約束だ。連れていくぞ」と陽菜の手を引っ張る。一体どういうつもり!?【大人になったらお嫁さんにしてくれる? その約束は叶えられるの? ピュアラブ&エッチなストーリー】

「―約束だ。連れていくぞ」
吉村陽菜は成人式の会場に乗り込んできた長身の男に強引に手を引かれ、うろたえていた。式は無事に終わり、ホテルの外で友人たちと華やかな晴れ姿を写真で撮ったりして和やかな雰囲気の中、それは突然のことだった。
「えっ。藤沢先生と陽菜ってやっぱりそーいう関係っ?」
男は、私立桐生学園高等学校の数学教師で、陽菜の元担任、藤沢祐樹。
艶やかな黒髪がよく似合う、切れ長の双眸、すっと通った鼻梁に、うすく形のいい唇、それらがバランスよくついた端正な顔立ちと百八十三センチというスタイルの良いスーツ姿は、華やかな会場に引けをとらず、埋もれることもなく、三十センチ差の小柄な着物姿の女性を連れていることで目立っていた。それも教師と元教え子という関係だからなおさらだった。

一緒に会場に来ていた友人たちからは悲鳴があがり、周りにいた同級生が次々に祐樹と陽菜を目にして噂をはじめる。
「あれ、藤沢センセーと吉村じゃん。なんで手繋いでんの」
「うっそー、二人ってそういう関係だったの?」
(……そういう関係って、私だって、どうなってるのか分からないよー)
赤い振り袖が揺れる。肩からショールが落ちてくる。着飾った髪飾りもとれてしまいそうだ。
ぐいぐいと手を引っ張る祐樹に連れられて、着物で足幅の狭い陽菜は躓きそうになりながらなんとかついていく。ぐんぐんと人の波を掻き分け、ようやく開けていく。そうしてなんとか二人きりの場所に落ち着いた。

ここは成人式の会場から十分ほど離れた神社の中。陽菜の家はこの境内の裏手にある。
この日の為に華やかに整えた髪は乱れ、草履に挟まっている指が食い込んで痛い。
「ゆう、祐樹お兄ちゃんっ……ちょっとゆっくり歩いて。一体、何?」
息を切らして陽菜は、祐樹の背に疑問を投げかける。ようやく祐樹は振り返ってくれ、引きずられていた手はさっと離された。
「いいか、陽菜。俺はもう、おまえの幼なじみのお兄さんでもないし、おまえの先生でもない。これからは婚約者だ」
「こっ―」
(一体、何を言い出すの……?)
開いた口が塞がらず、お上品を装っていた陽菜の唇がふるふると震えだす。
「だから、今度からはお兄ちゃんって呼ぶな。分かったか?」

不機嫌そうに祐樹の口から放たれた言葉を、陽菜は脳内でどうにか整理しようとするが、あまりに突然のことでパニックだった。
「そんな……こ、婚約者って。どういうつもり?」
「おまえこそどういうつもりなんだよ。おまえが二十歳になるのを待ってた。ずっと我慢していたんだ。それなのにおまえ……あのメール、何なんだよ」
逆に祐樹から問い質されてしまった。

 

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