夢中文庫

マリッジ・ブルーの片恋

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  • 作家玉紀直
  • イラストゆえこ
  • 販売日2017/10/06
  • 販売価格200円

結婚を控え幸せな時期であるはずの彩夏は、なぜか不可解な不安に襲われる毎日を送っていた。――本当に、彼と結婚していいんだろうか……そんなとき彼女の前に十歳年下の従弟、亮輔が現れる。婚約者とはまったくタイプの違う彼に抱いた不埒な感情。初めて感じる、もどかしい欲情。マリッジブルーが見せる蒼い夢は、なにかを確認させようとするかのように彩夏を追い詰める。結婚を間近に控えた女性の、淫らで不確か、なのにプラトニックな片恋の物語。

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「帰るのか……?」
 ずっと握られていた手を外して立ち上がると、背後からけだるそうな声が聞こえた。
 しょうがない。彼は疲れているのだ。そう自分に言い聞かせて、私は薄暗い寝室のベッドを見おろす。
「うん、和史(かずし)、疲れてるみたいだから」
「泊まっていけよ……」
「私がいたらゆっくり休めないでしょう? 最近、仕事忙しいんだから、心置きなくゆっくり寝て休んでよ」
「……なんだよ、……それ……」
 不満そうな声と共に伸びる手は、私の腕を掴み引き寄せる。引かれるままにベッドへ腰を下ろすと、スーツ姿のままベッドに倒れ込み寝てしまっていた和史の両腕が、私の腰に巻き付いた。
 セ○クスしたいのかな……
 なんとなくそんな予感がした。
 けれど私は、彼の腕をペンっと叩いておどけて見せる。
「駄目よ。仕事の疲れはその日のうちに取ってちょうだい。疲れを溜めて、結婚式当日までダルそうにされちゃ堪んないわ。……だから、ちゃんと休みなさいね」
「じゃぁ、泊まっていけよ……。少し寝れば元気になるし……」
 ああ、やっぱりそうだ……。軽く走る悪寒を振り払い、私は苦笑して和史の頭をポンポンッと叩いた。
「“あの日”だから、駄目」
「……もう? このあいだじゃなかったか?」
「そうだっけ? 男の人は女の生理になんて関心がないから、定期的にきていても感覚が分かんないのよ」
 何食わぬ顔でうそぶくと、和史の腕はスルリと離れる。
「じゃぁ、また明日、会社でね」
「ああ……」
 相変わらずけだるそう。けれどどこか寂しそうな彼の声を背に聞いて、私は寝室のドアを閉めた。
 このあと、彼はこのまま眠ってしまうだろう。食事もせず、シャワーも浴びず、着替えもせずに……
 少し前までは、仕事が忙しい彼を気遣って、食事を作り、お風呂を用意して、疲れて眠ってしまってもご飯ができたら笑顔で起こしてあげたものだ。
 それなのに今は、セ○クスさえ面倒になってしまっている。
 私たちは、三ヶ月後に結婚を控えているというのに……

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