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秘密の傷痕をつけた年下のカレに今度こそ奪われました

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  • 作家玉置真珠
  • イラスト
  • 販売日2017/07/21
  • 販売価格300円

年下のカレの心を傷つけてしまったことをずっと悔やんでいた――高校の教育実習で出会ったカレ。今、どうしているだろう。そんな思いを心の奥底に仕舞いこんで、わたしは社会人として歩み始めた。就職した会社では庶務課に配属……え? 秘書課に異動? しかも副社長付の秘書に? なぜ? どうして? 緊張しながら副社長室の扉を開けたら、そこにいたのは――どうして二十歳のはずのカレが副社長室にいるの!? 驚いているわたしにかけられたのは「ずっと逢いたかった」という言葉。だけど、追加された言葉はとっても上から目線で俺様で――「ほかの会社に働き口を見つけたとしても……我が〈槇本財閥〉の力で、いくらでも握り潰してやる」

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「百瀬(ももせ)さん。百瀬結花(ゆいか)さんよね?」
 朝礼が終わり、がやがやと騒がしい槇本(まきもと)建設のオフィス。
 背後からいきなりフルネームを呼ばれ、驚いてふり返ると、黒地に細いストライプが入ったパンツスーツの女性がこちらを見ていた。ぱっと見た感じ、二十七、八──二十四歳のわたしより少し上、いかにも〈有能なキャリアウーマン〉といったいで立ちだ。
 今日からわたしが配属されたこの庶務課では、女子社員には全員、灰色のブレザーに白いシャツ、黒いタイトスカートといった制服が支給され、もちろん、わたしもそれを着ている。
(スーツかぁ。かっこいいな……。営業部あたりの人かな?)
 ぼうっと考えていると、訝しげにまた名を呼ばれた。
「百瀬さん?」
「はいっ! 百瀬です!」
 慌てて返事をすると声が上擦り、しかもやたら大声になってしまった。何事かと思われたのだろう、周囲にいた社員たちの視線が一斉に注がれた。
(うう、恥ずかしい)
 頬が熱くなる。
「あらあら。元気な新人さんね」
 そんなわたしを眺め、彼女はくすくすと笑った。ああ、もう、消えてしまいたい。
「はい、これ」
 うつむくわたしに、彼女は書類の入った薄いクリアファイルを手渡してきた。
「えっと……?」
 何だろう。
 受け取ったファイルを開いて書類に目を通そうとした時、とんでもない言葉が耳を打った。
「あなた、本日付けで秘書課に異動になるから」
「へ?」
 パサリ。
 足元に、何か……軽いものが落ちた。
「今すぐ六階の副社長室へ行くように。エレベーターを降りて左の、一番奥の部屋ね。ほら、大事な辞令、落としちゃダメでしょ。副社長がお待ちよ、早く行きなさい。じゃあね。確かに伝えたわよ」
 わたしが落としたクリアファイルをさっと拾い上げ、再び手渡してウインクひとつ。カツカツとヒールの音を響かせ去っていく細身の背に「待って下さい!」と必死で呼びかける。
「秘書課って、副社長って、どういうことですか──!?」

 重厚なダークブラウンの扉の前に立ち、深呼吸。
「はあ」
 そしてため息。これで三度目だ。
 かっこいい先輩(?)に、早く行くようにと言われている。副社長が今、この部屋の中で待っている。わかっているけれど、緊張と不安が胸の中でぐるぐると回り、なかなかノックできない。
 わたしは、男性が苦手だ。
 この部屋に入り、男性と二人きりで話をすると考えるだけで気が重くなる。
(それも、副社長なんて偉い人……どうしよう)
 男性への苦手意識は、小学部から大学部までずっと、エスカレーター式の女子校へ通っていたから──というのは言い訳か。同じ学校に通っていた友人たちのほとんどは彼氏もち。結婚して子どもが生まれた友人だっているのだから。
(ダメね。社会人なんだから、いつまでもこんなじゃいけない。しっかりしなきゃ)
 もう一度だけ深呼吸をして、控えめに扉を叩いた。
 そっと持ち手を引く。
 アイボリーと黒、木目のインテリアが調和した落ち着いた空間は、庶務課の雑然とした雰囲気とはまったくの別世界だ。壁にかかっているフェルメールの小品、まさか本物ではないだろうけれど──。
 すう、と息を吸い、できるだけ元気な声で挨拶をし、入室した。
「失礼いたします。本日より配属となりました百瀬結花です」
 奥にある、座り心地のよさそうな黒い椅子にかけていた男性が、カタンと立ち上がった。
「っ!」
 彼の容貌を目にした瞬間、思わず息をのんでしまう。
(なんて、きれいな人……!)
 オールバックに撫でつけられた、薄く茶色がかった金髪が煌めいている。
 栗色をした少し切れ長の瞳ともろに目が合い、咄嗟に視線をそらした。
 背が高い。百八十センチくらいはありそうだ。一見すらりとしているが、高級そうな薄いキャメルのスーツ越しでもわかる、逞しい身体つきをしていた。
「すみません、副社長に呼ばれた……ん、です、けど……」
 先ほどとは違う意味で、頬が熱くなるのがわかった。
 男性が苦手──なのだけれど、今ここにいる〈男性〉は、どんなメディアの中にいるアイドルや俳優より素敵で、目が離せない。
 どくん、どくん、と、心臓がどんどん速くなる。
「ふ、副社長が、副社長は、あの、その、どちらに」
 美貌の主は、しどろもどろになるわたしの声にかまわず、つかつかとこちらへ歩み寄ってきた。手が届きそうな位置で立ち止まると、整いすぎ、酷薄そうにさえ見える薄い口唇をやわらかく綻ばせた。
(う、わ。笑うと、もっと素敵……)
 そう思った瞬間、彼は艶やかなバリトンを震わせた。
「ずっと……ずっと、逢いたかった……」

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