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誘惑御曹司は臆病なシンデレラが、可愛くてしかたない

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  • 作家田崎くるみ
  • イラスト炎かりよ
  • 販売日2017/10/13
  • 販売価格600円

高嶺の花部署と評判の受付、それが未知の配属先。
美しい先輩たちは「一流物件」を品定め&寿退社を狙っているが、未知は全く興味を示さない。
「ジュニア」と呼ばれる御曹司、太一にすら無関心。
……けれど本当は彼に憧れている。地位に甘んじることなく、優しいうえに爽やかな容姿。
でも好きだと伝えられないのは、未知が男性でも本気で引くほどの大食いだから。
食欲のせいで元カレにこっぴどく振られて以来、恋愛なんてもってのほか。
なのに太一から「可愛い」と言われて驚く未知。
ありのままの自分でいいの?
コンプレックスごと愛してくれる?
傷ついた恋心を溶かすように、太一は待ったなしの本気アプローチを仕掛けてきて……?

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【気になる人】
 人は誰だって、大小かかわらず、なにかしらコンプレックスを抱いているもの。
 鼻が低いとか、目が小さいとか。声が可愛くない、胸が小さい……。抱えているコンプレックスを、ひとりひとり挙げたらキリがないと思う。
 でも本人にとっては、最大の悩みの種であって人生を少なからず左右してしまうほど、大きな問題の場合もある。
 例えば、コンプレックスのせいで恋愛に臆病になってしまうことも──。
「水島(みずしま)さまですね、お待ちしておりました。只今、営業の上野(うえの)に伝えますのであちらでお待ちください」
「はっ、はい!」
 ほんのり頬を赤らめる営業マンに、にっこり笑顔で軽く会釈をし、案内した場所は広々としたロビー。するとすかさずロビー担当の先輩がやって来て、ここでバトンタッチ。丁寧に一礼し、また受付に戻るとすぐに営業部へ内線をかけた。
 坂上(さかがみ)未知(みち)。二十四歳。
 黒髪でパーマがかかったロングヘアを仕事中はハーフアップにしている。
 大手食品メーカーに入社し、配属された先は本社の受付。私を入れて五名だけの社内で一番少ない部署。入社して一年経ったけれど、私が一番下っ端だ。
 受付の仕事はカウンターに立ち、来客を出迎える二名と、ロビーで来客を案内したりお茶を出したり、ロビー脇にある会議室の管理や使用後の片づけなどを請け負うロビー担当の三名に分かれ、日々ローテーションで勤務にあたっている。
 内線を終えると、ふたつ年上の池崎(いけざき)加奈(かな)先輩がコソッと耳打ちしてきた。
「さっきの営業マン、完全に未知ちゃんに惚れたね」
「え、まさか!」
「絶対そうでしょ。顔真っ赤だったし。だけどちょっと物件としては、三流かなぁ」
 あくまで小声で前を見据えたまま会話を交わすも、加奈先輩の『三流』発言には苦笑いしてしまう。
「一流はどうしても先輩たちに取られちゃうからねぇ。下っ端は辛いよね」
 前を見据えたまま、私はひたすら乾いた笑いを浮かべることしかできずにいた。
 たった五人しかいない受付は、社内で『高嶺の花部署』と呼ばれている。
 皆さん、どんな才色兼備を思い描いているか謎だけど……実際の私たちは違う。先輩たちは確かに綺麗でスタイルもいい。「モデルです」と言われても、すぐに納得できてしまうほどだ。
 でもそれは表の顔であって、裏では来訪者を一流から三流に分類し、品定めしているんだ。
 それというのも受付社員の寿命は短い。一番年上の先輩で二十九歳。三十歳を迎えると他の部署に異動させられる。
 表向き理由は立ち仕事で常に笑顔でいないといけない、ハードな仕事だからって聞かされているけれど、はっきり言っちゃうと若くなくなったら用済みなのだ。
 以前は三十歳を超えても在籍していた社員もいたらしいけれど、なんせ女の職場。若い子をイジメる風習ができ上がってしまったようで、次々と新しく入っては退職していくの繰り返しだったようだ。
 そこで会社は、受付は三十歳までという暗黙の年齢制限を設けたらしい。
 だけど、三十歳になったら他部署に異動だなんて、当事者にしたら「女の賞味期限が終了しました」と突きつけられるようなもの。
 そんな惨めな思いをするくらいなら……と歴代の受付社員たちは、みんな三十歳までに寿退社していた。
 だから仕事中とはいえ、先輩たちは未来の旦那さん候補を品定めするのに必死。一流とか三流で分類しちゃうほどに。
 加奈先輩じゃないけれど、年功序列(ねんこうじょれつ)で年上の先輩が一流来客の対応にあたっている。
 だけど正直、私はまだ結婚とか意識していない。暗黙の異動まであと五年以上あるし、なにより結婚以前に恋愛するのが怖いから。それに──……。
「加奈先輩、すみません。ちょっとお手洗い行ってきても大丈夫ですか?」
「うん、しばらく来訪の予定ないし大丈夫よ」
「すみません」
 ペコリと頭を下げ、そそくさと受付カウンターをあとにしていく。向かった先は化粧室……ではなく、人気(ひとけ)のない廊下。
 周囲を見回しながら物陰に隠れ、いそいそとポケットの中から取りだしたのはチョコレート菓子。
 包みを開けて口に含めば、甘さが一気に広がり、幸せな気持ちになれる。
 今の私には恋愛より食い気。日々の食費を稼ぐだけで精一杯だ。
「やっぱりこのメーカーのチョコレートおいしいな。今度まとめ買いしておこう」
 もぐもぐと頬張りながら急いでお腹を満たしていった。

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