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豹変御曹司は、つれない彼女が好きでたまらない

  • 作家田崎くるみ
  • イラスト白峰早菜
  • 販売日2018/6/22
  • 販売価格500円

「なぁ、志乃。いい加減俺たち付き合わない?」──同期でもあり勤務先の問題児御曹司でもある大泉優志からのこうした口説き文句は、挨拶かと思うほど数え切れず言われてきた。できる兄と比べて同じ御曹司とは思えないほどチャラく勤務態度も悪い彼のことを、曲がったことが大嫌いな小野志乃はまったく相手にせず右から左に聞き流す。ある日、志乃は優志と二人で三泊の大阪出張を命じられるのだが、優志は上司の態度が気に入らない様子。思ったことは何でも口にしてしまう志乃は優志の言動にぴしゃりとダメ出し。「まずはあなたが変わらないことには、なにも変わらないと思うけど?」──それを機に優志は豹変、志乃の心は大きく乱される。

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『我が社のダメ御曹司の実態』
「たしか今日は当直医が不在だったよね? だとすると医務室にいる可能性大ね」
 ブツブツと独り言を呟きながら、就業時間中の静かな社内の廊下を進んでいく。
 首都圏を中心に全国に数十店舗展開している老舗の大泉(おおいずみ)百貨店。三店舗で二年間勤務したのち、本社のマーケティング戦略部に配属されて二年目になる私、小野(おの)志乃(しの)は昼休み終了後、先輩社員に言われ社内である人物を探していた。
 本社ビルは十五階建てで、私が所属しているマーケティング戦略部は十階にある。そこからエレベーターで三階に下り、向かう先は医務室。
 すると近づくたびに医務室から聞こえてきたのは、勤務中に聞こえてくるはずのない男女の会話だった。
「あっ……もう、大泉さんだめ。仕事に戻らないと」
「少しくらい遅れても大丈夫だろ?」
「でもっ……!」
 そして次に聞こえてきたのは、女性のいかがわしい声。
 中を覗き見なくても容易に想像できる情景に、深いため息が零れた。
「ンッ……! そこだめっ……!」
 こんな場面に出くわしたら、一目散に逃げ出したいし、誰だって他人の濡れ場など見たくない。けれどそうは言っていられないのだ。
 表情を引き締め、私は躊躇なくドアを開けた。
「大泉くん、仕事はじまっているから」
 ズカズカと医務室に足を踏み入れると、案の定な光景が目に飛び込んできた。
 ベッドの上で女性はみだらに服が乱れていて、その上には同期入社であり、同じマーケティング戦略部所属。……そして我が社の御曹司でもある大泉優志(ゆうじ)が覆い被さっていた。
「キャッ……! な、なにっ!?」
 突然踏み込んできた私に女性は慌てて服装を正すものの、私はそんな女性には目もくれず真っ直ぐ大泉くんの元へ歩み寄る。
 案の定な状況に呆れて怒る気にもなれず、ただジッと彼を見下ろしていると、女性は「信じられない!」と叫びながら大泉くんを押し退け、慌てて医務室から出ていった。
 けれど大泉くんは特に驚きもせず、ここに私が来ることを予想していたかのような目で私を見上げる。そんな彼にイラッときて刺々しい声で言った。
「いい加減にしてくれない? 毎回毎回探しにくる私の身にもなって。大泉くんが勤務中にサボるたびに、私は見たくもないものを見せられるのよ?」
 実はこうして私が彼のイケない情事の場面に出くわすのは、初めてではなかった。目の当たりにするこっちの身にもなってほしい。
 見たくもないものを見せられ、その後の仕事にも支障をきたすことがあるのだから。
「慰謝料払ってほしいくらい迷惑だから」
 汚いものを見る目で彼を見据えきっぱり言ったものの、なぜか大泉くんは声を上げて笑い出した。そんな彼に私の苛々は募るばかり。
「笑う暇があったら、早く服を着て仕事に戻る!」
 声を荒げて言うと大泉くんは笑いをこらえながら「はいはい、わかったよ」と言いながら立ち上がり、緩んでいたネクタイをキュッと結んだ。
「本当、お前だけだよ。いつも俺に突っかかってくるのは」
 誰もが見惚れてしまいそうなほどの笑顔で言うと、大泉くんの大きな手が私の頭にポンと触れた。
 こんなことを不意打ちでされたら、大抵の女子はドキッとしちゃうところだけれど私の場合は違う。いまだに私の頭に触れている彼の手を払い除けた。
「気安く触らないで」
 嫌悪感を露わにして一喝し先に歩き出すと、背後からは大泉くんの笑い声が聞こえてきた。
「待てよ」
 そう言われて待つと思う? より一層歩くスピードを速め、医務室を出てオフィスへと向かっていく。

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