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薔薇の娘は謎の騎士に恋わずらい

  • 作家永久めぐる
  • イラスト弓槻みあ
  • 販売日2017/09/01
  • 販売価格700円

「一生恨んでくれていい」
――山間の小さな村に住むローザは、薬草採りを生業として暮らしている。
そんな彼女のもとへ、取り扱いの難しい、ある薬草が欲しいという依頼が舞い込んだ。しかも依頼主は密かに憧れているアルベルトだ。
自らの手で採りたいという彼の希望を聞き、道案内を引き受けたローザだが、偶発的な事故により強烈な催淫作用のある花粉を吸いこんでしまい――? 
堅物騎士と生真面目娘、不器用なふたりの織りなす両片想いラブファンタジー!

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第一章 突然の依頼
 晩春にしては涼しい風の吹く午後だった。
 ローザは、薬草がいっぱいに入った籠を両手で持ち、村へと続く道を歩いていた。一歩踏み出すたびに、小さな土埃が舞い上がり、膝まである長靴を白く染め上げていく。
 ここのところ、少しばかり雨が降らない日が続いていたのだ。
 とは言え、乾燥はさほど深刻ではないし、もう半月もすれば雨期に入る。まだ気を揉むほどでもないだろう。
 ローザは一本道のそばにある大木の陰で足を止めた。木の下には腰をかけて休むのにちょうどよい大岩が転がっており、彼女はいつもそこで休憩をとることにしているのだ。
 慣れた仕草で籠を岩の上へ置き、自らもそのわきにちょこんと飛び乗った。数度尻をもぞもぞさせて、一番おさまりのいい場所を探し当てると、額の汗を手で拭う。
 肩から斜めに下げた水筒の栓を抜き、中身をひと口、ぐいっと煽った。朝、井戸から汲んだ水はすでにぬるくなっていたが、それでも乾いた喉を潤すには充分だ。
「はーっ! 美味しい」
 独り言を呟いて、彼女は栓を戻した。水筒はだいぶ軽くなっているが、あと一回飲む分ぐらいは残っている。
 ここまでくれば家までもう少し。全部飲んでしまおうか、それとも念のために残しておくべきか。そんなことをぼんやりと考えながら、彼女は両手を体のやや後ろについた。そうして仰のけば視線は自然と上を向き、空が視界に入る。
 のびのびと枝を伸ばし、緑の葉を茂らせる木の向こうには、真っ青な空と白い雲。
 少し視線を下に向ければ、遠くまで広がる畑。作物が青々と育っている。
 その向こうに見えるのが、ローザの住む村だ。
 すべての景色が目に痛いほど鮮やかで、彼女は心地よさげに目を細めた。
 薬草採取を生業として、早朝から山野に分け入り、午後日が傾き始める頃に戻ってくる彼女の、毎日のささやかな楽しみがこの岩の上で景色を眺めるひと時だ。
 新緑をさわさわと震わせて過ぎていく風に身を任せていると、じっとりとかいた汗は瞬く間に冷えていく。少しひんやりと感じるくらいが心地いい。
「やぁ、ローザ。今、帰りかい?」
 ふいに声をかけられて、我に返った。鍬を肩に担いだ初老の男性が、好々爺(こうこうや)然(ぜん)としたにこやかな笑顔で立っていた。
「あっ、ニコロさん! こんにちは」
「はい、こんにちは。今日も元気だねぇ」
 ニコロは実の孫を見るような目で頷く。
「おかげさまで!」
 と、ローザもにこやかに返した。
「今日はいつもより少し帰りが早いようだね」
「はい。目当ての薬草が早く見つかったので」
「そうか、そうか。そいつは良かった。いつも一生懸命働いてるんだから、たまには休めっていう、天の采配だろうさ」
 褒められて、ローザは頬を赤らめて狼狽えた。「いや、そんな、あの……」ともごもごと口ごもり、なかなか上手い返事ができない。
 彼女の褒められ下手を知っているニコロは、呵々と笑った。
 いたたまれなくなったローザは、早々に話を変えることにした。
「あっ、あの! 昨日は雉(きじ)の塩焼き、ありがとうございました。すごく美味しかったです」
 村長を務めるニコロは、身寄りのないローザのことを心配し、なにかれとなく気にかけてくれる。『余ったから』と食べ物を分けてくれたり、時には仕事を斡旋してくれたり。頑張りすぎるきらいのあるローザが、根を詰めすぎて体を壊さないように、いい塩梅で注意をくれるのも彼だ。ローザにとっては祖父のような存在だ。
「なぁに。先ごろ貰った薬草の礼だ。ローザの採ってきてくれた薬草のおかげで、家内の熱もすっかり下がった。ありがとう」
 薬草の礼だというが、手間賃はすでに貰っている。なのに、こんなふうに言うのはローザが負担に思わないようにとの配慮からだろう。
「そんな! こちらこそ、いつもお世話になってしまって。私には薬草採りくらいしか取り柄もないで……」
「ローザの目利きはこのあたりで一番だ。もっと自信を持ちなさい」
「……はい」
 褒め過ぎだ。何と返していいか分からず、ローザはますます顔を赤くする。

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