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伯爵様の初恋花嫁~蜜月は夢より愛しく恋より甘く~

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  • 作家宇佐川ゆかり
  • イラスト湯浅あゆ
  • 販売日2017/07/07
  • 販売価格500円

家族のために、不本意な結婚をしようとしていたアビゲイル。そんな彼女を救ってくれたのは幼なじみのシリルだった。いずれは侯爵家を継ぐことが決まっていて、今は伯爵を名乗るシリルは、アビゲイルとの身分差のある婚姻を成立させるために今まで努力してきたのだという。シリルの真摯な求愛を受け入れて結婚したアビゲイルを待っていたのは、夢のような蜜月だった。甘いキス、蕩けるような夜。二人で遊んだ幼い日を思い出すような幸せな日々。シリルにふさわしい淑女になるため、懸命に努力して少しずつ周囲の人にも認められてきたけれど、恐ろしい事件に巻き込まれることになってしまって!?

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寝室へと入ったアビゲイルは胸をどきどきさせていた。
 無事に結婚式は終えたけれど、まだ、実感がわかない。
 遅くなったといいながら入ってきたシリルは、ガウンを椅子の背もたれにかける。
「シリル様……」
 彼の名前を呼ぶ声がかすれている。こんな夜を迎えることがあるなんて、想像してもいなかった。
「──おいで」
 低い声で命じられると、お腹の奥がぞくりとする。シリルに導かれるまま近づいたら、そのままベッドに押し倒された。
「……今日まで、長かったね。人生で一番長い二週間だった」
 シリルの素直な言葉に、顔から火が出るような気がした。
「シリル様は……後悔しない?」
「後悔なんてしない。アビゲイルを手に入れるために、俺がどれだけ努力してきたと? もっと早く迎えに行くつもりだったのに……」
「……あっ」
 不意打ちのキスに、あっという間にアビゲイルの意識は奪われる。重ねられた唇から、シリルの想いが流し込まれるみたいだ。
「……んっ」
 舌を触れ合わされたら、甘い吐息が零れ落ちた。ゆっくりと口内を探ってくる舌に、身体中がなんだかぞわぞわしはじめる。
「やっ……ん、シリル、様……」
「……可愛い。顔が赤くなっているね」
 そんな風に言われたら、顔が真っ赤になったのを意識する。恥じらう気持ちが急激に膨れ上がって、手で顔を隠した。
「だめ、顔を隠さないで。アビゲイルは可愛いんだから──俺にもっとその顔を見せて」
 シリルの声に、顔を覆っていた手をそっと外す。手を外したものの、その手をどうしたらいいのかわからなくてきゅっとシーツを握りしめた。
 キスの合間に零れる声は甘ったるくて、自分の声ではないみたいだ。
「やっ……ん、シリル……さ、ま……」
 彼とは幼なじみだけれど、会わない期間も長かった。再会してまだ二週間しかたっていないのに、こんな風に結ばれるなんて。
「……愛しているよ、アビゲイル。俺を信じて。絶対に君を幸せにするから」
 初恋だと気づいたのはつい最近だった。かなうことなんてないと思っていた。それなのに──たった二週間で運命は大きく変わってしまった。
「私も……愛しています」
 そっとささやき合う思いの丈を伝える言葉。二人にとって、夜はまだ始まったばかりだった。
◇ ◇ ◇
 アビゲイルは六歳の誕生日を迎えたばかりだったけれど、ウォールデン侯爵家で働く母の手伝いをして、常に屋敷の中をあちこち行ったり来たりしていた。
 もちろん、アビゲイルにできることなんてたかがしれている。それでも、お世話になっている以上何もしないというわけにはいかないというのが母の教えであり、アビゲイルもそれを当然のこととして認識していた。
「ええと、次は……」
 毎日の洗濯物はきちんと洗われ、天日に干して乾燥させた後、畳まれて洗濯室に置かれている。洗濯したものをそれぞれの部屋に届けるのは、アビゲイルの仕事だった。
 それが終わったら、少しだけ遊ぶ時間をもらうことができる。旦那様は優しい人で、使用人達の子供にも基本的な教育は与えてくれた。
 それだけでなく、使用人達の休憩所には、子供用の絵本──ぼろぼろになってしまって、貴族の子供が読むには適さない──も何冊も置いてくれて、本を読むのが好きな子は、それらの本を読むこともできた。
(今日は、お姫様のお話にしましょ)
 アビゲイルはもう、全ての文字を覚えている。休憩所に置いてある本では少し物足りないけれど、しかたない。
(……新しい本があればいいのに)
 アビゲイルが行っているのはあくまでも母の手伝いなので、自分の自由になる金銭は存在しない。もし、お給料をもらえる身分になったら、真っ先に古本屋に行くつもりだ。
「アビゲイル、どこに行くんだい?」
「……シリル様!」
 アビゲイルの手にした籠には、シリルの部屋に届ける洗濯物がおさめられている。そう言うと、彼はアビゲイルの手を引っ張った。
「そんなの後でいいから、一緒に遊ぼう」

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