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ハグ!恋がはじまる特別儀式

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  • 作家ゆみみゆ
  • イラスト中田恵
  • 販売日2016/10/25
  • 販売価格300円

花瑠と大地は兄弟のように育った幼なじみ。そんなふたりが行う大事な儀式…それは、ハグ。いつもぎゅっと抱き合っては、悲しいこと嬉しいことを共有してきた。けれど最近は、お互いを異性として意識するようになり、自然なハグができなくなってきていた。全国有数の実業団陸上部への入部を控えながら、走る意味を見いだせず悩む大地を見守る花瑠だったが、ある晩、些細なきっかけでふたりは一線を越えてしまう…。以来、ぎくしゃくし始めたふたりの関係。気まずさから花瑠と大地は顔を合わせることもできずにいた、そんな時、大地の前に現れた謎の美女。その正体とは…?──お互いの本当の気持ちに気づく、幼なじみ二人の爽やか初恋物語。

鏡で何度もチェックする。黒いスーツの上着に乱れはなし、下に着た白いブラウスの襟元もきれい。いつになくきれいにカールさせた髪も、我ながら可愛く見えているんじゃない?
 上野花瑠(うえのはる)は鏡の中の自分に向かい、気合を入れた。
「よしっ! いける!」
 そして、ちらりと窓の外を見た。屋根を接した隣家の窓がすぐ目の前にある。その窓から見える室内に、彼の姿はなかった。
 しばらく無人の部屋を眺めてから、花瑠はあわてて鏡に向き直った。
 小さい子供じゃないんだから! いつまでもあいつに頼るな!
「よし!」
 もう一度叫ぶと、カバンを手に部屋から飛び出した。勢いよく階段を駆け下りる。
「お母さん、行ってきます」
 台所に立つ母、舞子(まいこ)に声をかけると、洗い物をしていた彼女が振り返った。
「行くの? 頑張って! ……緊張しないでよ?」
「もう。そういうこと言うと緊張するのっ」
 ピカピカに磨き込んでおいた黒いパンプスを履いた。ふっと息をつき、玄関を開ける。
 とはいえ、自営業の上野家の玄関前は隣家の壁だ。花瑠は路地を抜け、正面玄関ともいえる「上野電気店」の前に出た。父にも声をかけようと、店先を覗き込んだ時だった。
「花瑠!」
 自分を呼び止める声が上がった。あ、と花瑠は振り返る。
 店前に停めてある軽トラから、園生大地(そのおだいち)が飛び出してきた。「上野電気店」と染め抜いたエプロンを付けている。
「面接か? もう行くのか」
「うん。大地はこれから配達?」
 お隣さんの大地は、花瑠の父、宏二(こうじ)の配達をたまにバイトで手伝っていた。
 そんな大地が、リクルートスーツを着た花瑠の姿を、頭からつま先までしげしげと眺めた。
「な、何よ」
 彼の無遠慮な視線に、花瑠の顔が熱くなる。
「葬式だな、まるで」
「しっ、仕方ないでしょ! 就職の面接だもんっ」
「絶対トレーニングウェアのほうがいいって。そのほうがお前らしい」
「ぐふっ。そんな恰好(かつこう)で行ったら逆に落ちるわよっ」
「それに髪なんか巻いちゃって」
「えっ。もしかして似合ってない?」
 とっさに髪に手をやった。すると、なぜか大地は頬を赤らめて横を向いてしまった。
「そうは言ってねえだろ。見慣れないから珍しいって思っただけだ」
「やだもうっ、変かと思ったじゃないっ」
「ほれ。しなくていいのかよ」
 そう言いながら、大地がエプロンを外し始めた。花瑠は戸惑った。
「……スーツが汚れちゃう」
「いいから。来い!」
 大地が両手を広げる。とたんに、花瑠はためらったことも忘れ、駆け出してしまっていた。彼の両腕の中に勢いよく飛び込む。
 ギュー!
 二人、固く固く抱き合った。両腕を互いの身体に回し、凸と凹をぴっちりと埋め合わせるみたいにぎゅっと。
 ハグは、花瑠と大地の幼い頃からの儀式だった。嬉しい時、不安な時、悲しい時……二人はいつもこうしてハグをしてきた。
 大地の身体を強く抱きしめる。つい先ほどまで、花瑠をふわふわと落ち着かなくさせていた緊張がほろほろと溶けていく。花瑠はホッと息をついた。
 ああ。やっぱり、落ち着く。
 大地の息がぼそりと首筋にかかった。

ご意見・ご感想

編集部

当たり前の関係が、特別な関係へと変わっていく…

幼いころから一緒に過ごし、兄弟のように育った花瑠ちゃんと大地君。
喜び・悲しみを分かち合った、なくてはならない信頼できる存在。
そんなふたりの大事な儀式は「ハグ!
ここぞという時に、互いをぎゅっと抱きしめます(*´ー`*)

しかし、ある出来事がふたりの心を離していきます…
一線を越えることは怖い、けれど一線を越えてその先へ進みたい
相反する気持ちが心を揺らし、戸惑い悩む日々…

果たして花瑠ちゃんと大地君の恋の行方は?!
互いの本当の気持ちと向き合う恋物語、ぜひご覧ください♪

2016年10月25日 5:15 PM

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