夢中文庫

社長は飢えた獣なんです!~獲物(ターゲット)は清純秘書~

  • 作家伊月ジュイ
  • イラスト一味ゆづる
  • 販売日2018/09/04
  • 販売価格600円

イケメン敏腕社長の蓮は、女癖の悪さが玉に瑕。恋愛経験ゼロ秘書の詩恵はそんな蓮を諫めるのが日課となっていた。蓮は色気皆無の詩恵に「お前とだけはそういう関係になる気がしない」と公言。しかし、詩恵の女性的な魅力を発見してしまった蓮は「俺の女になれ」と迫るようになる。詩恵の純真さに煽られ、どんどん歯止めが効かなくなっていく蓮。「女遊びを止めさせたいなら、お前が俺を満足させろ」と獣のごとく襲いかかる始末。自宅へ連れ帰り溺愛するが、当の詩恵は高嶺の花である蓮が自分を好きになるはずがないと困惑し……。

YAHOO!JAPANブックストアで購入
BookLiveで購入

プロローグ
「なんて顔してんだお前は」
 オーダーメイドの最高級スーツを文句なく着こなした男が、革のソファに悠然と腰掛けていた。その手に握られた携帯端末には、つい先ほど撮影で相手役を務めた美人モデルから入手した連絡先が入っている。
 お前と呼ばれた女性──結城(ゆうき)詩恵(しえ)はがっくりと肩を落とした。同時に、黒縁眼鏡が鼻筋をずるりと滑り落ちる。
「社長の節操のなさに、呆れているんです」
「男が女を口説いてなにが悪い。自然の摂理だろ」
「先日、週刊誌に三股と報じられて、会長にどやされたことをお忘れですか」
「誤解だと言っただろう。そもそも俺は、特定の女性と付き合うつもりもないから、三股もなにもない」
「ご自分が最低なことをおっしゃってる自覚はありますか?」
 そうこうしている間に準備が整ったようだ。撮影を担当するカメラマンが奥のバーカウンターから「加賀見(かがみ)社長、よろしくお願いします」と声を張り上げた。
 名前を呼ばれた男──加賀見蓮(れん)は、秘書である詩恵に携帯端末を放り投げ、立ち上がる。長身の彼は、立っているだけで様になる。美人モデルから簡単に連絡先を入手できた理由は、彼の地位とルックスを見れば明らかだった。
「安心しろ、結城。お前にだけは手を出さないと誓うから」
 それは暗に、詩恵には女性的魅力が欠如していると言いたいのだろう。詩恵は内心、悲しい気持ちになりながらも負けずと睨み返した。
「当たり前です。私だって、軽い男なんて願い下げです」
「生意気なヤツ」
 蓮はニッと唇の端を跳ね上げて、悪戯っぽく詩恵を睨みつけたあと、カメラマンの待つバーカウンターへ颯爽と歩いていった。
 詩恵は、そんな社長の姿を、スタッフの邪魔にならないよう部屋の端でじっと見守る。
 これからビジネス誌『キーパーソンJAPAN』の表紙の撮影が行われる。今、日本のビジネスシーンで最も活躍しているキーパーソン10人に密着するという企画だ。表紙に選ばれたのは、今年四月に就任したばかりの新社長・加賀見蓮、三十歳。なぜ彼が選ばれたか、それは撮影の様子を見てもらえればすぐに察しがつくだろう。
 撮影は銀座のど真ん中にあるシックな雰囲気のバーを貸し切って行われた。こじんまりとしたそのバーには、重厚な一枚木のカウンターと、ソファ席がふたつ。
 部屋全体がセピア色のライトで照らされており、どことなく懐古的な情感を湧き上がらせる空間だ。しかし、今はカメラマンや記者、スタッフがすし詰めとなり風情もなにもない。
 そのバーカウンターに腰をもたれる形で腕を組み、不敵に微笑む社長の姿は、モデル顔負けの秀麗さだ。すらっと長い手足、端正な顔立ちに精悍な瞳。パッと見たところ、弱点らしきものはひとつも見当たらない。
「社長! その表情、素晴らしいです! 少し首を傾けて動いてみていただけますか!? そう、そうです! じゃあ、今度は、座っていただいて──」
 良質な被写体を手に入れたカメラマンは興奮気味にシャッター音を響かせた。
 あれだけ社長に文句を垂れていた詩恵ですら、ごくりと息を飲む。これだけ魅力に溢れた人物に、詩恵は人生全部を振り返ってみても会ったことがない。
 その上、日本を代表する大企業の若社長である。地位と名誉と金をすべて手中に収める彼の周りには、様々な野望を抱くあらゆる人種が集まってくる。もちろん、女性も然り。
「ありがとうございます、加賀見社長! 次はインタビューに移りたいと思います」
 蓮は記者とともに端のソファへ移ると、小さな木製のテーブルを囲み対面で座った。不意に蓮の視線が詩恵へ向き、指でくいくいと招かれる。同席しろということらしい。
 詩恵は指示されるがまま、蓮のもとへ向かい、記者に向かって「失礼致します」と一声添えた。斜め横に座り、取材の様子を大人しく見守る。
 記者がICレコーダの録音ボタンを押すと、撮影の時とは打って変わって真剣な内容のビジネストークが始まった。記者と対話形式で、これからのビジネスの在り方、目指すビジョンなど、蓮の心の内を引き出していく。
 真剣な表情で語る蓮。秘書として苦労を強いられる詩恵だけれど、ビジネスの手腕に関しては絶大な信頼を寄せている。詩恵だけではない。蓮の父親である会長も、蓮の周りに付き従う部下たちも、みな、蓮の手腕を認めている。
 賢く、決断力のある、立派な社長だ。詩恵は純粋に蓮を尊敬している。こんなにも人として、男として、格好いい人物を見たことがない。
 ただひとつ──女癖の悪さを除いては。

オススメ書籍

暗闇で愛して~華奢系肉食男子がわたしを襲う理由~

著者乃村寧音
イラスト炎かりよ

空間デザイン会社で事務方をしている地味顔の理系女子、理沙(りさ)。彼氏いない歴も8年目に入り、寂しさからお気に入りのぬいぐるみと抱き枕が放せない日々。ある日、地下倉庫でデザイナーの敏哉(としや)と探し物の最中に停電に遭い、いきなりの暗闇の中で動転した理沙は誘われるままに敏哉と結ばれてしまう――。以前から敏哉は優しかったが、理沙にはその理由がわからない。そんな中、敏哉は二か月間の長期出張に。「帰ってきたらデートしようね」という言葉に、次に会うまでには綺麗になっていたいと、エステやネイルに通い、可愛い服も揃えた理沙。それなのに! 敏哉は他の女の子とランチデートを……。すれ違いの初恋ストーリー。

この作品の詳細はこちら