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ふきげんなご主人様と死にたがり聖女の幸せな結末

  • 作家踊る毒林檎
  • イラストFay
  • 販売日2020/12/18
  • 販売価格800円

「純潔を散らし、処女を失えば、お前の力は格段に弱まるはずだ」確かにあの時、私は力を失いたいと言いました。でも、まさかこんな方法だなんて思わないじゃない? ──ある女のコピーとして生み出された18歳のホムンクルス、マリア。ある時、自身が持つ強大な魔力を都市が吹き飛ぶ寸前まで暴走させてしまう。そのことがきっかけとなり、マリアは魔導士・アガットの下で魔力の制御を教わることになったのだが、なぜか突然押し倒され唇を塞がれてしまい──……どうしよう。わけがわからないくらい、きもちいい。しかし、マリアとアガットの前には残酷な現実が待ち受けていて──「一ヵ月後、予定通り俺は死ぬ」二人が迎える幸せな結末とは……

一 死にそびれたので死にたい
 朝起きて、まずやる事と言えば見慣れた天井を眺める事。
 湿気を吸ってじっとり重い毛布の中から抜け出す事が億劫でなくなるまで、十数分。ベッドの上でゴロゴロする。ノロノロと起き出すと、窓を塞がれた暗い部屋の中で、小さな本棚にある本を読む。
 どの本も何百回(何千回?)読んだものだから、正直読み飽きているし、目を瞑ってもスラスラ内容を言う事ができる。お気に入りは「死んでレイラ」。色々な人に疎まれ「死んで」と言われ続けたレイラが幸せになる話。
 パパにもらった寓話集。基本的にどれも大好きなのだけど、一冊、あまり好きじゃない……どちらかと言えば嫌いな一冊がある。
 タイトルは「しあわせの国」。その本の中で、王様が「君たちは煉瓦(れんが)だ。煉瓦ひとつ欠けても城壁は成り立たない。王国もそういうもので、誰かが一人欠けても成り立たない」と話すシーンがある。
 その本を読む度、私はとても胸がムカムカする。
 そんなの嘘だ。煉瓦がひとつ欠けた所で城壁は崩れない。城壁どころか、街の花壇ですら崩れない。──誰か一人死んだ所で、何ら問題なく社会(くに)も、世界も、回っていく。
 あの手の綺麗事は、自分の事を特別な人間だと思いたい人間や、自分の生に何かしらの意味を見出したい人間には効果的なのかもしれない。もしくは私のように死にたいけれど、死ねない人間に対するマニュアルか何か。
 ──死にたい。
 死にたいと思う。割と毎日。ふとした瞬間。思い出したように。唐突に。
 しかし世の中には、生まれてからただの一度もそんな事を考えた事がない幸せな人達がいるらしい。きっとそんな人達だけで構成されるのが、あの絵本の「しあわせの国」なのだろう。みんな幸せで、困った事があってもみんなで助け合い、神に感謝して生きている。みんな笑顔。笑顔。笑顔。笑顔。辺り一面笑顔。そんな国。
 そんな国あるわけないと思うのだけど、この国──アドビス神聖国が目指しているのが、恐らくそういう所なのだろう。あの本、ここの教会が配っている奴だから。
 でも、もしかしたら? この国で生きている私以外の人達はそうなのかもしれない。みんな幸せで……いや、そんなまさか。そんな事あるわけがない。人が人である以上、生きているだけで何かしらの痛みや苦しみ、悲しみは生まれる。誰もが無痛で生きられるわけがない。
 私は物心ついた頃から死にたかった。……詳しい話はここでは割愛させていただくけれど、理由はほんの些細な事で、誰にでもあるような理由。負の積み重ねが、ある日、限界点を突破したとでもいうのか。何度か挫折した後、希望を失った。もう夢なんて見れない。頑張れない。努力なんてしたくない、息をするのも億劫だ。すべてが面倒くさい。
 そんな私は神に救いを求めるようになり、〈青の炎〉に焦がれるようになった。〈青の炎〉とは人の肉体どころか魂までをも一瞬で燃やしつくす炎である。しかしこの炎を生み出す事ができるのは、この世界でただ一人──唯一神しか存在しない。

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