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地味OLはキラキラ家元のお気に入り!?~強引紳士の誘惑に困惑中です~

  • 作家連城寺のあ
  • イラスト早乙女もこ乃
  • 販売日2019/10/11
  • 販売価格700円

幼い頃から華道に親しんできた仁美は、平日は一般企業の事務として働きながら、週末は茅野流本部のお手伝いをする日々を送っている。そして週末。差し入れを配る彼、茅野瑞は華道茅野流の『三代目家元』で、その才能と端正な顔つきからメディアでは『王子』と呼ばれるほどの人気ぶり。実は、同じ師から教わった兄妹弟子である瑞に、仁美は密かに恋心を抱いている。身分違いの恋だと、自分の気持ちに蓋をする仁美だが、ある日、瑞の想い人であると噂の〝瞳さん〟に恋人ができたという話を耳にする。――そばにいられるだけでよかったのに、私、いつの間にこんな欲張りになってしまったの……?瑞に触れられ揺れる仁美。純粋な恋心の行く先は――

1、出会い
 ゆるい勾配の坂を上りきると、古めかしい洋館が見えてきた。窓枠が白く塗られたフランス窓の一つが開け放たれ、レースのカーテンがヒラヒラと揺れている。木造の壁も白く塗られ、色といえば建物の傍らに立つサルスベリの明るいピンクだけ。開いた窓から金髪の美女が顔を出しそうな雰囲気だが……守田(もりた)仁美(ひとみ)は、中にいる人物の顔を思い浮かべてクスッと笑った。
「やあ、仁美ちゃん。来たね」
「こんにちは。先生、今日もお願いします」
 ここは茅野流(かやのりゅう)旧館の小会議室。数年前までは本部として使われていた古めかしい洋館だが、今は講師達の研修室として使用されている。隣の敷地には八階建てのモダンなビルが新しい本部として機能している。
 仁美を優しい笑顔で迎えるのは、茅野流の影の実力者といわれる青山(あおやま)先生だ。仁美は中学に入学した四月から、晴れて青山先生の弟子になる事ができた。それまでは、母が家でお花を生ける時にサクッと教えてもらうだけだったが、あまりにも熱心なので、母が本部に頼み込んで青山先生に師事できるようになったのだ。仁美の母は茅野流本部で経理の仕事をしている。
 学生カバンを床に置き、中からハサミ一式を取り出すと、仁美はスチール椅子に腰を掛けた。目の前には水を張った練習用の花器と花材が置かれている。ハサミのカバーを外し花材の傍らに置くと、青山先生を見上げる。綺麗なグレーヘアに笑い皺がくっきりと浮かぶ顔は、どこまでも優しい。茅野流のみならず、華道界の中でも実力者として著名な先生なのに、威圧感はまるでない。
「さ、今日はどう挿すかな? 花材をよく見て形を決めるんだよ」
「はい」
 いけばなを本格的に初めて四か月、普通なら見本の完成形を参考におずおずと生けていくレベルのはずなのに、仁美の前に見本は無い。先生の時間が許す時には、週に一~二回練習を続けているので上達が早いのだ。それに何よりもいけばなが大好きなのだから、人よりも上手くなるのは当然なのかもしれない。
 仁美の目の前にはサンスベリアとピンクのグラジオラス、それにミニ向日葵がある。仁美はサンスベリアを手に取ると、ハサミを入れてザクッと切った。花器のサイズとバランスが取れるような長さにする為だ。(これくらいかな?)と思うサイズより心もち長めに切ると上手くいく。それは先週先生に教えられた、いけばなのコツだ。時折、先生の口から零れるそういう言葉は、仁美にとって大切な教えとなっている。サンスベリアを剣山に挿すと、もう一本を手に取った。……と、その時、廊下を足早に歩く靴音が聞こえた。ドアが乱暴に開かれて、若い男性が入ってくる。仁美よりもずっと年上の男性だ。
「やっと見つけた! 青山先生、こんな所でなに油売っているんですか?」
「油? とんでもない。見ればわかると思うけど、稽古の最中ですよ。三代目と言えど邪魔は許しませんからね」

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