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私たち、見せかけの夫婦です~御曹司との期限付き偽装婚は極秘に願います~

  • 作家田崎くるみ
  • イラスト鍋木
  • 販売日2020/06/08
  • 販売価格600円

親同士のつながりで幼いころから許婚の関係にあった蒼平と蘭。父親の会社同士の業務提携も順調、正式な婚約者に。ふたりは何でも言い合える関係……だけど、恋愛感情を抱くことができないまま夫婦になってしまう。しばらく結婚生活を続け適当な理由をつけてお互い自由になろう──そんな期限付きの約束をした愛のない結婚ではあったけれど、『運命の赤い糸で結ばれた、相思相愛のお似合い夫婦』だと周りにも認められるよう努めてきた。そうして約束の期限がもうすぐとなったころ。蒼平が会社の後輩から言い寄られていることを知りなぜか動揺してしまう蘭。そして蒼平は蘭にこのまま結婚生活を続けたいと告げて独占欲をあらわにしはじめて……!?

『あと一年の辛抱です』
 いつからだろうか。偽りの関係を演じるのにも慣れて、あたかもお互い愛し合っている夫婦を装えるようになったのは。
 都市開発が進むエリアにある超高層マンション。ふたりで暮らすには、十分すぎるほど広い4LDKの部屋。
 明かりを灯すと、必要最低限の家具しか置かれていない殺風景なリビングに、苦笑いしてしまう。
 ここに五年も住んでいるとは到底思えない。
 ふかふかのソファに腰を下ろし、ふうと一息。今日は金曜日。やっと一週間が終わった。
 仕事でクタクタなのに、これからご飯を作るのは面倒だ。向こうもそろそろ帰ってくるなら、外食で済ませられないだろうか。
 その思いでバッグの中からスマホを取り出してタップすると、新着メッセージ一件ありの文字が。
【緊急業務連絡。急で悪い。同伴を頼みたい。ドレスアップして、送った住所のところまで来てくれ】
「嘘でしょ」
 メッセージを見て、がっくり肩を落としてしまう。
 だけど行かないわけにはいかない。これも妻の務めなのだから。
 重い腰を上げて、リビングに飾られている結婚式の写真を眺めては深いため息をひとつ零し、急いで準備に取りかかった。
 私、月宮(つきみや)蘭(らん)と同い年の夫、蒼平(そうへい)が結婚したのは今から五年前。大学を卒業してすぐの二十二歳の時だった。
 学生時代の旧友の仲である母親らが、同じ年に生まれた私たちを結婚させて親戚になろうと企み、私と蒼平は幼い頃から許婚(いいなずけ)の関係にあった。
 頻繁に会っていれば自然と仲良くなり、子供の頃は蒼平と遊ぶのが楽しくてたまらなかった。
 そんな私たちの仲睦まじい姿を見て、最初は母親たちだけの思惑が、いつしか父親たちもそう望むように。それというのも、私の父親は飲料水の会社の社長。そして蒼平の父親もまた菓子メーカーの社長を務めている。
 私たちの婚約を機に業務提携に乗り出し、共同で新商品を開発。それが爆発的大ヒット。
 両家族が親戚関係となり、業界内に確固たる結びつきを示すこととなった。
「変じゃないかな」
 シックな黒のアイラインシルエットのドレスに、淡いクリーム色のストール。ストラップ付きの黒のハイヒール。小ぶりのショルダーバッグを持ち、パールのネックレスに誕生石である、エメラルドのピアスを合わせてみた。
 昔は四苦八苦していたヘアメイクのセットも、短い時間でできるようになるとは……。
 最後に鏡の前に立ち、人差し指で両頬を押し上げる。
「よし、笑顔で頑張ってこよう」
 気合いを入れて家を後にした。
 蒼平から送られてきた住所は、国際的にも有名なホテル。タクシーで玄関口につけてもらい、支払いを済ませるとすぐにホテルマンがドアを開けてくれた。
「いらっしゃいませ」
 エスコートされながら玄関を抜けると、豪華なロビーが広がっていた。右側にはラウンジがあり、ライトアップされた日本庭園が見える。

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因襲御曹司の執着愛に溺れる贄(上)

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