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乙女は煌めきの預言者に囚われて

  • 作家アドウマドカ
  • イラスト白峰早菜
  • 販売日2017/05/16
  • 販売価格700円

「怖くなどない。拒絶の言葉も聞かない。あなたは俺のものだ」幼いころ、自分になついてきた愛らしい子供は、十年の時を経て美しい青年へと成長していた。預言者の力を持ち王を導くヨシュアと、その預言の力により処女王として君臨したルクレチア。国のために力を合わせていこうと思ったさなか、ヨシュアに突然押し倒され……!? 処女を奪われ、一歩間違えれば王座を追われるところまで追い詰められたルクレチア。彼の考えがわからずに戸惑いながらも、一人の女として初めて求められたルクレチアはいつの間にか身も心も蕩かされてしまう。信じられないほど強引なのに触れてくる手は優しいヨシュア。彼の狙いと、秘密とは……?

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プロローグ
「俺はルクレチアを妻にしたい」
「畏れ多い、口を慎め、ラメス!」
「ヨシュア、お前はいつも生意気だ。青二才は黙っていろ!」
「なんだと!」
 人払いをしたサロンで言い合いを始めたふたりの男が立ち上がった。
「やめて。ふたりともやめなさい!」
 ペルシアーニ国の若き預言者ヨシュア・スレイマーンと、偉大なる隣国の王ラメス・ファンテが一触即発の状態でにらみ合っている。
 ふたりを止める美女。誉れ高い女王のルクレチア・ペルシアーニは二十五歳の女ざかり、白いドレスに金銀の装身具、まっすぐに切り揃えられた黒髪は艶やかで、黒く引かれたアイラインに負けない強いまなざしは一国の女王らしい凛とした気質を表している。
 ヨシュアはまだ二十歳の若き預言者であり、女王ルクレチアとともに祖国ペルシアーニを治める人物だ。金色の髪に白皙(はくせき)の美貌、すらりとした身体つきはいかにも神の言葉を賜(たまわ)る人物にふさわしい。白いローブに包まれた姿は神々しく、金髪碧眼はこの国では特に珍しい。
「やめない。ルクレチアに言い寄るなどと、無礼にもほどがある。神の怒りを買うぞ」
 酒の席でラメスの本音がこぼれ出て、ヨシュアがまなじりを釣り上げた。
 いつもは冷静なヨシュアだが、ルクレチアのこととなるとまったく辛抱がない。
「その神が、ファンテ国を特別扱いしてくれているのだ。ならば、俺とルクレチアが結婚するのは自然な流れだろう」
 大きな災害を乗り越えた王ラメスとて三十歳になったばかり。濃い眉にくぼんだアーモンド型の瞳と、鼻梁の細いわし鼻が印象的なラメスは、男らしさにあふれた容貌をしている。上半身をむき出しにした古代からの伝統的姿に斜めにかけた装身具が王の威厳を見せつける。
 にらみ合いはじりじりと続き、どちらも視線をそらさない。
 同時に、ふたりが腰の剣を抜いた。
──ああ、だめ。
 ここで切り合いが始まってしまったら、戦争が起こってしまう。
「剣を、剣を下ろさないで!」
 神に奉納し清められた剣は、空中を蝶が舞うようにゆっくりと上がり切っている。
「ヨシュア! やめてっ」
 ルクレチアの声に、一瞬ラメスの剣が躊躇し頭上で止まった。
──見える、私の行くべき場所が!
 迷うことなくヨシュアが振り下ろす剣の軌道に身を差し出すと、胸元を締めた装飾紐が切り落とされた。
 房のついた金色紐は、蛇が空中を飛んでいったようにルクレチアの目には映った。ツンとした痛みが胸を走る。
 驚く男たちの前で、白いドレスが身体からするりと落ちて、ルクレチアの裸身がさらされる。胸の谷間にうっすらと切り傷がついて、つ……と、一条の血が流れた。
「ルクレチア!」
「女王!」
 たわわな乳房とくびれた腰、さらに今夜は下着をつけていない。
 ルクレチアを求めるふたりの男たちに協力を求めた今宵、血気盛んなヨシュアと彼を煽るのがやけに上手いラメスの間に争いが起こるのではと苦慮していた。いざとなったら女の武器を使う覚悟で最小限の装いで来たというのに、ヨシュアに切りつけられて全裸を晒してしまうとは!
 無毛の股間も、丸い尻も、すべて見えてしまうが、ルクレチアは何も隠さずに立ちつくす。ルクレチアを傷つけたヨシュアの方が、はるかに傷つき、美しい碧眼が涙に潤んでいる。
「すまない……ルクレチア」
 彼の真っ白な指が傷口を撫でると、そこにはほんのわずかな傷口がのぞいた。
 足もとに落ちたドレスをヨシュアが拾い上げ、胸元を隠すように止血した。
「私はペルシアーニ国と婚姻を結んだのです。他国に嫁ぐことはできません」
 ラメスに向けた言葉だった。
 だが、熟れ切った裸身をラメスに見せてしまったことで彼はいっそう、いきり立ってしまった。ルクレチアの裸足の足の甲に、ひれ伏した彼の唇が寄せられる。
「偉大なる女王よ、なんと美しく、勇気にあふれていることか。あなたを妻にできるのなら俺は何を捨てても構わない」
「女王に触るな!」
 ふとヨシュアを見ると、彼はやるせない目でじっとルクレチアとラメスを見ていた。
──あの目はなに? ヨシュアはいったい私に何を望んでいるの?
 急に裸でいることが頼りなく、寒々しく感じる。
 ヨシュアが預言者のローブを脱いでルクレチアに着せかけた。
 彼の目に欲望の色が浮かんで、そして消える。
 今日は交わってはいけない日だ。
 そういう日に限ってルクレチアの女の本能がヨシュアを求める。
──囚われている。
 麗しい横顔を見た刹那、ルクレチアは感じた。彼がまだ七つの少年だったあの日から、ずっと……。
──私はこの輝く美貌の預言者に、囚われているのだわ。

ご意見・ご感想

編集部

女としての幸せを押さえ込み、王としての責務を果たしてきたルクレチア――
このまま人生が終わってしまうのか……
そんな不安を抱き始めた時、彼女の前に現れたのは……!?

幼いころに運命的な出会いをした王女ルクレチアさまと預言者のヨシュアさま
預言が政治の左右を握るルクレチアさまの国では預言者の言葉は絶対……!
本来であれば他国に嫁ぐはずだったルクレチアさまもヨシュアさまの予言によって女王に君臨することになりました!
ただしそれは「処女王」という条件のもとで!?

女性としての喜びを殺しつつ、それでも大好きな国のために王として務めてきたのに
さらにさらに修行から帰ってきたヨシュアさまにその晩押し倒されてしまいますっ!?!?!?

弱みを握られた?
彼の意図が分からない。
まさか、ヨシュアは王になりたいのでは――!?

様々な予感が行き交うものの、預言者が絶対の国では女王であるルクレチアさまも逆らえず……
一体いつから彼の思惑は始まっていたのか?
そして女王としての責任と女性としての人生との間で揺れ動くルクレチアさまの気持ちは……!?
複雑に絡み合った赤い糸が織りなす二人の行く末は……?

ぜひお楽しみ下さい(*’∀’人)

2017年5月16日 9:48 AM

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