夢中文庫

微熱の指先

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  • 作家逢見るい
  • イラストまろ
  • 販売日2015/9/15
  • 販売価格300円

美術館で働く巴菜は、不器用で愛想笑いができず、周りに誤解されてばかりいた。「嫌がってるふりして、本当はいつだって準備万端なんだろ?」元カレにいいように扱われていると知りつつも、親しい友人もなく両親も既に他界していることから、孤独を恐れ、乱暴なセックスを受け入れる日々。そんなとき、美術館の裏でスケッチをしていた謎の美青年に、声をかけられる。「アンタ、知ってる子だ」彼は巴菜が暮らす、アパートの隣人だった。「声、いつも押し殺して鳴いてるよね。可哀想に……」組み敷かれ、蔑まれ乱暴にされ、それでも元カレを受け入れてしまう弱かった巴菜の心に、孤独を恐れない謎の美青年に出会ったことである変化が――。

「やっ」
小さく漏れた拒絶の言葉は、衣擦れの音で掻き消された。
ベッドの上にうつ伏せのまま押し倒されたわたしは、布団に埋もれないよう顔だけ横に向けると、大きく深呼吸をした。
「巴菜(はな)ぁ、もうやめようぜ。こういうプレイ」
鼻で笑った栄太(えいた)が、そう言ってスカートの中に片手を突っ込み、パンティーだけを乱暴に剥ぎとってしまう。
うつ伏せになったわたしの太腿の上に座り込んで、体重をかけていた。
逃げ出そうにも、逃げ出せない。身動きをすることすら難しい。
悔しいし、情けないのに、諦めている自分がいる。
「だって巴菜、もうヌレヌレじゃん。嫌がってるふりして、ほんとはいつだって準備万端なんだろ?」
「違う」
今度こそちゃんと言葉になったはずなのに、気づいているのかいないのか、栄太はガチャガチャと音を立ててズボンのベルトを引き抜くと、ファスナーを下ろしてボクサーパンツの切れ目から、硬直した肉杭(にくくい)を取り出した。
硬くて長い。根本に向かって太くなっている。茎に巻きつくボコボコした血管、ヒクンヒクンと動くその様は、まるで意思を持つ、グロテスクなひとつの生物のようだった。
「巴菜、エッロイッ」
ぺろんとスカートを捲ったその手で、わたしのお尻の肉をペチンと叩く。
同時に尻肉を鷲掴みにされ、クパァと開いた濡れそぼった秘裂(ひれつ)へ、まぁるい肉杭の矛先をあてがった。
「……アッ」
わたしの内側は、わたしの意思とは関係なく栄太の肉杭を引きつけて、飲みこもうとする。
ちゅぷり、わずかに矛先が窪みへとめり込んだかと思えば、最奥まで一気に挿(はい)りこんだ。
「~~ッぅ!」
仰け反る。
ベッドの上、後ろからわたしの腰を掴んだ栄太が、容赦なくわたしの中心を貫く。
狭苦しい肉壁(にくかべ)がこじ開けられ、押し広げられて、硬く滾(たぎ)った杭(くい)が、わたしの柔肉(やわにく)を摩擦していった。
「ん……っ、ん」
「声出してよ、巴菜ぁ」
「やっ」
「ほら、ちゃんと、喘いでよ」
「~~やぁっ、んっ」
「壁薄いんだからさぁ、隣の奴にサービスするつもりでさぁ」
後頭部の髪を鷲掴みにされて、無理やり持ち上げたわたしの顔を覗き込んだ栄太が、わたしの口腔を、舌の上を、人差し指で弄(もてあそ)んだ。
「可愛いんだからっ、巴菜ってばぁ」
「ううぅッ」
呻き声と共に、唾液が滴る。
わたしの唇から栄太の指を通じて、玉になってぽたりぽたりとシーツの上に落ちる。
ああ―――。
またわたしはこの男の玩具になって、今夜もシーツを汚すのか。

アパートを出て自転車を走らせること十五分ほど、駅を右手にひたすら真っ直ぐ進んだところで、海にぶつかる。
海岸通りにある駐輪所に自転車を止めると、横断歩道を渡って住宅街を突っ切る緩やかな坂道をのぼっていく。
坂の途中、息を切らして振り返れば、朝もやの向こうに広がるキラキラした青い海が、見えた。
坂の途中から見えるこの景色が、わたしはとても好きだった。
小高い丘の上にある、市が運営する小さな美術館で勤め始めたのは、正直、家から近かったからという理由もある。面接のとき、アパートから自転車で向かった。そのときに、ああ、こんな通勤スタイルって素敵だなと思ったことも、一理ある。
そしてなにより、静寂の中に佇んだ温かみのある美術館の外観や、物静かでいつもニコニコしている館長が気に入ったからだった。
「おはよう桃瀬(ももせ)さん」
「おはようございます、館長」
蔦(つた)の這った三角屋根、ガラス張りの開放感のあるロビー、地下一階、二階建てのこじんまりした建物だが、入り口に向かうまでの細道には様々な木々が生い茂っていた。
木々が作るトンネルを潜り抜けた建物の出入り口近く、掃き掃除をしていた館長と挨拶を交わすと、「桃瀬さんってば」と笑った館長が、わたしの肩についた枯葉を指で摘まんだ。
「今日も暇そうだから、お庭の掃除をしようか。着替えたら、ゴミ袋とほうきを持って出てきてもらってもいいかな」
「はい。わかりました」
年齢は、確か六十を少し過ぎたころだ。
白髪交じりの髪に、ひょろっとした、それこそ木の枝のような華奢な長身の紳士で、鷲鼻に垂れ目がちな色素の薄い瞳が綺麗なひとだった。
このあたりにはむかし異国人が多く住んでいて、館長のおじいちゃんだかおばあちゃんは、確かアメリカ人だと聞いた。
だからかもしれない。わたしのような人間とも、フランクに接してくれるのは。

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