夢中文庫

夢咲き 雅狼5 ~祠☆闘士シリーズ~

  • 作家朝陽ゆりね
  • イラストもなか知弘
  • 販売日2015/12/15
  • 販売価格700円

「早く自分の力をコントロールしなさい。甘えてわかっていないのよ」征一朗の継母麻奈江に窘められる舞。麻奈江が後妻の道を選んだ真実を尋ねたかったのに自らの甘さを指摘され反発を覚える。大学では金持ちの年上男性に囲われていると吹聴され、悔しい思いをしていた。そんな折、『破魔矢』先代の矢代栄恵すら浄化できず封じただけの強烈な悪霊の巣窟が、何者かに呪鎖を解かれてしまう。現当主征一朗は今度こそ即天させるため出向いた。かつて激しく愛し合った瑠璃子への弔いを胸に秘め――。白蛇の力を狙われる舞は恋人に救われるのではなく共に生きたいと願いある決意をする。孤高の呪術師と孤独な大学生の、運命の出会いが美しく結実する!

1、呪鎖の記憶
~プロローグ~
 夜、九条(くじょう)舞(まい)が月を眺めながらテラスで絵を描いていると、矢代(やしろ)麻奈江(まなえ)が外出から帰ってくるのを見つけた。着飾った姿は娘の怜柯(れいか)とは違う美しさがある。大輪の薔薇のような華やかさのある怜柯に対し、麻奈江は年齢もあってか、艶やかで、大人の香りを漂わせていた。
 舞は素早く立ち上がり、彼女のもとに走った。そして話があると言い、庭園の東屋に誘って椅子に腰を下ろした。
「で、話って?」
「ずっと気になっていたんです。麻奈江さんが征一朗さんのお父さんを誘惑した理由。愛していなかったんでしょう?」
 麻奈江は嘲笑を舞に向け、ハンドバッグからメンソールのタバコを出して火をつけた。
「子供が欲しかったのよ。そう言ったでしょ?」
「でも、その子供を愛さなかったじゃないですか」
「えぇ」
 薄く微笑み、舞を見る。タバコを吹かすと月を仰いだ。
「まったく、女神の従者にはかなわないわねぇ。征一朗さんには、内緒よ」
「はい」
 力強く返事をする舞にもう一度視線をやると、今度は椅子に深く凭れた。
「私が身ごもれば離婚すると思ったのよ。実際に、何度もそう頼み込んだもの。栄恵(えいけい)さんはプライドの高い人だったし、十七も年下の、未成年の私を孕ませたとなると、世間体を気にして責任を取ると思ったの。だから中学を卒業したら、すぐに迫ったわ」
「──」
「それでもなかなかオチなかったけどね。一年半ぐらい無視されたわ」
 麻奈江の顔を見ながら、舞は無言で彼女の口から出る言葉を聞いている。
「一派の者達も邪魔をするし、どうしようか悩み始めた時、栄恵さんのほうから求めてきたのよ」
「え」
 麻奈江はふっと笑った。
「どういう心境の変化だったのでしょうねぇ。巫女長となにかあったのかもしれないわ。でもあの時は必死だったから、そんなことはどうでもよかった。彼に抱かれながら、何度も子供ができたら離婚してと懇願した。返事はなかったけど、それが了解の意味だとすぐにわかったわ」
「征一朗さんのお母さんを、助けるため?」
 麻奈江は月を仰ぎながら、苦々しそうに溜息を洩らした。
「まさか死を選ぶとは思わなかった。私は──『視力』という力を持ちながら、一番大事な時に、大事な人の本質を見誤ったのよ。あの人もまた栄恵さん同様に気高く、それでいて潔い人だった。あの人が求めたのは、完全な自由だった。私は、浅はかだったわ。『わたくしの代わりに、その責を負ってくれるのね?』そう言われた時、成功したんだと有頂天になったのだから」
「……」
「これで巫女長は助かったと、私が巫女長を助けたんだと、そう思ったわ。なのにあの人は死を選んだ。だから──この世のすべてを憎んだわ。いいえ、自分自身が一番憎かった。この力のおかげで、私は親にまで恐れられて、敬遠されていた。そればかりじゃない。両親は私の目を焼こうとしたのよ」
「え──」
「今でも、あの時のことを思い出すと体が震えるわ。それを救ってくれたのが巫女長だったの。巫女長は誰からも疎まれた私を大事にしてくださった。封じるのではなく開花させて完全に操れるようになれば、巫女長の座に就くことができるだろうとおっしゃってね」
「憧れていたんですか?」
「そんな簡単な言葉で片づけないでくれる?」
 舞に顔を向けて笑う麻奈江の顔が寂しげだ。

オススメ書籍

極道の許嫁と偽装婚約!?~ツンデレお嬢は腹黒若頭に護られて~

著者黒羽緋翠
イラスト弓槻みあ

「これでも俺は瑞穂のボディガード。おまえを護ることが仕事だ」極道を総括する五龍会の会長を祖父に持つ瑞穂は、祖父が勝手に決めた婚約者である加賀見組の若頭の直樹に振り回されていた。立場を顧みずに問題を起こしてばかりの直樹だが「俺もついて行ってやるよ。お嬢」と自分にくっついてくる彼を何故か放ってはおけず…?しかし、なかなか素直になれない瑞穂は結婚を急かしてくる祖父に向かって直樹との結婚を拒否してしまう!代わりの婚約者を用意すると言われ途方に暮れる瑞穂に(元)婚約者の直樹が真剣な目つきで問いかけてくるのだった。「そんなに結婚したくないなら、俺と偽装婚約するか?」婚約者との偽装婚約!?ふたりの運命は…?

YAHOO!JAPANブックストアで購入
BookLiveで購入

この作品の詳細はこちら